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ミリア3

「起きてくださいご主人様!」


 ミリアに馬乗りされた状態で起こされた。

 夢だとは思っていないけれど、今目の前にある現実が、真実だと再認識させられるのは辛い。


「おはようミリア」

「ご主人様どういたしますか?」


 朝食に成りそうな物は、ミリアが運んできていた保存食ぐらいだが、これは非常時の為にとっておきたい。


「ワインくれ」


 朝食に飲んでいたコーヒーが恋しい。


「解りました」


 朝っぱらからワイン。しかし水分補給出来そうな物はこれぐらいだ。昨日食事の時にも1本飲んでいるので残り9本。ミリアの持っている水は今日ので最後だ。

 ミリアにワインを飲ませたくない。


「今日は水を確保する。ミリアはこの島がどうなっているか解るか?」

「海岸の辺りしか行ってない」


 川があればそこの水を使えば済む。あるいは井戸を作ると言うのもありだろう。


 木の実から水分を補給する手段もある。


 まぁ全部試せば済むか。


「こんな事してどうするの?」


 ミリアはお姫様だっこされながら俺に聞いてくる。少し恥ずかしいのか俺から視線をそらす。


 しかしイヤに軽いな。不安になるからもっと太って欲しい。


「ミリアはこんなことされても嬉しく無い年齢なのに」

「別に子供扱いしてるわけじゃない。こうしないと落としそうで怖いんだ?」

「へ?」


 俺は洞窟の開いている天井に向かってジャンプする。 おおよそ十メートルほどの距離があるけれど、魔法で筋力を強化すれば特に問題も無い。

「きゃああああああ!!」


 俺から降りようとしているのかミリアが俺の首に抱きつく。必死になりすぎてむしろ絞めている。

 無事に天井を通り越して無事に着地した。

 辺りにはだだっ広く草原が広がっている。この島想像以上にでかそうだ。


「高いの苦手だったか?」


 俺はミリアをゆっくりと下ろす。


「ご主人様先に言ってよ!」


 ちょっと驚かせたかったと言うのは黙っておく。


「これから散策?」

「そうなるかな」


 俺はミリアと手をつないで、草原を歩き始めた。


 中心に向かって歩き始め、10分もしないところで俺は足を止めた。


「ご主人様どうしたの? そう言えば帰り道への目印になりそうな物を置いて無いね。漂流物を穴の近くに置こうよ」

「いや、すぐに戻るから問題無い。これから井戸を作ろうと思ってね。井戸にちょうど良い場所を探してる」

「ご主人様は水脈が解るんだね! 敏感センサーなんだね!」

「敏感センサー……」


 臆病者みたいだな。それに俺は水脈がどこにあるか知らない。

 しかし水なんてのは掘れば出てくると聞いたことがある。ならば掘ってしまおう。


 まず掘る前にミリアの周りに魔力の壁を作る。魔法使いなら簡単に解除できるが、物理的な保護ならばこれで十分だ。


「危ないからなこの外から出るなよ」

「わかりました?」


 ミリアはよくわかっていないのか小首をかしげる。

 俺が足で円を描いたようにしか見えないからしょうがない。

 辺りを見回し魔力の通りやすい地点を探す。幸いすぐに見つかった。


 魔力で筋力を強化しその地点を殴る。地面と拳が当たるタイミングで、魔力を一気に流し込む。

 この魔力によって、拳の力を周囲に拡散させるのを防ぐと同時に、土を空中に噴出させる事が出来る。


 土が辺りに噴出するが、俺が想定してたよりは少ない。


「岩でもあったのか?」


 俺の力なら岩ぐらい壊せると思ったが、腕が鈍ったか? 人一人入れるほどの穴をのぞき込んで、何があったか調べようとしたが、その必要は無くなった。


 穴の中から何かが浮かんでくるのが解ったからだ。


 俺は穴からすぐに離れるとバリツの構えをとった。


 骸骨が穴から出てきた。骸骨はドラゴンが描かれたネックレスを掛けている。


「まさかこんな場所ま―――」


 骸骨が喋ったが、無視。躊躇無しで全体重をかけてぶん殴る。


 骸骨は粉々に砕け散った。


 粉がまた元の骸骨の形に戻ろうとしていたので、魔法で竜巻を作りあげバラバラに吹き飛ばす。


 そうしてネックレス以外は消滅してしまった。


「何だったんだ、あの骸骨」


 この島は地下にもモンスターが居るのか。地面に封印されたモンスターとか、無人島に残された古代文明のダンジョンとかそういうのだろうか? 


 男の子としては非常に調べてみたいが、そう言う状況じゃない。


「ミリア大丈夫か?」

「ご主人様そのネックレスは?」

「穴から出てきた骸骨が持ってた」


 カッコイイのでお遊びでつけてみる。


「似合うか?」

「ご主人様は勇者様なの?」

「どうした?」


 勇者と呼ばれるような行為なんて一度もしてない。


「そのネックレスは四大魔王の一人、レクサスがつけている神竜のネックレスだよ。3年ぐらい前に見たことある」


 魔王4人も居るんだな。考えてみれば、魔王なんて自称するだけの職業だし、自宅警備とそんなに変わらないのか?


 それよりも気になるのは。


「よく魔王のネックレスを見る機会があったな」


 名前を知っていても、顔なんて一般市民が知るタイミングがあるのだろうか?


「ギルドのお尋ね者として張り出されてた」


 国王じゃないんだ……いや、国だったら軍隊で制圧するだろうし、むしろゲームの方がおかしいって事なのかも知れない。


「それに道具の情報からも読み取れるし」


 俺はネックレスを首から外し、角度を変えて眺めてみるが、特に情報と言えるような物は無い。金で出来ているから売ったら高そうだなってぐらいだ。


「魔法で読み取れない?」


 試しにネックレスに魔力をかざしてみると、魔力で情報が刻まれていることがわかる。しかしそれがなんて書かれているのかまでは解らない。


「何かあるのは解るが、何があるかまでは」

「ご主人様は魔法ガイドブック持ってないんだね。ギルドで無料配布してるよ」

「俺の国にギルドは無かったからな」


 それにこんなにマナも溢れていないし、魔法使いも居ない。

 物質に埋め込まれた魔力や、生命体にやどる魔力を読み取って、魔力のパターンから情報を調べる。魔法版の検索エンジンあるいはwikipediaか。


 日本でも簡単にできるだろうが、やる意味は無い。説明書でも読むなりネットで調べた方が良い。


「神竜のネックレス。全てのステータスを10パーセント上昇させる。王になる資格を手に入れる。魔法道具として使用すると、パーティ全体に竜の加護を与える。

 魔王レクサスの所有物であり、グルグギルドに持ち込めば、討伐報酬として2億ゴールドを差し上げます。討伐報告は業界最大手のグルグギルドへ。いつでも歓迎しています」


 広告まで入ってる。無料だと広告が入るのはこっちでも変わらないのか。


「竜の加護と王になる資格ってどういうことだ?」

「どっちもパーフェクト版ガイドブックをご購入くださいって出てる」

「ついでにその値段は?」

「10万ゴールドで1年間使用できるよ」


 ガチャガチャじゃないだけ、日本よりはマシかな。


「3年前に勇者が魔王城を討ち滅ぼして、レクサスは行方知らずになったと聞いてたけど、こんな島にいたんだね」


「隠れるにはちょうど良い島だしな」


 エルダードラゴンの住居。モンスターも最強クラス、そして無人島。

 世界征服を企むには厳しいが、人から隠れるにはちょうど良い。


「倒すべきじゃなかったな」

「魔王を倒して悪いって思うの? ご主人様は優しいね」

「この島に居るって事は、この島に来るための手段を持っていたって事だろ?」


 骸骨が食料を持っているかどうかは怪しいが、ここまで海底を歩いてきましたって事はないだろ。


 ならその手段を聞き出すなり奪うなりして、この島から脱出出来たかも知れない。


「それとどうやって地下に居たんだ?」


 穴の中に魔法で作った火の玉を落としてみる。穴の中にはダンジョンらしき物が広がっている。

 ミリアも俺に顔をくっつけて穴の内部を見ている。


「ご主人様入ってみる?」

「遠慮しておくよ」


 さらに遭難しそうな場所になんて行きたくない。骸骨が食べ物を持っているとも思えない。現状は草原を調べた方がまだリターンが大きそうだ。


「しかし、地下にダンジョンがあると言うことは、地下水を発掘できる可能性は低そうだな」

「だねー」


 地盤沈下も可能性としてありそうだし、地下水は諦めるしか無いな。



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