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神崎さんはまだまだ知られてない

「~~~♪」は鼻歌のことです。

 どうも、みなさんこんにちは。 またまたここは文芸部部室です。 今まで私は神崎さんの存在はもう学年中に広まって知らない人はいないだろうと思っていました。 しかしいたんですよ。 かなり身近なところに。 ねっ! 神崎さん──。




 ガラガラ


「こんにちは」


「あ、神崎さん。 ちゃんと持ってきてくれた?」


「持って…なにを?」


「あー、忘れてるなー! もー、提出日だから持ってきてって言ったのにー」


「あ、書いた本…」


「そーだよ、まったくもう!」


 廊下に響く鼻歌。


「~~~♪」


 ガラガラ


「こんちわー!ってあれ」


「ん?」


 突然、文芸部部室にやってきたその背の低い女の子は元気よく挨拶をしてくれたのだけど、驚きの方が強くて返せなかった。 それよりもなによりもまず、その女の子は。


「あれ? 瑠花ちゃん?」


「んー?」


 文芸部じゃないのです。


「ごめーん、部室間違えちゃった。 それではっ!」


 標瑠花、文芸部の隣にある化学実験部の方なのです。 とーっても頭がいいんだけど、たまーにこうして部室を間違えちゃうことがある、おっちょこちょいな天才さんなのです。


「今の人は?」


「あ、神崎さんははじめてだったっけ? 瑠花ちゃんに会うの」


「るか、さん?」


 んー、まあ、クラス違うし神崎さん転校生だし、知らなくて不思議はないか。


「お隣さんの化学実験部の人だよ。 えーっと、2組の標瑠花ちゃん」


「へー」


「瑠花ちゃんはね。 すごく頭がよくて、この前の中間は確か学年で7番だったかな?」


 ガラガラ


「あれ? 瑠花ちゃんまた?」


「いやいや~、今度はちょっと借りたいものがあってー…って、貴様何奴! あまり見ない顔だな!」


 瑠花ちゃんは神崎さんを見るなりその場から離れ距離をとり、身構えた。


「僕は…」


「問答無用っ! この目潰しをくらえー!」


 ポケットから取り出したなにやら粉っぽい小さな袋を神崎さんに向かって投げつけた。


「瑠花ちゃん! その人は最近来た転校生の神崎さんだよ!」


「え? 不審者じゃ…ない?」


 ガラガラ


「ちわーす。 ここにうちのアホ瑠花が来て…」


 ポフ


「あ」


 タイミングよく誰かが部室に、粉っぽい小さな袋はその人にあたって辺りは大量の白い粉に包まれ視界が奪われた。


「げほっげほっ」


「クウキ セージョーキクン ゼーーット。 あ、ポチっと」


 ギュイイィーーーン


 謎の機械音と共に辺りに充満した白い粉が吸い寄せられ浄化されていく。 視界が回復すると。


「ひ…ひひひ…平城…!」


「おう、アホ瑠花。 お前、ここでなにしてんだ?」


「いや、別にぃ…」


「ひらぎ?」


「あー…君は、誰?」


「その人は最近転校してきた神崎怜さん」


「転校生か。 俺は隣の化学実験部の平城悠太だ。 よろしく」


「は、はい」


 音をたてないようにそろーりと部屋を出ていこうとする瑠花ちゃんだったけど。


「おい、瑠花。 お前、どこ行くつもりだ」


「い、いぃえ、別にどこにもぉ…」


「ほう、なら良かった。 じゃあちょっとこっち来いっ!」


「いぃやぁぁー」


 平城くんに後ろの襟を捕まれ軽々と持ち上げられた瑠花ちゃんはそのままどこかへつれていかれてしまった。


 ガラガラ


「今度は、誰?」


「あ、岬さん」


「いつもいつも、うちの部員が迷惑かけてすまないな」


「いえいえ」


「ん? あんた、見ない顔だな」


「神崎です。 最近、転校してきたばっかです」


「そうか。 そんじゃ」


 ガラガラ


「い、今のは?」


「あの人は化学実験部の部長」




 神崎さんはまだまだ知られてない。

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