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信頼

「これは、少々、汚い手です。陛下のお許しが出なければ、私は諦めます。他の手を講じましょう」


 陳祇は頭を下げる。

 今や、陳祇の持つ情報網は、劉禅の目であり耳ともなっていた。


 特に魏の内部の細部までその網は行き届き、僅かな異変をも知らせてくれる。

 姜維の持つ涼州騎馬兵の偵察部隊とはまた違う、戦争よりも、政争に、謀略に用いるべき網であった。


「……陳祇よ」


 絞り出したような声である。


「お前に、任せよう。朕に報告は要らない、結果だけ教えて欲しい」

「仰せのままに」


 眉間にしわを寄せ、椅子に体の全てを預ける様に、背を反らす。

 瞳を閉じたまま、劉禅の思考はいまだ暗中を模索していた。


 この判断が果たして、吉と出るか、どうか。

 己が信念に、国造りに、この一手が正しいものなのかどうか。

 ただ、陳祇は信用できる。それだけは間違いない。

 ならば、信じぬくだけである。


 そう考えて、ようやく眉間から力が抜けていく気がした。

 目を開くと、いつもと変わらない、朗らかな笑みを浮かべる陳祇が立っていた。

 瞳に宿る、あの怪しげな光はもう見えない。


「思えば、陛下。各地方の将軍らは、皆、新しい人材へと移り変わりましたな」

「北は姜維将軍、南は閻宇将軍、東は宋預将軍。責任者が変わったからといって、何の混乱も起きる事無く、朕としても心強いばかりだ」

「一度、将軍らの顔合わせを行い、国家全体の戦略等を見直すべきなのかもしれません。前任の将軍らと、方針が異なる事など多々あるでしょうから」

「確かにな。今や、各地がそれぞれ複雑な問題や情勢に直面している。今までと同じように、とはとても行かんだろう」


 北方では、魏との緊張感が増々高まっている。

 南蛮の異民族らは、劉禅や蜀漢にではなく、馬忠や張嶷に忠誠を誓っている節がある。

 東方は呉帝の代替わりによって、外交関係の見直しが必要となっている。


 その全ての問題を一度、国家規模でまとめ、全体の方針を決める必要があるのかもしれない。


「やるなら近い内でしょう。時が経てば経つほど、任地を離れづらくなります」

「そうだな。費褘と相談し、日程を合わせてくれ。軍議には朕も同席しよう」


「御意」

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