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東方緑双風~The One Epilogue~  作者: にいな
4/6

起点 弐


雪菜と出会って間もない頃、彼女は仲間であるはずの者から狙われていた。

彼女が命令に従わなかったからだ。



「……龍二、君を殺すことが命令だった。」


「なっ……」



前にそう答えられた時、龍二はわけがわからなかった。自分が殺されなければならない理由とは?


しかし今はそんなこと、どうでもいい程雪菜の事が心配だった。



「……そこまでしてこの子を助ける意味はあるのかしら?」



雪菜を助けに行った時、雪菜を狙う者が聞く。



「……嫌なんだよ。」


「?」


「これ以上、いなくなるのが……!俺のせいで、友人や家族が失うのが!俺は嫌なんだ!」



叫ぶ。自分の思いを相手にぶつける為に。

このとき既に龍二は大切な人を二人失っていた。

一人は、神崎勇樹。もう一人は、源川繰希だ。



「待ってろ東條……すぐに助けるから。」



絶対に。

そして、彼は相手を倒した。その時は見事助ける事が出来たのだ。



「大丈夫か?」



雪菜に近づいて聞く。彼女は頷いた。



「また助けられちゃったな。それに……」


「また巻き込んだ、はナシだからな。今回も俺は巻き込まれたんじゃない。」


「……ありがとう。」



純粋に雪菜は嬉しかった。

しかし、一番の目的が龍二だった事をまだ知らなかった雪菜は自分のせいだと考えていた。

だからこそ、これ以上彼の近くにいてはいけない。そう考えていた雪菜だが、



「帰るぞ。」



そう呼びかける龍二に、ついていきたくなってしまった。

まだ彼と一緒にいたいという気持ちがとても強くなっていた。



「うん……!」



頷いた雪菜は、彼の隣を歩く。

ここで終わってほしい、平和な日常というのに戻りたいと思っていた。

しかし、そうもいかずに、龍二はこの後も争いに巻き込まれるようになった。それは龍二が狙われているわけではなく、目的は雪菜だった。


そして雪菜が突然、行方不明になってしまう。それと同時に龍二の周りで争いが起きることがなくなったのだが、龍二はいなくなった雪菜が心配で仕方がなかった。

立冬を過ぎた頃、帰り途中の龍二に一人の少女が話しかけてきた。



「……龍二殿でしょうか?」


「そうだけど……君は?」


「私は椛と申します。突然ですが龍二殿……私と協力して頂きたいんです。」



話しかけてきたのは、幻想郷からやって来た犬走椛だった。



「私と共に、悪人……いえ、悪妖怪と戦って下さい。」


「……は?」



椛が幻想郷からやって来た理由は、幻想郷から逃げ込んできた妖怪を連れ戻す為。

そんなことを突然言われた龍二は勿論鵜呑みにする事はなかった。



「つか……そもそも俺が君と手を組まなきゃいけない理由がわからない。」


「聞く限り、龍二殿は普通の人間とは違い妖怪を倒せるほどの力があると……」


(誰に聞いたんだ……?)



そう思っている龍二は戦うつもりはなかった為、適当にあしらいたかった。

しかし、椛の次の言葉が龍二に興味を持たせる。



「それに、もしかしたら貴方が探している方も見つかるかもしれません。」


「………なんだって?」


「東條雪菜。」


「!?」


「彼女はどうも妖怪に関する事件によく関わっている。もしかしたら、彼女が何らかの理由で私が探している妖怪と関わっているかもしれません。」



彼女の意見はあくまで予想で作られたものであり、雪菜が関わっている事は確実ではない。

しかし、動かないよりは良いだろうとも思っていた。



「私一人よりも効率が上がると思うんです。」


「……わかった。とりあえず、いつから始めるんだ?」



龍二は椛との協力を了承した。

こうして、再び龍二は戦いの場へ乗り出した。

守りたいと思う、大切な人となった雪菜を探すために。



「龍二殿にとって、雪菜殿はどのような方だったのですか?」



戦いをこなす中で、椛が龍二に聞いてきた時があった。



「……さぁ?」


「さぁって……」


「なんというか、最初は自分の周りで誰かが死ぬことが嫌だったんだけど……」



いつの間にか、雪菜の場合はそれと違う感じになっていた。そう答える龍二。



「と言うと?」


「うーん……なんて言うんだろうな。出来る事ならずっと一緒にいたいというか……雪菜がいなくなってから、あいつがいないというのが嫌になって、あいつがどっかでいつの間にか消えていたらって考えるのも嫌で…………」



纏まらない自分の考えに悩み困る龍二。

しかし椛はなんとなく理解出来た。



「ほぅ……のろけですか。」


「え……そうなのか?」


「うわっしかも鈍感とか……」


「なんか、引いてないか?」



そんな会話をしていた二人を、一人の少女が羨ましそうに見ていた。

自分もそんな風に過ごせたらと思っていた。


しかしこの先、彼女が龍二と仲間として平和的に話すことはなかった。

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