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メルセデス3

「王女ルカティアの救出と魔王メルセデスの討伐にいく」


 ミリアとリースが食事を終えたタイミングで俺は話を切り出した。(なおメニューは俺と同じくスパゲティみたいなの)


「それより先に魔王アマネエンジュについての説明をしてください。私はエンジュを殺したくはありません」


 ……どう考えても信じてはもらえないな。


「俺は無実だ。はめられただけだ」

「そうですか。信じましょう」


 即決だった。


「信じてくれるのか?」

「えぇ、私はエンジュから直接事情を聞きたかっただけです。エンジュがいい人なのはよく知っていますよ」


 俺はてっきり辞世の句を聞いてから俺を殺しに来るのだとばっかり思っていた。リースは俺の事をこんなにも信じていてくれていたのに。俺は―――


「信じてくれて、ありがとう」

「それにしてもメルセデスですか」

「あぁ、話を聞く限りだと天音の魔法と同じような魔法を使うらしい」


 誰でも魔法を使うような世界ならば、天音の一族と同じような魔法を使う人が居ても、俺は不思議に思わない。


「だからメルセデスの魔法がどういう物なのか気になるんだ。知的好奇心と言い換えても良い。だからメルセデスと話してみたい」

「何か問題なのですか?」


 リースからしてみれば魔王殺しの延長上の話だ。


「問答無用で殺さないでくれ。それと問題なのはミリアかな?」


 ミリアは首をかしげた。どうやら状況を理解していないらしい。


 ここはすでにバーンランドでは無い。もう俺たちは生還を果たしてしまったんだ。

 だからミリアが俺たちに付き合う理由なんて無い。 

 こんな危険な所に来る理由は無い。


「ミリアはここで生活しても良いんだぞ? 無理して俺たちと一緒にエルダードラゴンを殺しに行くようなことはしなくても良いんだ。安全で快適な暮らしが出来る」

「ご主人様はミリアを捨てちゃうの?」


 ミリアは自分を捨て去ったときの表情をしている。


「違う。そう言うわけじゃない。ミリアには安全な場所に居てもらいたいだけなんだ」

「ミリアの戻る場所はご主人様の所だけだよ? それに学校へつれてってくれるんでしょ?」

「……そうだったな」


 そうだ。この世界に来て決めたじゃ無いか。

 ミリアを幸せにするって。


「じゃあルカティア救出の準備をするか」




「このような物でよろしいのでしょうか?」


 ルカティアが日常的につけていた手袋をレニに用意してもらった。


「あぁ、むしろこれで良い」


 手なら汗が出ているだろうから匂いも付いていることだろう。この匂いをたどってダンジョンを探索すれば余裕だ。

 ミリアに聴覚や嗅覚で負けているのを自覚してから、俺は密かに嗅覚と聴覚を鍛えていた。

 色々な物を嗅ぎ、色々な音を聞いた。

 今ならミリアに負けない能力を身につけていると自負している。

 そして今、発揮する瞬間が来たと言う事だ。


「ミリアが嗅いでルカティア様を探せばいいんだね」


 俺が格好いい前口上を考えている合間にもミリアが嗅ぎ始めたので、しょうがなく俺も嗅ぎ始めた。

 少女とほほを合わせながら手袋の臭いを嗅ぐ。

 変態みたいな状況だ。

 当然のことながら手袋の匂いは持ってきてくれたレニの匂いが大部分をしめる。

 しかし、かすかながら女性の匂いも残っている。

 ミリアが走り始めた。俺も追いかけるように走り始める。

 匂いの元はこの神殿の中だ。メルセデスも中々策士だな。ダンジョンに入ると見せかけて実は神殿の中に止まるとはな。

 そうして俺とミリアが向かった先は


「あら、どうかしましたか?」


 家政婦でした。どうやら洗濯の時か掃除の時にでも匂いが移ってしまったらしい。




「日常的につけていた物ですと他にはありませんね。一度城に戻ればありますが、早馬で三日ほどかかります」


 それで俺たちが判別出来るほどの匂いが残っている保証は無い。

 しかしあのダンジョンをでたらめに探したところうまくいかない。

 それに救出と言う話だ。時間がかかる手法を取るべきでは無い。


「しょうが無い。アイテムの力でも借りるか」

「ご主人様の持ってるアイテムで使えそうなのないよ?」


 金属蛇が落とした金属の中にもそんな便利な物は無かった。


「無ければ作れば良いだろ。レニ兵士達の武器を勝手に借りるぞ」

「どうするつもりですか?」

「兵士達の武器から使えそうな金属があったらそれを拝借する」


 嗅覚アップが付いている武器ぐらい探せばあるだろう。


「属性が付いているような高級品なんて兵士達には使えません」


 バーンランドはモンスターも最強クラスだが、そこで拾える物も最強クラスだったな。そう言う設定忘れていたよ。


「そうか……そうだ!」




「これなら属性たっぷり付いているはずだろ?」


 レニに頼んで連れてきてもらったのは神殿中央にある封印の間。ここでは勇者が使っていた剣が次の勇者が現れるのを待っている。

 なお平常時は見学でき観光スポットとして有名らしい。

 封印の間の中央には白銀に輝く剣が台座に刺さっている。剣の刃からは水がしたたり、封印の間は水浸しになってしまっている。この水は勇者の剣から発せられる魔力から生成されているらしい。

 こりゃ抜くしか無いね。前に使っていたドラゴンソードの後釜としてもピッタリだ。


「抜くのは無理だと思いますよ。毎日観光客達が抜こうと頑張っていますが、ビクともしません。抜くには試練の間から三つの証を持って帰り、勇者として認められなければなりません」

「試すぐらいいいじゃないか」


 この剣を抜けたのはバリツのおかげですと言えば、この国でバリツが流行ること間違い無し。

 と思いながら引っこ抜こうとしたが、ビクともしなかった。


「ご主人様やっぱり無理なんだよ」

「勇者である私が抜きます」


 リースも試しに抜こうとしてみたが抜けない。と言うかリースは勇者なの? 自称勇者じゃないの?

 ……最初から正攻法で抜けることなど期待していなかったさ。本当に、本当に期待していなかった。


 そう言うわけで台座の方をぶちこわすことにした。

 台座をぶん殴るが威力が分散されてしまう。どうやら最初から想定済みらしい。


「我々も台座の破壊で剣を抜くのは考えましたがうまくいきませんでしたよ」


 みんな一度は考える方法だろうからな。でも収穫はあった。

 一瞬だけ水の出が悪くなっていた。


 つまり魔法を使ったと言う事だ。

 ならば、破壊できる。


 どうやって剣に魔力を供給しているのかはは知らないが、その供給量では回避仕切れないほどのダメージを与えれば壊せる。

 まず魔法で筋肉を強化する。肘で爆発を起こし推進力もプラスし、魔法を妨害する為に魔法も同時に使用する。

 ひたすら台座に向かって拳を打ち込む。剣からあふれ出ていた水が止まり、


 剣が折れた。


 剣の先の部分だけが折れたので斬る専用だったら使えるだろうし、鍛冶で作り直せばどうにかなりそうだ。


 とりあえず勇者の剣は手に入った。しかしこのままレニに攻撃されても文句言えないし、この行動だけで魔王認定されてもおかしくない。

 剣は魔力が豊富と言うだけで特別凄さを感じない。そりゃ常時刃の部分から水が出ているから幻想的ではあるが、こんなの携帯するのに不便なだけだ。

 魔力刻印も刻まれているが俺には読み取れないのでミリアに渡す。


「ええっと属性は、破壊不能、神々の加護、アイテム使用で癒水+++か、呪詛+++かなぁ? どっちの能力をアイテムとして使ってもすっごく強いよ」


 破壊不能(笑)この勇者絶対にアイテム係だったろ。


「ど、どうしてくれるのですか?」


 レニは俺の体をつかんできた。


「この勇者の剣は貴重な収入資源だったのですぞ!!」


 ……勇者の剣の破損自体は割とどうでも良いのか。


「ちょっと待ってください、水の出る量が増えています」


 リースが言っていたように、剣から出る水の量が増えていた。と言うか湯気も出ている。見ている合間にも噴水のようにわき出してきている。

 リースはナイフで自分の手を切り裂きお湯に浸した。傷は一瞬で癒えてしまった。


「剣を見せるよりも温泉場として再建すれば良いのでは?」


 その後勇者生誕の地シクサルは、勇者温泉シクサルになり、万病に効く温泉として、ナタリア大陸全土から人が押し寄せ、収益は以前の20倍にまでふくれあがり、さらには毎年売り上げの5%が俺の懐に入るようになりました。


 ノーマルエンドその47 温泉経営エンド


 ごめん。嘘だ。

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