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東方緑双風~The One Epilogue~  作者: にいな
5/6

到着


椛は龍二達の前に、既にひとつ戦いを終わらせていた。



「……まさか、お前が手伝ってくれるなんてな。」



男側についた椛は、梨子との弾幕勝負に勝利した。



「それはこっちの台詞、言いたいですけどね……貴方が龍二殿とともに行おうとしている事はなんですか?」


「……どうしても話さないといけないか?」



椛に話すことは気が進まなかった。

男は、ここで話すと今度は椛が逆らいにくるかもしれない。また、一度負けた梨子も再び、加勢してくるかもしれないと考えた。

そうなると、男にとってはとても面倒な事になるのだが、椛は力強く頷いた。



「……わかった。包み隠さず話そう。ただ、話したあとに急に襲いかかるとかはなしだ。」


「そうなるような、話なのですか?」



男は話した。一度やられた梨子も起き上がり、静かに目的を聞いていた。

また、質問した椛も最後まで冷静に聞いていた。



「……と、まぁそんな感じだ。」


「……最終的に成功すると、雪菜殿は助かり、龍二殿はいなくなる。そういう事ですね?」



男は頷く。

椛は成る程、と呟き更に一言。



「では、行きましょうか。」



その言葉に、男は首を傾げた。

その様子を見て、椛はため息をついてから、苦笑い気味で答えた。



「彼が、命懸けで雪菜さんを助ける事は、今に始まった事ではありませんから。」



前に感じた違和感が、雪菜に対するものだと気がついた椛は、心の中で納得していた。



「梨子さんも、そう聞いていれば抵抗しなかったのでは?」


「ホント!服がボロボロじゃないの……」



そう言って立ち上がる梨子。



「ま、アイツが納得しなかっただろうけどね。」


「先輩……ですか。今は龍二殿と戦っているようです。」


「そろそろ時間がヤバイかもしれないな……」



男はそう呟く。

そして、考えた男は二人に告げた。



「俺と龍二はあの娘の方へ向かいたい。お前達は射命丸の足止めをしてくれ。」



二人は同時に頷く。

そして、洞窟の奥へと進んだ三人のうち、まず椛が文と龍二の間にわって入る事にした。

何も知らないというフリをして龍二に聞く。



「とりあえず、戦闘は後にして話してくれませんか?」



「もし話すつもりがないなら、私は先輩の味方につきます。もし話してくれたら、内容次第では龍二殿の味方につきます。」


「……必ずしも、話せば味方にならないと?」



椛は頷く。

文も続けて言った。



「私も知りたいです。早く話してください。」



龍二の顔は少し面倒そうだった。しかし、このまま話さなかったとしても仕方がないので、話すことにした。



「……まず、俺は雪菜を助けに行く。これは必ず達成したい事だ。今のあいつの状態は……椛わかるか?」


「………………体が薄くなっていますね。」


「……急いだ方がいいな。」



少しだけ焦りを見せる龍二。



「今、消えかかっている雪菜を助けるにはアイツを何か別の器に入れること。器からあいつの思念が漏れだす事はない。」


「器……というのは?」


「中身を思念・精神と考えた場合、器は身体だろうな。」



文が納得してくれたのを確認した龍二は話を続ける。



「ただし、俺は無犠牲でアイツを助ける方法を知らない。鬼神が知っているのも、身体に入っていた元の精神を追い出す必要があるし、追い出された精神は消滅するようだ……」



「では、一体誰の身体を使うんですか…………」



聞いた文。しかし彼女はすぐに察した。

そのまさかと言わんばかりに龍二は右手を丸めて胸を軽く叩いた。



「俺の身体を使う。勿論、真っ当な理由があって……だ。」


「その真っ当な理由とは?」



冷静に文は聞く。



「文は今回の……いや、正確には外の世界から続くこの1つの異変が、一体誰が黒幕かわかるか?」



文は首を横にふる。

椛もまた、同じジャスチャーを示した。



「今回はどうやら、龍神様とやらが黒幕らしい。」


「!?」



二人は同時に驚く。



「龍神が俺を狙う理由っていうのは、俺の中にある奴の神力を取り戻したいようだ。取り戻した後、奴は幻想郷を破壊する。それがあいつの目的のようだ。」



一息つく龍二。そしてすぐに説明を再開した。



「神力は俺の精神と共にある。もしも、俺が消滅したら……おそらく、俺の中にあるであろう神力も消滅するだろう。」


「……つまり、龍二殿が犠牲になる事で、雪菜殿は助かる。また、龍二殿と繋がる力も消滅するから、暫くは龍神様が幻想郷を破壊する事は出来ない……という事でしょうか?」



椛のその解釈に、龍二は頷く。



「これは俺が原因で起きた問題だ。巻き込まれたのは雪菜だった……」


「だからもう彼女を巻き込みたくない……と?」


「ああ。俺と龍神のせいで犠牲になったのは沢山いる……俺を助けるために、いなくなったやつも、親父だけじゃなかった……!」



記憶を取り戻した龍二の頭の中に蘇るのは、自分に真実を伝えたせいでいなくなった者……



「彼女のおかげで、俺は真実を知った……あの時は失敗した。けど、今回は失敗しない。」



文と椛は黙って聞いていた。



「話すことは話した。そこをどいてくれ。無理なら力ずくでも行かせてもらう。」


「……私は、」



言葉が詰まる。

彼がいなくなる事での、利点と言われるものはわかった。

しかし、残る側の意見のひとつとして、やはり龍二が消えることは嬉しくない。



「行ってください。」



そう言ったのは椛だった。



「先輩への説得は、私達がしておきますから……あの男は先に向かっているはずです。」


「!……有難う!」



そう告げ、先へ進む。

後を追おうとした文だが、不規則な弾幕が目の前を横切った。



「……許しなよ。」



文にそう語りかけたのは梨子。

横切った弾幕も彼女が張ったものだった。

文が梨子の方を向くと、梨子が続きを話す。



「私には、なんとなくわかる。自分を捨ててでも、守りたい者はある。大切なものの為なら、自分を犠牲にする事がどれだけ簡単に思えてしまうかも……」



弾幕が流れり、文は再び奥の道を見る。龍二の姿が見えづらくなってしまった。



「……なんだかんだで、アイツは昔からそんな奴だったわね。」



……この時、椛には疑問に思うことがあった。

彼に真実を教えたのは一体誰なのかという事である。



「……彼は、私と会う前、誰といたのでしょうか……?」


「…………似たような境遇の子がいたのよ。」



梨子は答える。



「何も、一人しか作らないなんてことはないじゃない?」


「つまり、龍二と同じように創られた者が?」


「そういうこと。」



頷き、話を続ける。



「でも彼女達はもういない。その原因が自分にあるって……あいつはそう思ったんでしょうね。だからこそこれ以上……特に雪菜は、自分のせいで消えて欲しくないってことね。」



途中で男と合流した龍二は、男が自分に手を貸したもう1つの理由というのを聞いた。



「別に、俺にならいいだろ?」


「……お前だからこそ、言いたくない事もあるけどな。」



しかし、ここで言わないと約束が果たせないというのもあると男は思った。



「……ある女性に頼まれたからだ。お前が記憶を奪われる前にお前に真実を教えた……」


「!!!」



それは意外な人物だった。

龍二に真実を教え、龍二の手助けをしたその女は……



「俺のせいで死んだ……」


「いや、アレは龍神のその時の性格がな……」



しかし、それでも自分に非があると龍二は考える。



「それで、あいつがどうかしたのか?」


「……もしお前が詰んで、それでもお前が命懸けでも雪菜を助けるつもりだったら、お前を手伝えってさ。」



女は龍二の敵だった。

しかし女は龍二を殺す事は出来なかった。どころか、彼を助ける事にしたのだ。



「あいつの正体も知ってるよな?」



男が龍二にそう聞くと、彼は頷いて答えた。



「……あいつのおかげで、俺は自分の事がわかった。」



そう呟いた後、龍二は心の中で呟く。



(彼女は、立派だった。誇りに思われるべき娘だった……)


「あいつは、お前に礼があると言っていた?」


「礼?」



聞き返すと、男は頷く。



「お前と触れ合うことで、暖かい感情にまた触れることが出来たと。」



言われた龍二にはいまいち理解しずらい事だった。

自然と首を傾げ、それを見た男は告げた。



「……お前は龍神様の分身みたいなものだ。だから、あいつからしたら龍神様と同じものを感じただろう。」



だからこそ、彼女は龍二を殺す事に失敗して、龍二の手助けをしたのだろうと男は思う。



「……それなら、今回は絶対に失敗出来ないな。」



そう呟いた龍二に男は予め告げる。



「だが、必ず成功するわけでもない。それに成功したとしてもそれで全てが終わるとは限らない。いや、終わらないだろうな……」


「…………」


「それでも、お前はやるのか?」



龍二は自信を持って答えた。



「やってやるよ。俺は何回も絶望に近いものを感じた。もし、今回あんたが俺に記憶を返して、手を貸さなかったら絶望に落ちる事になってただろうな。」


「でも、その中であんたが可能性のある希望を差し出した。絶望の中に希望が繰り出されたんだ。その希望を掴みとれる可能性があるなら、掴みたくなるだろ?」


「……そうかもな。」



僅かな希望でもあるなら、それを実現させる為に頑張る。

育て父親譲りの考えに無意識にも似てきた事に男は気がつく。



「……やっぱり、お前はあいつの息子だな。」



だが、龍二はその事に気がつかず首を少し傾げた。

構わず、男は告げる。



「さ、そろそろ出会うんじゃないか?」


「あぁ……」



前を見る二人、ついに龍二は雪菜と早苗と、合流する事が出来た。

雪菜の体は消えかかっている。



「龍……二………?」



半透明の彼女は早苗の背中に乗っていた。



「……アンタを、助けに来た。」


龍二は、二人にそう告げる。

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