夏休みの思い出 後編
あの日の約束からしばらく。
ついにあの約束が執行される時が来た。
あの江ノ島へのお出かけから帰って来て約一週間が経ったお昼時。奈津希さんから電話がかかってきた。
『もしもし…』
「うん、どうしたの?」
『二人きりでのお出かけですよ!忘れてないですよね?』
「もちろん忘れてないよ、結局行き先どうするの?」
『えっと…明日決めません?』
「オッケー、じゃあどこで待ち合わせる?」
『私の家に…来てください……』
その言葉を聞いた瞬間、俺は何を思ったかもう一度聞き直す。
「今なんて?」
『もう!二度も言わせないで下さいよ!言うのも恥ずかしいんですから…』
「ごめんごめん…なんか聞き間違えちゃったかなって」
まぁ…さっき聞いた言葉には間違いは無いみたいだ。なんかすごく焦っちゃったよ…。
『そう言う訳なので明日の十時に相模大野駅前で待ってますんで…よろしくお願いします』
「うん、分かったよ。着いたら連絡するね」
そう言ってからしばらく間を空けてから電話は切られた。そんな訳で翌日、俺は待ち合わせ場所に居た。時間は予定時間の三十分前、まだまだ時間には余裕がある。
「ふぅ…少し早めに来ちゃったけど…大丈夫だよ…な……」
少し言葉が詰まった。なんと俺の視線の先には奈津希さんが居た。いつも通りの落ち着いた服装、いつも通りの髪型、見つけてすぐに分かった。俺はその子に近づいてみる。ただの変態みたいだが仕方のない事だ。
「奈津希さん?」
「あっ!正宗さん!」
やっぱり奈津希さんだった。彼女も待ち合わせ時間より早く来てたみたいだ。
「待ち合わせより早いですね」
「そう言う奈津希さんもでしょ?」
俺がそう返すと奈津希さんは少し慌てるようにこう返す。
「わ、私は心配性なだけですぅ!」
「ホントかな?」
少し問い詰めてみる、それから少し間を空けてから聞き取りにくい程の小声が聞こえた。
「……さんに……く…………たかった…」
「ん?何か言った?」
「いやいや!なんでもないです!」
そこにはなんでもないよとジェスチャーする奈津希さんが居た。なんか可愛い…。
「まぁ…いいや……それじゃあ行こうか」
「はい…それじゃあ案内しますね」
そう言われると、道中道なりを教えてくれたり、ここにはこれがあるだの色んなことを教えてくれた。覚えきれないぐらいに…。駅から歩いて数十分、目的地に到着した。
「ここが我が家です」
そこは落ち着いた住宅地の中だった、そんな中にひっそりと佇む可愛らしい一軒家。それが奈津希さんの自宅だった。
「それじゃあ上がってください」
「うん、それじゃあ失礼するね…」
そう言って奈津希さんは玄関を開ける、すると「おかえりなさい!」と言う声が二ヶ所から聞こえた。そのうち一人の声の主の正体がリビングに行くと分かった。
「ただいま」
「おかえりなさい、ん?そちらは?」
「あっ、初めまして…新井正宗と言います。奈津希さんとはラノベを通して知り合って…」
「はい、お話は奈津希から聞いてますよ、この子ったら正宗さんの話ばっかりするんですよ?」
「もうっ!お母さん‼︎」
やっぱり奈津希さん母でしたか…。
「どうしたの?騒がしいけど…」
階段から降りて来てリビングに来たのは…誰だ?なんとなく奈津希さんのお母様に近いものを感じるが…それに年齢的には姉さんと同じくらいか?
「あっ、お姉ちゃん居たの?」
やっぱり奈津希さん姉でしたか!
「ん?奈津希の彼氏?」
そのセリフを言われた途端吹きそうになったがなんとか抑えた。それを言われた奈津希さんは少し顔を赤くしてこう言う。
「違うよ!まだお付き合いしてないし!」
「ふ〜ん…」
そう言って俺の元に近づいて来た。
「ふ〜ん…君が噂の正宗君か…よろしくね♪」
「はい…よろしくお願いします…」
俺は一応礼儀正しく挨拶をした。失礼ながら…朝倉シスターズは……胸が小さい気がする…。
「なんか言いたそうだね」
「い、いや、そんな事ないです!」
この言葉は口が裂けても言えないな…。
「正宗さん!私の部屋に行きましょう!」
「う…うん…」
俺は言われるがままに奈津希さんの部屋に行く。
奈津希の部屋に入るとそこには落ち着いた雰囲気の家具か置かれていた。そんな中ベッドの上に熊のぬいぐるみが置いてあった。そんな部屋に小さな机が置いてあり、そこには色々と調べたのか雑誌が数冊置いてあった。
「それじゃあ決めましょうか」
「そうだね、雑誌も数冊あるし」
最低条件は近場、低予算、それでもって楽しめる所。それが絶対条件だ。
「どうしようか…いっぱい選択肢があるね…」
「どうしましょう…一つに絞れません…」
全くその通りだ。こんな沢山の行き先候補より一つを選ぶのは結構難易度が高い。
「奈津希さんはどこか良いなぁって思った所ってないの?」
「えっと…ココとか良いかなって…」
そう言って指差す先には近くのアウトレットパークだった。
「お買い物か…良いかもね!ココにする?」
「いや!まだもう少し考えてみましょう!」
それから俺たちはひたすら、何周も見返して候補地をいくつかに絞ることが出来た。それに費やした時間は二時間ほどだろうか。気が付いたらお昼前だった。
「頑張って三つに絞れましたね」
「そうだね…ここからが問題だね…」
まぁ、先に候補地を言っておくと…。
その一、近くのプールと遊園地を組み合わせたようなレジャーランド。
その二、近くのアウトレットパークにてお買い物。
その三、普通に東京観光。
の三つとなった…。 俺的にはどこでも大丈夫だが、奈津希さんの意見も尊重しなければならない。
「えっと…ここからどうやって決めましょうか…」
「そうだね…どうしようか…」
俺たちはしばらく頭を抱えていると奈津希姉が入ってきた。
「……二人してなにやってるの?」
「あっ、お姉ちゃん!私たちを助けて!」
奈津希さんはそう言って現状を伝える。
「そういう事ね〜、それじゃあサイコロで決めたら?」
あれっ?なんか前にも聞いたことある台詞が聞こえたような気が…。
ちなみにそれを聞いた奈津希さんは…こう言った。
「いいね!それ使うよ!」
おいおいマジかよ…それで良いのか本当に…。
「そういえば奈津希」
「ん?どうしたの?」
「なんで正宗くんに敬語なの?」
まぁ、正直その事は結構気になってた。
「えっと…その…」
「それに正宗くんも!」
「ひゃい!」
想定外に俺にまで質問玉が飛んで来たからなんか変な感じになっちゃったじゃん!なんか恥ずかしい…。
「正宗くんも、なんで奈津希の事奈津希さんって呼んでるの?」
「えっと…」
俺は言葉が詰まった。無意識に使っていたから…どうしてって言われても…。
「それじゃあ!今日から君達はお互い下の名前でなおかつ呼び捨てにしてみよう!奈津希は敬語を使わない事!」
うおっ!マジか!結構それハードル高くないか?俺はすぐに対処出来るが、奈津希は…。
そう言われた奈津希の口から意外な言葉が出てきた。
「分かった!やってみるよ!」
その言葉が出た瞬間、俺の中には二つの想いが交差した。一つは直す事が出来るのかという不安と、その言葉を聞けた喜びだった。俺の中にはその言葉を期待していたのかもしれない。
「じゃあ少しずつ直していこう!じゃあ私はここで退散しますねー」
そう言って奈津希姉は部屋を出た。残された二人、お姉さんが来る前と後ではだいぶ雰囲気が変わった。俺たちはしばらく沈黙した。その沈黙を打ち破ったのは意外にも奈津希だった。
「じゃあ…正宗くん…」
ぬお…やっぱりこれは難易度が高かったかもなぁ…。
「奈津希、やっぱり難しかったら無理しなくて良いんだよ?」
「えっ…」
「だって今の奈津希だいぶ無理してるよ、だから…呼び方だったり話し方だったりはまだ先でいいと思うな…俺もあんまり慣れないし」
「そうですか?」
「そうだよ!だから俺も前みたいに話すから、奈津希さんも、いつも通りに話してくれる?そっちの方がお互い良いでしょ?」
そう言うと、奈津希さんほいつもの奈津希さんに戻っていった。
「はい!分かりました!」
俺もやっぱりこっちの方が良いな。
「それじゃあ、忘れかけてたけど…決めようか」
「はい!」
そんな訳で、お姉さんが提案した方法で決め、行き先はアウトレットとなった。決まった直後に奈津希母が来た。
「奈津希、正宗くん、お昼ご飯が出来ましたよ」
そう言われ俺たちはリビングへと向かう。そこにはどれも美味しそうな料理が置いてあった。
まぁ、慣れない空間での食事だから、少しは遠慮しながら食べる。でも、当たり前ながら俺とは比べ物にはならない料理スキルだ…。ここで修行したいなんて思う。
「正宗さん…どうしたんですか?」
「いや…どれも美味しいなぁって…」
そう言うと奈津希母は少し照れてるのか頰を赤らめたのが分かった。
「もしかしてお母さん照れてるの?」
「そ、そんな事ないですぅ!」
なんか…毎日こんな感じなのかな…。
「でもありがとうございます。お口に合うか不安でしたがそう言ってくださると嬉しいです」
「お母さん、褒められると伸びるタイプだもんね♪」
「うん!どんどん成長していくよ!」
毎日楽しそうなファミリーだな…。
こうやって大勢で食事をすると懐かしい記憶が思い出される…。
「そういえば正宗くんとのデートの行き先は決まったの?」
「ぶふっ‼︎」
不意打ち過ぎだろ…。
「もう!デートじゃないって!」
なんか…個性豊かなファミリーだな…。
そんな楽しい時間を過ごし、夕方頃には俺は自宅へと帰る。駅までは奈津希さんが送ってくれた。その道中では少し雑談をしながら歩いた。江ノ島での事、今日の事、家族の事、行きはあっという間着いたはずなのに、帰りだけは道のりが長い気がした(奈津希さん曰く遠回りをして駅に向かったから無理ないよって言われた事は公然の秘密)。そんでもって今度奈津希さんに会ったのはお出かけの当日だった。俺は前回待ち合わせた場所と同じところに居た。今の時間は八時前、待ち合わせ時間は八時半。前回同様待ち合わせ時間より早くに来た。駅のコンコースには多くの人がいる、人混みの中俺は空いている空間を探し周りを見る。そんな時誰かと目が合う。その人こそ奈津希さんだった。前回同様に早めに来たようだ。目が合った俺たちはお互いに歩み寄った。
「おはよう、また早く来たんだね」
「正宗さんこそ前みたいに早く来てるじゃないですか」
「そうだよ、だって楽しみだったからね」
そう言うと奈津希さんは少し頰を赤らめたのが分かった。
「じゃ、じゃあ行きましょう!」
そう言って改札へと向かう奈津希さんを慌てて止める。
「い…いや…まだ出発まで時間あるんだけど…」
「ふぇ?」
奈津希さんの頭の上には?マークが沢山浮かんでる様な気がする…。
「今日はバスで行くから電車には乗らないよ…」
「し、知ってますよっ、わざとですし…」
絶対知らなかっただろ…。
それから出発時間までの四十分程を近くの喫茶店で過ごすことにした。俺はフレンチトーストのセットを注文し、奈津希さんは…なんか長ったらしい名前の物を注文していた。ほんの数分すると注文した物が来た。思っていた以上に美味しそうだった。
「正宗さんの美味しそうですね」
「そう言う、奈津希さんのも美味しそうだけどね」
俺たちはそんな会話をしてから料理をいただく。そんな中、前方より強い視線を感じた。
「ど、どうしたの…」
「あっ、その…美味しそうだなぁって…」
「–––良かったら食べる?」
「良いんですか⁉︎」
そこには目を輝かせてる奈津希さんがいる。
「そう言って俺はフレンチトーストを一口大に切ってから奈津希さんの口元へと運ぶ」
「えっ、その…」
「ほらっ、こぼれちゃうから」
そう言うと「パクッ」という音が聞こえそうな勢いで食べる。
「–––美味しいですけど…なんかずるいです…」
奈津希さんは頰を膨らませている。
「仕方ないよ…」
それからしばらくしてから奈津希さんがこう言う。
「——お、お返しです…」
「お、おう…」
そう言ってワッフルを一口大に切り俺の口元へと運び始めてる。
「あーーーーーーんっ」
口を閉じた途端「ガチィッ!」という音がした。その瞬間何が起こったか自分でも把握できなかった。ただ俺の口の中には何も入っていない事だけは分かった。
「ご…ごめんなさい…」
「い、いや…」
今やっと状況が分かった、奈津希さんが使っていたフォークにはワッフルが刺さったままだった。どうやら直前で自分の手元へ戻したようだ。
「ごめんなさい、緊張しちゃって……」
「お、おう…気にしなくていいぞ…」
俺の歯…折れてないよな…。
そんな感じでゆっくり?お茶をした後、バスに乗るためにバス停に移動する。そこには既にバスに乗る人たちが数人並んでいた。並び始めてすぐにバスが来た。
「あっ、来ましたよ!」
「ホントだね」
来たのは空港とかに行くときに乗る大きなバスだった。我ながらこういうのに乗る時にはワクワクしてしまう。運賃はどうやら後払いらしく、ほかの乗客はどんどん座席に座る。俺達も座席に座る。景色が楽しめるように左側に座った。窓側に奈津希さん、通路側に俺が座った。バスは俺達が座ってからすぐに発車した。
「なんかワクワクしますね!」
「うん、俺もワクワクするよ」
しばらくは下道を走行するらしい。俺の地元町田や南町田を経由していくらしい。
「なんだ…正宗さんの最寄を通るのならそこから乗ればよかったのに…」
「いや、だって待ち合わせなかったらさっきみたいに改札へ向かってただろうに…」
「そ、そんな事無いですよ‼」
いやいや、真っ直ぐ改札に向かってたくせに…。
まぁ、そんな話をしながらバスに乗り始めて一時間、景色は住宅地から海が見えるようになった。
「海だぁ!」
「ホントだね」
奈津希さんは窓に張り付いて外の景色を見ている。それから海沿いを走行してからしばらく、バスはアクアライン突入した。トンネル内ではお互いが執筆しているラノベの事を話していた。
「正宗さんは今どんな作品を書いてるんですか?」
「うん、今回は学園ものを書いてるよ、学園一可愛い先輩と先輩に恋した新入生って感じのを書いてけど…良かったら見る?」
「えっ!良いんですか⁉」
「うん、でも外部には漏らさないでね…まだ誰にも見せてないから」
「やったぁ!」
奈津希さんは目をキラキラさせている、そんな奈津希さんのスマホにデータを転送する。
「ありがとうございます!」
「どういたしまして」
そんな会話が終わった直後、バスはトンネルを抜けた。
「「わぁぁぁぁ…」」
そこには一面の海、俺達は今海の上にいる。
「すごいです!」
「おう、ホントだな!」
しばらくは外の景色を楽しむ。しかし数分すると目的地に近づいた。
「もうすぐ着くから準備しないと…」
「そうですね」
俺達は降りる準備を始める、準備が終わった頃には目的地に着いていた。降りる際に運賃を支払い目的地へと降り立った。
「「着いたぁぁぁぁ!」」
二人でテンションマックスだった。
まぁ、そんなテンションを何とか抑え、いざメインの買い物を開始する。
まずはバス停からすぐ近くの入り口にあったパンフレットを片手に散策を始める。
「それじゃあ、目に留まったところから見ていきましょうか」
「そうだね、じゃあ…」
そんな感じで適当に散策し買い物する事となった。
「ここ行ってみたいです!」
そう言って奈津希さんは俺の腕を引っ張る。
「これとかどうですか?」
「うん、良いと思うよ。似合ってるし…」
「試着してみますね…」
そう言って試着室の前に来た。それから数分待機してからカーテンが開いた。そこにはさっき言っていた服を着た奈津希さんが居た。
「ど、どうでしょうか…」
「う…うん…凄く似合ってるよ……」
正直惚れてしまうレベルだった…。
「じゃあ…買っちゃいます…」
「ありがとうございます!」
そう言う店員の声がした。それから元の服に着替え直し、先ほどの服を購入した。
「ふふっ…」
「どうしたの?」
そう聞くと奈津希さんは俺の前にぴょんと出てきて見上げるようにしてこう言う。
「だって正宗さんに初めて選んでもらっちゃいましたし♪」
「それは良かったね!」
「はいっ!ありがとうございます!」
「でも良かったの?こんなに早くに買っちゃって?」
「大丈夫です、予算はたくさん持ってきましたし!」
奈津希さんは平らな胸を張ってそう言う。
「それじゃあ今度は私が正宗さんの服を選ぶ番です!」
「おっ、それじゃあ任せたよ!」
「はい!任せられました!」
奈津希さんは近くにあった店に立ち寄りそこで服を選んでもらった。
「これでどうですか?」
「うん、すごく気に入ったよ!ありがとう!」
「どういたしまして!」
そう言って選んでもらった服を買い店を出た。
「そうだ、そろそろお昼ご飯にしようか…」
「はいっ、そうしましょう!私もうお腹ペコペコです!」
そんな訳で俺達はフードコートへと足を運んだ。時間帯のせいか結構混んでいる。
「どこも空いてませんね…」
「そうだね…」
「あっ、あの四人席が空いてます!」
そう言って指差す先には空席があった。俺は急いで座席を確保した。
「あっぶねぇ…」
「ふふっ、今の加速すごかったです…」
「あはは…こう見えて中学の時は陸上部だったからね…」
「へぇ~…意外です…」
奈津希さんも席に着いてそう言う。
「それじゃあ、何食べよっか…」
俺達は並んでいる店舗を見まわす…。
「私アレ食べてみたいです!」
そう言って奈津希さんが指差した先には洋食レストランだった。
「じゃあそうしようか」
「じゃあ買ってきますね!」
「いや、俺が行くよ。俺もあそこで買いたいし…奈津希さんはどうする?」
「じゃあ…オムハヤシライスが良いです!」
「じゃあ買って来るね」
そう言って俺は席を立ち注文をしに行く。
「それじゃあこれと———」
注文してから数分後、料理が出され俺はテーブルへと運ぶ。
テーブルに戻ると奈津希さんは熱心にスマホを見ていた。
「何してるの?」
「あ、その…さっきの新作を見てました…」
「そっか…あっ、それなんだけどいつでも最新状態に出来るように設定しておいたから、俺が追加で書いても更新すれば奈津希さんも更新された状態で読めるから、何かあったらコメントしてほしいんだ…そうすれば修正するから」
「了解です!」
奈津希さんは可愛らしく敬礼している。
「それじゃあ、食べようか」
「そうですね」
そう言ってから俺達は昼食を頂く。食事中にふと奈津希さんの方を見ると口にソースが付いていた。
「奈津希さん…口にソースが…」
「うそっ!」
奈津希さんは慌ててソースを拭く。
「取れましたか⁉」
「う、うん…きれいに取れたよ…」
「ふにゃぁ……恥ずかしいです…」
奈津希さんは顔を真っ赤にしている。まるで茹蛸のようだ…。
そんなトラブルもありながら、お昼ご飯の時間は過ぎ去り、買い物も後半戦に突入した。
「じゃあどこ行ってみる?」
「えっと…さっきから気になってたお店が外にあるのでそこに行きたいです」
そう言われて連れていかれた先にはポップコーンの店があった。わりとこの店は有名っぽいけど来た事は無くここにあることすら知らなかった。
「うわぁ…流石に並んでますね…」
「ほんとだね…思ってた以上に並んでるね…」
そんな行列に俺たちも並ぶ。だがそこからが割と早かった、並んで数分するともう店内直前だった。
「意外と待たなかったね」
「そうですね、意外とすぐ来ちゃいましたね」
気付けばもう俺たちの番だ、物品を購入し店を後にする。この時の俺たちは、この後にあんな事が起こるなんて、知らなかった…。
「そうだ正宗さん!さっきフードコートに行く途中でGO○IVAを見つけたので行ってみませんか?アイスとか売ってるらしいですよ!」
「GO○IVAか…行ってみるか!食後のデザートには丁度いいかもな!」
そういう訳で俺たちはGO○IVAで、至福のひとときを過ごすためにアイスを買いに行く。現在位置からフードコートを抜け、メインストリート的な所にあるので大した距離は歩かない。だが現地に着くと思いもよらない事が起こった。
「あれっ?マー君?」
「あれっ?奈津希?」
その声のする方に二人で視線を送る、そこには声の持ち主がいた。
「姉さん⁉︎」「お姉ちゃん⁉︎」
異常な状況、なぜこの二人が一緒にいるのか、なぜここにいるのか、現状況を俺と奈津希さんは分からないままだった。
「どうしてここに?」
「いや〜、話せば長くなりそうだからそれ飲みながらあっちで話そうよ」
そう言って姉さんはメインストリート的な所にあるベンチを指差し、俺たちはそこでこの事の詳細を聞くこととなった。
「えっと…まずは姉さんと奈津希姉がどうして一緒にいるの?」
「うん…まずは私と朝倉ちゃんは大学の先輩と後輩の関係なんだ」
「「––––––はっ?」」
俺と奈津希さんは硬直した。
「じゃあ、俺と奈津希さんが会う前からそこでネットワークは繋がっていた訳なの?」
「まぁ、そういう事になるね…」
俺の姉さんはそう言う。意外すぎる…言葉が出なかったぜ…。
「にしてもなんでお姉ちゃんと正宗君のお姉さんがここにいるの?」
「えっと…たまにはこう言うショッピングも良いんじゃないかなぁ…って」
絶対何か隠してる、その事は俺でも分かった。奈津希さんはも何かを察したらしい。
「嘘でしょ?」「嘘だね」
「バレた?」
そんなあっさり認めちゃって良いのか⁉︎秒で認めたぞ!
「まぁ、私と愛美さんで二人を尾行しようって事になったんだ!なんか気になっちゃったからね♪」
「あっ…そうだったんだ……ちなみにどの辺りから付いて来たんですか?」
「君たちが駅で待ち合わせた辺りから…」
ほぼ最初からじゃん!全くと言って良いほど気が付かなかったよ…。
「まぁ、色々と楽しませてもらったよ♪」
そう言われて思い出した、喫茶店で起こった事を…。俺たち二人は顔を真っ赤にした。
「「あぁ‼︎もうやめて‼︎」」
結構声大きかったからか周りから視線を感じる。ここにいる四人全員が顔を赤くした。
「そ、そういういことだからさ…見つかったらもう尾行できないから一緒に買い物しようよ!」
「私は正宗くんに服選んで欲しいな」
「あぁ!それはずるいよお姉ちゃん!」
勝手に事が進んでいく…もう手出しするのが面倒だったから流れに任せてたら…。
「どうしてこうなった?」
今俺は美女に囲まれて買い物をしている…。
俺と彼女達を天秤にかけたら絶対に釣り合わない…周りからの視線が集まる。
「おい…あの人たち…」「モデルさん?スタイル良いなぁ…」
彼女達の賞賛の声が聞こえる。だが、彼女達だけが言われる事はなく俺へのコメントも聞こえた。
「にしてもあの男、全然パッとしないよな…」「なんであんな奴といるんだろう…」
うるせぇ!パッとしないからなんだ!と自分に言い聞かせる。
そんな感じで三人の買い物対応をしつつ、荷物持ちを行う。気がつけば帰りのバスの時間が近づいてきた。
「もうすぐ帰りのバスだよ!そろそろ撤収しようか」
『はぁ〜い!』
そんな訳で時間に近づき、俺達は大荷物を抱えバス停へと戻る…。待機列に並ぶとすぐにバスが来た。俺達はバスに乗り込む。するとすぐに出発した。
「むにゃぁ…疲れたぁ…」
隣からそんな声が聞こえる。そして肩にポスっと温もりを感じた。
「私も…」
「私も疲れたぁ…」
後ろからもそんな声が聞こえた。その後後ろからの声は無くなり、背もたれの隙間から覗くとスヤスヤと寝ていた。
「ふぅ…俺も少しだけ……」
そして俺も睡魔に負け、眠りに就く。ただただ脳裏に今日の思い出が浮かんだ…。
「こうやってみんなと出掛けるのも良いなぁ…」
俺は薄れる意識の中…そう思った…。
お、俺の荷物持ちの仕事はいつ終わるのかなぁ……。
いかがでしたか?
今回は少し短めになってますw
それと…更新が遅れて申し訳ございません。
いやぁ、現地訪問とかしたいなぁって思ってたんですけどスケジュールが合わないんですよwですので過去に訪問した記憶やホームページを頼りに執筆しました。
それに、執筆に躓いたとき私の過去作「俺が初恋をしている件について」(なお未だ更新中)を見返してたりしてました、それで読むたびに思います…「執筆スキル低下してない?」
読者ならなんとなくわかると思います。
明らかに書き方が下手になってますw
そのため大規模なリニューアル更新を行います!
シナリオはそのまま!所々を変更したものを再度投稿します!詳細はTwitterにてご覧下さい。
「@satuki1850」で検索!
それでは前半では本作についてお話しして後半は宣伝みたいな感じになってしまいました。
それではまた次回作をお楽しみに!