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金剛眼4

 村長との交渉の末、褒美はスキルツリーと言う事になった。


「ヨメ、カワリニ、スキルツリー、ケンソン、ケンソン」


 話が滅茶苦茶わかりにくかったので要約すると、我が部族では使えなかったゴミのようなスキルツリーが欲しいだなんて、貴方はなんと欲のない人なのだろうか。

 と言う事だ。

 なんで、誰がスキルツリーを使うかで選挙を行う話が合間にはいるのだか……


「エンジュ、このスキルツリー私にくれませんか?」


 スキルツリーの幾何学模様物体をつかみながら、リースは考え込んでいた。


「何のスキルなんだ?」

「リアニメイト」


 死者を蘇らせるスキル。天音でも未だに実用レベルに到達していない魔法の一つだ。

 死体をゾンビとして使役することは出来るのだが、死者を生前の状態に戻すことが未だに出来ていないし、どうして出来ないのかもよく解っていない。

 それをスキルツリーでどうにかできるとは……


「これは金剛眼が作った代物でしょうね。ゴブリン達に渡して使いこなせるかの実験でも行っていたのでしょう」

「それで、このリアニメイトはどういった効果なんだ?」

「リアニメイトではなく、ネクロマンシーの方が正しいでしょうね。蘇らせるのではなく、肉体から魂の情報を再現して、当時の動きを再現させたり証言を取ったりするのが限界でしょう」

「スキルとしては十分有用だな」


 敵の死体をそのまま戦力に変える事が出来る。俺たちのような冒険者よりも戦争での活躍が期待できそうだ。


「重要なのはこのスキルを金剛眼が作り、ゴブリンに渡していると言う事実の方です」

「どういうことだ?」

「……気にしないでください」


 そう言うとリースはリアニメイトのスキルツリーを体に取り込んでいった。


「今日はもう帰りましょうか。明日からまたダンジョンを――」

「明日は牛狩りだ。牛の場所を知らなければ今後の食生活に関わる」


 今更幻影熊を狩りに戻るなんて出来ない。ならばダンジョンで調達するしかない。 


「わかりました」


 リースはやれやれと言った表情をしていた。




 牛狩り……正確に言うと、ブレイブホーンと呼ばれるモンスターを狩る手はずだったのだが、待ち合わせのゴブリン達が来ない。


「道に迷ってるんでしょ。ここは次元が複雑に入り交じってて、定期的にダンジョンが変化するの」


 そう言うわけで、マルーと会話をして時間を潰している。ミリアもリースも本を読んでいるから俺だけやることがない。


「それだとブレイブホーンの狩り場所の位置が変わってくるんじゃ……」


 村から出てくるゴブリンは全員帰還スキル持ちらしいので、迷子になる可能性はほとんど無い。だからこそ気にせず待っていられる。


「でしょうね。でもゴブリン達ならすぐにでも見つけられるんじゃない? 知らないけどね。私もそろそろ出かけないとね」

「本を探すんじゃ無いのか?」

「今日は金剛眼様の為に島の外まで買い物よ」

「ちょっと待て! じゃあ俺たちの為に塩とコショウを買ってきてくれ! 」

「嫌に決まってるでしょ。

 エルダードラゴン様の住まう場所まで来ていて、見逃してもらっているだけありがたく思いなさい。

 それにあんた達は金持ってないでしょ?

 まぁ持っていたとしても、忠実なるエルダードラゴン様のしもべである私はあんた達の為に買い物なんてしないけど」

「結婚しよう。そして俺の妻として買い物してきてくれ!」

「お断りよ!!」


 名案だと思ったのに。

 さすがに結婚ネタを使いすぎたのかマルーの表情も変わらなくてつまらない。

 可愛いマルーの為にも新しいトークを考えてこないとな。

 俺との会話に嫌気がさした……と言うわけでもなく、時間的な問題で、マルーは図書館から消えていった。


 それから何時間たってもゴブリン達は来ない。

 帰還スキルのおかげでここの場所事態は解っているはずなのだが……


「少しおかしいですね」


 リースは本を閉じた。読み終わったらしい。


「もしかしたら道中でキラートマトに襲われているのかも知れません」


 ダンジョンが変化した結果、キラートマトの出現位置が変わりゴブリン達が襲われた。

 あり得る話だ。


「すれ違うことを覚悟してでも村に行って確認すべきです」




 扉をくぐってゴブリンの村に入る。

 騒々しいゴブリンの声はなく、姿も見かけなかった。

 あるのはゴブリンだった物体のみ。

 俺は自らの名誉のため天音の威信のため何度か人を殺した事がある。


 だから解ってしまう。

 ゴブリン達から恐怖を搾り取るような殺し方をわざと使っていると。


 もしもここのゴブリン達がインフェルノスライムに襲われていたとしたら、悲しさを覚えるし、その場にいるインフェルノスライムを殺すだろう。


 それでも怒ることはない。


 それは生きていくために必要な事であり、殺戮を楽しむような外道ではないからだ。

 リースやミリアだって最初はゴブリン達を食べようとしていた。たぶん今の二人ならこの村の者を食べようとはしないだろうけど。


 しかしこの村を襲った奴は違う。


 明らかに殺戮と恐怖を与えることに悦楽を見出した人間の殺し方だ。

 ミリアがあまりの光景のひどさに吐いてしまった。

 リースは一つのゴブリンの死骸を抱き上げていた。

 俺はミリアを介抱しながら、リースの助言を待った。


「リアニメイトのスキルをこのような事に使うなんて」


 リースの手は輝きを放つ。

 その輝きをゴブリンの死骸が引きずり込んでいく。

 ゴブリンはストップモーションアニメのような不自然な動きをし始めた。


「教えてください。一体誰がこのようなことをしたのですか?」

「………コンゴウ………マナコサ……マ」


 俺は理解を拒絶した。 


『エンジュ、金剛眼に心を許さないでください。エルダードラゴンは全員狂っています。たった一人の例外も存在しません』


 リースの言葉が今になって理解出来る。

 あぁ確かに狂ってやがる。俺たちよりもゴブリン達とつきあいが長いのに―――

 リースはゴブリンの死骸を地面に置いた。


「行きましょう」


 リースの顔からは感情を読み取る事が出来なかった。


「ゴブリン達をこのままにするつもりか!!!!」


 俺の力では蘇生なんて出来ない。ただ、安らかなる眠りを願うだけ。


「この村は魔力を吸い取る結界に作り替えられています。惨殺したのも、より多くの魔力を引き出すため。金剛眼はゴブリン達の魔力を使って何かをするつもりです。そうなったらゴブリン達の亡骸すらこの世から消えるでしょう」

「畜生!!」


 金剛眼を止めなければならない。


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