起点 壱
初めて出会ったのは、彼女が誘拐犯に捕まっていた時。
当時は、あかの他人だったが正義感が強かったのか、誘拐犯を倒した。
「大丈夫か?」
「う、うん……君こそ大丈夫?」
「あー……多分。急な事でびっくりしたけど。」
少年は手のひらを上にし、光の弾を出現させた。
誘拐犯が異能だった為だろうか、少年にも何かしらの変化があった。
「なんだよこの光……俺には無害なのか?」
手のひらに現れた光る球を見てそう呟く。
この日、彼の能力は開花した。それが喜ばしい事なのかはわからない。
しかし開花してしまった以上、どうにかしなくてはいけないというのは事実だ。
(くっそ……なんなんだよこれ。スピリチュアル的ななにかか?)
なにか、越えてはいけない境界線を越えたような気がして、不安がたまっていく。
それを紛らわしたかった少年は少女に質問をした。
「そういえば、こんな所で何をしてるんだ?」
「え?えっと、その……散歩……かな?」
「……駅の外れをか?」
少女は頷く。
「……場所を変えた方が良いと思うよ。それで今回は襲われたんだし。」
「うん……わかった。」
会話が一息ついたと思い、ふと時間が気になる。
「なぁ……今、何時?」
「?えっと……8時12分?」
「げぇ!門限過ぎてる!?」
そう言って急いで自転車に乗った少年。
「あ、あの……」
「わりぃ!帰らなきゃならないんだ!じゃ、気をつけて帰れよー!」
そう言って少年はとっとと帰ってしまった。
梅雨明け後のとある1日。
藤崎龍二は東條雪菜と出会い、そして自分の能力の片鱗を開花させた。