表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/43

金剛眼6

 すでに戻っていたリースと共に三人でゴブリンの村を訪れようとしたが、本来あるべき場所にゴブリンの村はなかった。ゴブリンの村も金剛眼が支配している地域だったらしい。

 黙祷だけを捧げ俺たちは戻るしかなかった。


 ダンジョンを探索することなく、今日の活動はそのまま終了となった。

 人を殺した後は心を整理する時間が必要。

 と言うわけではない。

 少なくとも俺は人を殺した後だろうと、すんなりと日常に戻ってこれる。朝から人をゴミのように殺した後に映画で笑い、人の死ぬシーンで涙を流す事だって出来る。

 それが自分の心を殺すと言う事だ。

 しかしそれが万人に出来るわけでは無い。いたいけな少女であるミリアにとって、人の死と言う物はヘドロのように絡みついてしまう。


 俺とリースは普段と変わらなく夕食を食べ会話をしている中、ミリアは夕食を一切食べようとしなかった。

 ミリアは人形のように表情のない顔をしており、瞳はどこも見ようとはしていなかった。


「訓練に行ってきます」


 リースはそう言って一人でダンジョンに向かっていった。たぶん気を利かせてくれたのだろう。


 俺はミリアが口を開くまで待った。

 どれほど待ち続けていたのだろうか。ミリアはゆっくりと口を動かした。


「ミリアは……ドロシー様が死んだとき、少し嬉しくなった。嫌な子」

「ミリアは悪くないよ」


 ミリアを抱き込むような形で頭や耳を撫でる。前よりも若干つやつやしている。

 ドロシーを殺したのは俺だし、ドロシーに酷い目に遭っていたら、復讐したくなるのも当然だ。

 その感情を押し殺して入れば、何時か感情に自分が殺される。


「でも……私がご主人様を止めていたら」

「ミリアが頼んだとしても、俺を押し倒して攻撃をそらそうとしても、ミリアが合間に割って入ろうと、

 俺はドロシーを殺していた。ミリアを巻き込まないように努力するかぐらいしか違いは無い。

 だから悪いと思うな。ミリアは何も悪いことはしていない」


 悪いのは俺なのだから、




 翌朝は今までの暖かさが嘘のように寒くなっていた。どれぐらい寒いかと言えば、寒さでリースが自然と起き出すレベルだ。

「金剛眼が居なくなった影響かも知れませんね。急いで他のエルダードラゴンも倒さないと大変かもしれません」

 空間を歪めていた余波がダンジョン外にまで届くと言う事か。


 朝食を食べて、図書館に入ると服が山のように盛られていた。どうやらマルーが持ち込んだらしいのだが、一体どこから持ち込んできたんだ?

 近くの入り口なんて俺たちが根城にしている廃墟ぐらいしかないのに。この空間は謎が多すぎる。 


「あんた達がが金剛眼様を倒したからわたしの仕事が増えちゃったじゃない。どうしてくれるのよ!」


 マルーからしてみれば、金剛眼など主人の知り合い程度であり、悲しむ理由にもならないのか。


「悲しまないんだな」

「それほど深いつきあいでも無いのよ。買い物を頼まれたって直接会うようなことない物。それよりもねぇ、ほんと、これどうしよう?」


 マルーは図書館の中に入れた大量の女物の服を目にする。


「金剛眼から頼まれていた買い物ってこれか」

「そうよ。今頃テスの近隣じゃ女性向けの服のほとんどが品切れになってるわよ」


 ……金剛眼がマルーに本を探させる時も思ったがもうちょっと節操を持つべきだろ。


「遺産囲い様の趣味でもないし、戦鉤爪様のセンスでも無いのよね。私が気に入ったのを一部もらっちゃうとして……残りあんたらにあげる」

「そうか、マルーは俺に女装をさせたいのか」

「なんでぇ!? ミリアとリースの二人にきまってんでしょ!」

「要望にはキッチリと応えるから楽しみにまってくれ!」

「あんたの女装なんざ見たくないわよ!」


 マルーの趣味は置いておくとしても、替えの服が存在することは非常にありがたかった。

 地球から着てきた服もさすがにボロいし匂う。

 しかし、この服の山から探すとなると面倒だ。そう、普通の人間なら。

 魔力と神経つなぎ合わせることによって、自らが展開する魔力に視覚と触覚を与える。それを服の山全体を覆わせる。

 こうすることによって、その中から欲しい服を一瞬にして選び取ることが出来る。


 俺が選んだのはメイド服だ。

 紺色をベースにしたオーソドックスなメイド服で、それをミリアに渡し、魔力で瞬間的に鏡を作る。

 魔力で作った物質はすぐに魔力に戻ってしまうがこういうときには便利だ。


「ご主人様が選んでくれたのは嬉しいけど、ミリアには裾が長すぎるよ」

「着ろ。これはご主人様としての命令だ。奴隷は絶対服従なんだろ?」

「……絶対服従させる命令本当にそれでいいの?」


 ……これ以外に何が有ると言うんだ?


「リースは何か着ないのか?」

「ミリアに着せるのでしたら、もっと可愛らしいこういう衣服の方が……」


 そう言ってリースが持っている服はゴシックなドレスだ。


「リースは何か着ないのか?」

「何を言ってるのですか? 私が着る服など後回しに決まってます。とりあえずミリアの服を決めましょう」


 そう言うわけでミリアは着せ替え人形になった。

 リースの着せ替えもしたかったです。


 俺が作った姿見の前で、くるっとメイドが一回転。

 にやけながら色々ポーズを取るおしゃまなメイドが爆誕した

 スカートを常に持ち上げていないと引きずってしまうから、スカートを常に持ち上げているが、むしろ良い、それが良い。俺とリースの中で大評判。


 俺が次の服を検討している中で、一つの疑問が思い浮かんだ。

 これらの服はドロシーと、トリーヴァ、どちらに送るつもりだったのだろうかと。

 トリーヴァの完全な蘇生を諦めて、ドロシーを依り代にして蘇らせた後、このダンジョンから逃げてしまうプランだってあったはずだ。

 それなのに金剛眼は俺たちと戦う道を選んだ。

 それは完全なトリーヴァを求めてなのか。

 それとも、ドロシーを生かしたかったのか。

 ドロシーの事が好きだったのか、ゴブリンと同じように生け贄程度にしか思っていなかったのか。


 その答えを知っている人はもう、誰もいない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ