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最弱の強者  作者: 夢火
9/18

露出女?と共同戦線

「ねぇ、恋斗ぉ〜」


 甘えるような猫なで声が聞こえた。

その音源がミナカだと判断するに恋斗は数秒間の時間を有しまったのは仕方ないだろう。

あり得ないのだ。ミナカ・イルピリスという少女がこんなにも無垢でキラキラと擬音が付きそうな微笑みで自分に話し掛ける行為が


「な、なんでしょうか……ミナカさん?」


 思わず一歩後退する恋斗。彼の傍らでは先程よりも心配そうな視線を送る睦月がオロオロとしている。


「アンタに色々と聞きたい事があるんだけどいいかしら〜?」

「……ヒィィ!」


 背後からどす黒いオーラを漂わせながら、それでいて笑顔で近付いて来るミナカに対して、間抜けな声を出しながら生物的本能で更に大きく一歩下がる恋斗。何だか今、関わったら物凄く不味いとセヴィラすらも傍観に徹している。


「まず、一つ。アンタのローブを羽織いながら腕にしがみついてるその下半身露出女は何……?」


「か、下半身露出女!?」


 ビシッ! と睦月に対して指を差しながら恋斗に問い質すミナカ。因みにこの時点で既に無垢な笑みなど崩れており、怒りで歪んだ閻魔が舞い降りていた。

睦月はミナカの放ったあまりにも酷い言い様に文句を言おうとしたが、『何か文句ある?』と言葉なしに鋭い眼光だけで一蹴され、体をプルプルと恐怖で震わせながらギュッとさっきよりも強く力で恋斗の腕に抱き付いた。


言わずと分かるようにその行為は余計に閻魔(ミナカ)の腹を煮え切らさせるものになってしまったが……


「ひ、酷いですよ、ミナカさん。下半身露出女だなんて……彼女には睦月さんという名前がちゃんとあるんですよ」


 ミナカの表情に腰を引きつつ説明する恋斗の影で顔を覗かせながら頷く睦月にイライラしながらミナカはそれを睨み付けて再び言葉なしに沈黙させた。


「それに、ミナカさんだって胸元をバッサリと切られて、胸が見え隠れした上半身露出女じゃ……すみません、調子に乗りました。ですから両手に竜巻を作るのをヤメテクダサイ……」


 土下座する勢いで謝る恋斗に対して相変わらずの視線を送りつつも、今更ながらもセヴィラとの戦いの際に服を破られていた事を思いだし、それを恋斗に指摘されて内心、恥ずかしくなってきたミナカだが決してそれを顔に出そうとせず、腕組みをしながらムスッと不機嫌そうな顔をする所が彼女らしい。


 又、そんな彼女を見て直ぐに腰のポーチから予備の黒いローブを出す恋斗は、やはり彼女のパートナーらしい行動だ。


「あははは………ま、まぁ、とりあえずミナカさんもそれを着て下さい。話しはそれからです」


 ポーチから取り出した黒いローブを苦笑した笑みを浮かべて頬を掻きながらミナカに渡す恋斗。


「ふんっ、アンタにしては気が利くじゃない……」


 やはりと言うべきだろうか、それをお決まりのツンツンした態度を見せながらしっかりとそれを羽織るミナカに恋斗は再び苦笑い。


「……っで、話しを戻すけど、結局その睦月って女は何なの? それに何でランクEのアンタが危険を省みずわざわざ戦場に出向いてターゲットを庇うような真似した訳? ちゃんと私が納得いくように──」


 機嫌を悪くしながら話しを続けるミナカの言葉が急にピタリと止まった。

そしてその視線はミナカ達の周りをいつの間にか囲っていた黒づくめ達に向けられていた。


「あはは……どうやら説明は後回しのようですね」


 ダムクライツは全員が能力者で構成された組織、それも戦闘員ともなればかなり実力を持つ能力者だ。

そんな連中に囲まれていても普段と全く態度を変えないランクEの最下位にミナカは呆れていた。


「ホント、あんなに減らしたのに随分な数ね……」


 恋斗に向けていた視線を再び黒づくめの連中へ戻し、ため息を一つ吐いた。

ざっと数えただけで四十人近く、しかも全員能力者揃いと来たからには流石にミナカと云えど相手をするのには骨が折れる数だ。


「まぁ、こっちには負傷したアンタ達のボスが居るのよ?

下手に攻撃して自分たちのボスに危害が及ぶような真似をする筈が──」

「構えろッ!! 小娘!!」


 余裕の態度を見せながらミナカは連中に向けてそう言葉を放ったが、その途中でセヴィラが声を上げて遮った。


「え?」


 セヴィラが叫んだ頃には既に黒づくめ方向から何かの能力で放たれたであろう、青い光の球体がこちらに向かっていた。

ミナカは予想外の出来事に声を上げ、一瞬だけ反応が出遅れてしまった。


「クソッ!!」


 所々に傷が目立つ体で片膝を地面に付けながらもセヴィラはコンクリートの破片に突き刺さっていた両刃剣を一気に引き抜いた。


「オラッ!!」


 そして流れるような動作で次は迫り来る青い光に向かって剣を投擲し、見事命中した剣は勢いを落とすことなく突き進み、剣は青い光を放った能力者の脇腹を貫いた。


「攻撃してきた!? しかもコイツも自分の仲間に……」


 一連の出来事に混乱を隠せないミナカに舌打ちをしながらセヴィラはこの状況下で唯一、取り乱していない恋斗に眼を向けた。


「オイ、そこの白髪小僧!!」


 セヴィラは剣の柄の先端から伸びた鎖を絡めてある腕を勢い良く引っ張って血の着いた剣を回収しながら恋斗の方に向かって大声を放った。


「白髪小僧って俺の事ですか? 正確には黒が混ざった灰色なんですが……」


 白髪呼ばわりされ、やや硬直気味な笑み浮かべつつも恋斗はセヴィラの声に応じた。

そんな彼の後ろでは、急に始まった能力者の戦闘に震えながらしゃがみ込んだ体勢をしている睦月が居る。


無能力者の睦月にとって能力者は恐怖の対象、しかも、つい先程その能力者に襲われそうになった彼女にとってこの状況はかなり辛いようだ。


「お前さんはそっちの小娘と違って、俺等の事情を知ってるようだから話しが早い。今だけでもいいから少し手を貸せ!!」


 そう言葉を交わしてる間も飛んでくる能力者達が放つ様々な攻撃をセヴィラは剣を振り回しながら全てに対処していく。

それを聞いて恋斗は苦笑混じりに言葉を返した。


「いや〜手を貸したいのは山々なんですが、遺憾な事に俺はランクEの最下位ですので足手まといになってしまう恐れがあります。ですから、代わりにうちのミナカさんにそちらの事情を説明して援護させるので暫しの間、待ってくれないでしょうか?」


「チッ、何でもいいから早くしてくれ!!」


 戦闘中にも関わらず長たらしい言葉を返す恋斗に苛つきながらセヴィラはそう言った後に黒づくめの方へ向かって一気に斬りかかって行った。


「せっかちな人ですね〜

まっ、この状況では仕方ないですか」


 黒づくめに突っ走って行ったセヴィラの背中に独り言のような声の大きさで呟いた後、恋斗は未だ唖然とした様子のミナカにニコニコ笑みを向けた。


「まぁ、そうことですのでミナカさん、彼の援護を頼みます」


「ちょっと待ちなさいっ!!」


 ポンとミナカの肩に手を乗せて『頑張ってください』と言わんばかりの顔をする恋斗に流石のミナカもキレた。


「一体全体なんなのよ、この状況は!!

なんであの連中は私達ごと自分等のボスを攻撃するのよ!? しかもあの男も遠慮なしにその手下に斬りかかってるし……ってゆうか、なんでアンタはそんなに余裕──うっ……」


 早口気に怒鳴るミナカに対して恋斗はやれやれと肩を竦め、右手の人差し指を立て、そっと彼女の唇に押し当てる事で沈黙させた。


「お願いですミナカさん、説明は後で必ずしますので今は俺の言葉を信じて、彼と一緒にあの連中を片付けちゃって下さい」


「……………………わかったわよ」


 此処に侵入する前も似たようなやり取りをした二人だったが、今回もミナカの方が折れたようだ。

ミナカのそっぽを向きながらした返事を聞いて恋斗は彼女に礼を言いながら右手を引いた。


「おや? 顔が赤いみたいですけど大丈夫ですか?」


 ミナカの顔を見てそう感想を漏らした恋斗は次の瞬間には圧縮した風の一撃を脇腹に喰らって地面でダウンしていた。


「うるさいバカ恋斗!!」


 不機嫌な口調でその言葉を言い残し、ランクAの少女は風を携えて黒づくめの連中へと向かった。



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