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第13話:告白のち、夏妃と居酒屋にて

☆前回のあらすじ

現実に戻された結花は、残りの仕事をこなす為、職員室で一仕事。

待ち合わせ時間直前まで仕事をした結花は、身支度を整え職員室を後にすると、学校を出た矢先に、知り合いの黒木彗太から告白される。

それに対して、突然の告白に結花は戸惑い、その場で立ちつくすのだった。


メインストーリー、小星結花視点の続きになります。


小説自体の設定に関しては。

https://ncode.syosetu.com/n8129gb/


をご参照ください。


※先行ネタバレがあるので見る際はご注意を。

 ちょっと頭の中を整理しよう。私はたった今目の前にいる彼に告白された。…多分。

 いやいやいや、されたされた。今確かにされたよ。

 真剣な表情で私に語りかけてくれた彼に対して、現実逃避している今の私何様だよ。

「ふーっ…」

 私は今一度、大きな深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとする。

 だが、運動をした直後の様に心臓が大きく鼓動をしていて、手のひらに汗が滲みなかなか思う様に行かない。

(落ち着いて、落ち着いて)

 今一度、心の中でそう問い掛けてみる。

 …そうだ! これが例えば一球で決まる勝負とかと比較したらどうだろうか。

 冷静になって考え直すと、別にこっちが一方的に追い込まれている訳じゃないんだし。

 スポーツ根性的なものが染みついているのか、彼の発言に対してスポーツと同列に考えようとするのは、正直いって如何なものなのかという所はあるのだが。


 *********


 さて、私の中で彼はどういう存在なのだろうか。

 傍から見ると、私と彼の間柄と言えば…近所に住むちょっと仲が良い程度の知り合い同士…かな?

 事実としてはそうなのだけど、それだけのくくりで考えるのは、個人的になんか違う。

 じゃあ、手のかかる弟みたいな?

 うちの弟は、周りから見ても手が掛からない弟ではあるけど。彗太君は、そんな弟よりも全然手の掛からない男の子だし、よくよく考えてみるとなんか違う。

 うー、よくわかんない。

「結さん…?」

 頭の中で、彼の位置関係を考え直していると、その彼が私に恐る恐る声を掛けてくる。

「あ…ごめん。ちょっと考え事をしてたわ」

「あー…俺の方こそごめん」

 そう言うと、彼は自分の右頬を人差し指で掻きながら、あさっての方向を見る。

 いやいやいや、ゴメンナサイ。私の方こそ頭が追い付かなくて、さっきから何を考えているんだって、申し訳なく思っていたのだが。

「結さんがまさか、そんなに考え込むなんて思わなかった。…えっと、やっぱり、今の話は一旦無かった事にして貰って良いですか?」

 彼にそう言われた時、私の体の中心でよく分からない何かが音を立て、崩れ落ちていくのを感じたのだ。

「はい?」

 私は思わず、この謎の不快感を表すのを躊躇わず、語尾を上げてそう一言反射的に述べてしまう。

(え、私に今…告白してくれたよね? それをすぐ無かった事にするわけ? え? 冗談で言ったの?)

 先程まで申し訳なく思っていた事など、とうの昔に追いやったかの様に、先程の彼の言葉を私は心の中で反芻(はんすう)する。

 ”今の話は一旦無かった事にして貰って良いですか?”

 ほんの僅かな時間だけど、頭がふら付くぐらい一生懸命考えていた事に対してのこの扱いに、私は正直イラっと来てしまっていた。

「あのさ。そう言う適当なき」

 そんな彼に対して、私が口を開けてあれこれと、言おうとした正にその時である。

「結ー。痴話喧嘩はもう済んだ?」

 少々低めの声で横から声を掛けてきたのは、私の親友である夏妃(なつき)だった。

 元々仕事の後にお酒を飲もうと、待ち合わせをしていた夏妃が、私達のすぐ横に現れたのだ。

「別に痴話喧嘩じゃないし…」

 まあ、意味合い的には痴話喧嘩なのかな…。

「そう? あんたらの表情を傍から見ると、そんな感じにしか見えないんだけど」

 そういわれてふと、彼の顔を見る。

 暗がりの中でもわかるぐらい、顔を赤くしたままどこか怪訝けげんそうな表情をしているのだ。私も同じ様な顔をしているのだろうか。

「まぁそれはいいんだけどさー。そこのイケメン君、結を借りてっていっても良いかな? 私は結花とこれから大事な用があるんだよね」

「あ…はい。それじゃあ俺はこれで…」

「夏妃。私はま「結花は黙ってて」」

「……」

 こうして、私と彼との間に割って入った夏妃は、瞬く間に私達の話を終わらせ、この場を解散させた。

 私としても、彼に対する返事には正直困っていたし、彼とは危うく喧嘩別れになりそうな所だったから、冷静に一度考え直す意味でも、夏妃のした事は私達にとって一番良かったのかもしれない。


 *********


 先程の出来事から20分程。私達2人は、自宅近くにある馴染みの居酒屋で、向かい合って席に着いていた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「はいはい。えっとー、生中2つと…今日の盛り合わせ。明太子チーズの出汁巻き卵に、あー砂肝のにんにく炒めと…焼き鳥セット。ご飯中盛り2つ…。取り敢えずはこれぐらいで良いよね?」

「うん」

 夏妃は手早く注文を取り、その注文に対して私は生返事で返答をする。

「ありがとうございます! ご注文を繰り返させて頂きます」

 そんな私は、席に着いた今も先程の事をずっと考えている。

 ”ちょっと結! 運転変わるよ”

 学校から発車しようとした直後の事だ。

 私は、車のギアがPに入ったままアクセルを踏んでしまい、夏妃にそう言われて運転を代わられてしまった。

 免許を取ってもう7年程経つけど、そんな事をしたのは初めてだった。

 心ここにあらずとは、まさにこの事なのだろう。自分の思わぬ行動で、嫌でも実感させられてしまった。

「お待たせいたしました、生中お2つになります」

 店員の声とジョッキの置かれた音で、ふと我に返る。

 先程の店員さんが奥へ引っ込んだかと思うと、直後にこのテーブルへビールを届けて来たのだ。

 生徒程じゃないが、部活中にそれなりに体を動かしていた私はかなり空腹で、目の前に置かれたビールを見て、思わず舌なめずり。

「それじゃあ結、乾杯しようか」

「うん」

「何に乾杯しようかねぇ…。じゃあ、結の被告白祝いに乾杯で!」

「被告白祝いって…乾杯ー!」


 *********


 自宅近くのこの居酒屋は、かれこれもう3年程私達2人の溜まり場になっている。

 夏妃とは高校から10年来の友人だけど、ソフト時代のバッテリーだっただけあって、それ以上に長い付き合いの様に感じる。

 大学の進学先も一緒で、大学を卒業してすぐ自宅からほど近い場所がお互いの就職先になり、就職してからも月に1~2度、ここの居酒屋か夏妃の部屋でお酒を飲むという感じなのだ。

 今回の様に、食事だけじゃなくお酒が絡む集まりの時は、大抵ここを利用している。

 そんなものだから、ここの店主とは顔馴染みであり、先程ここで注文を取っていた店員なんかは、何度も見掛けた事があるぐらいだ。

「で、結局の所どうなのよぉー」

 夏妃は顔をほんのり赤くして、私へと語りかけてくる。喋りの語尾が伸びるのは、酔いが回ってきた証拠だ。

 お酒は好きらしいが、すぐ酔いが回る体質なのは相変わらず。

 酔い出したらきっと絡まれて、こうなる事は何となく分かっていたけど。

「ど、どうっていったって…」

 予想通り、夏妃は飲み始めて間もなく、私と彼との事を聞いてくる。

「結ったらまたぼーっとしてるしさぁー。どうせ彗太君の事でも考えていたんでしょー? そんな考え込むぐらい引き摺るなら、さっさとさー、1回ヤっ「ちょっと夏妃。あんた悪酔いし過ぎだって…」」

 私はすかさず、手を伸ばして夏妃の口を塞ぐ。

(ったく。周りが女子だけなら兎も角、すぐ傍に男性客も居るっていうのに)

 酔いの早い夏妃は、周りの事もお構いなしに早速言いたい放題。絡み癖の強い酔いの症状だ。

「あ、そう言えばさ、夏妃は今の彼氏とどうなのよ」

 私は自分に関しての猥談を回避しつつ、夏妃が乗ってくれそうな話題へ方向転換をする。

 これに関しては、私が夏妃に元々聞きたかった話題だ。

 先々月、夏妃の彼氏が期限があやふやなまま、長期出張で東京に行ってしまったと言われたのを聞いているからだ。

「んー? あー」

 夏妃が自分の事を余り話したがらない時は、大抵何かを抱え込んでいる。だから、普段から相談に乗って貰ってる此方としては、こういう場では逆に相談に乗って上げるのが、最近の通例なのだ。

「彼が今秋に長期の出張から帰ってくるからねー。その時に結婚式の時期とか決める予定だよー。指輪はもう貰ってるしー。えへへ…」

 夏妃はそう言いながら、左手の薬指にある婚約指輪を頭上へちらつかせ、此方を見てニヤリとする。

(私の勘違いなのかな?)

 最近、自分の事を余り話そうとしてくれないから、てっきり何かあったのかと思ったのだけど、私の勘違いなのかな…。

「そんなことよりさー。彗太君とは今後どうするつもりなのー?」

「いや、どうするっていってもさ…歳も結構離れてるし」

 なんて思っていると、途端に話題が逆戻り。相変わらず酔っ払いの思考というものは良く分からない。

「ふーん。じゃあ彼が帰ってくるまでー、私が彗太君にちょっかい掛けちゃおうかなー」

「ちょ、辞めなさいよ良い大人が…」

「冗談だってー。…でもねー」

 そんな事を思っていると。

「恋愛でメンツを気にしているようじゃ、アンタはまだまだだって事だよ」

 なんて言うものだから。

 精神的に私はまだまだ未熟なのだと思うのだった。

 ☆小星結花の友人関係

 ・三輪谷夏妃みわたになつき 女性:25歳

 結花とは高校時代の同級生でソフトボール時代のキャッチャーでバッテリーを組んでいた。

 大学は結花と同じ大学に進学し、修士課程を得て社会人1年目の食品会社の研究員。

 現在も月1~2回で酒飲みの交流があり。電話やメールやラインなどで日頃からおしゃべりしている。

 本作品の結花の良き相談相手で、結花をスマホゲーに最初に誘った友人でもある。

 彗太とも知り合いだが、あくまで友人を介して顔見知りという程度。

 アークレジェンディアのプレイヤー名はアストリッド。

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