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金剛眼3

 その後、俺たちはビビドに読み聞かせをした。どうやらビビドのお気に入りはロウソクのキャッドらしく、この本を何度も読み聞かせることになった。。


「おかえり」


 そうこうしている内にリースが帰還。


「今日も収穫無し見たいですね」

「リースもみたいだな」


 テネブが協力してくれるのなら、俺としては心強かった。何よりあのお風呂のある家が使い放題になる。

 ひもじい食生活からもおさらばできる。


「三日待つことにしました。

 彼は聡明な人であり、強い人でもあります。きっと私たちのために立ち上がってくれるでしょう」

「決裂したらどうなるんだ」

「勇者として正しい行いをするまでです」


 三日後、もしかしたらテネブと戦うのか……

 それがスポーツとしての戦いならば、これほど心の躍る物は無い。エルダードラゴンの実力を直に体感できる。

 しかし殺しあいは…


「とりあえず三日間はダンジョンを探索しましょう。他にも倒すべきエルダードラゴンは残っていますからね」




 翌日、図書館に入るとゴブ太郎が待っていた。

 回収し忘れていた服をテネブの代理として持ってきてくれた。


「エンジュ、ムラデマツリ、コイ、カンゲイスル」


 話を詳しく聞くと、キラートマトを殺した英雄として俺を祭り上げてくれるらしい。

 丁寧にお断りしようと思ったが、

 肉が出るそうだ。


 そう言うわけで今日は三人でゴブリン村でのお祭りを堪能することになった。

 キャンプファイヤーのように焚き火を中心としてゴブリン村の全員が集まっていた。

 金剛眼もこの祭りに呼ばれていたらしいが忙しいと言う事で、拒否されてしまったそうだ。今会ってもどんな会話をして良いか解らないのでむしろ助かった。


 焚き火の真ん中では牛のようなモンスターが一頭まるごと焼かれている。

 この辺で取れるモンスターらしいので、明日取れる場所を教えてもらう約束を取り付けた。


 これで肉の心配が無くなった。


 もう、金剛眼の場所に連れて行った時のお礼の品や、お祭りなんてどうでもよくなってきた。


 俺たちが来たことがゴブリン達に伝わると一斉に近づいてきた。総勢で1000名ほどいるらしいが、以外と統制が取れており、押しつぶされるような事は無い。成田に帰国したスポーツ選手みたいな気分だ。

 ミリアが素直に感心している中で、


「魔力源の単純比較だと、テロス国と同じ程度の軍事力がこの村の軍事力になりますね」


 リースは恐ろしいことを平然と述べた。


「なんでそんなに強いのにキラートマトに勝てないんだよ」

「私に聞かないでください」


 俺はゴブリン達に連れられて、キャンプファイヤーすぐ前の台形になっている1,5メートルほどの建物の一番上に座る。その隣にはこの村一の美人が座っている。どうやら俺にお酌をしてくれるみたいだ。

 美人のゴブリンと言われても、どこがどう美人なのか俺には解らない。俺に対してのお礼で有り、ただのお世話係なんだし深く考えるのは止めよう。

 ミリアとリースは来賓と言う事でピラミッドのすぐ横に座っている。


 お祭りと言う事で色々出し物があった。ゴブリンが持ってるナイフでのジャグリングや、歌唱大会などが行われている。基本的にはバイキングスタイルで、そこかしこのテーブルに多量の食い物が置かれている。


 俺も食いに行こうとするが、村一番の美人さんに制止させられるし、他のゴブリンが適当にご飯を見繕ってくれるので諦めた。

 俺の目の前に差し出されたのはカレーだ。

 しかし俺の知っているカレーとは似ても似つかない。

 大量の香辛料の入ったスープに、野菜が入っている。スープカレーとも言えなくは無いが、味は全くの別物だ。辛みよりも酸味が強い。美味しくはあるが、日本人には向かない味付けで、カレーとは呼びたくない。

 でも翻訳魔法はカレーと言いやがる。どうやらこの魔法は知らない物でも知っている言葉へ強引に訳す癖みたいな物があるらしい。



 リースやミリアも他のゴブリンにつれられて踊り出した。ミリアは見様見真似でゴブリン達の踊るマネをしている。耳が動いているのは楽しいのか、それとも踊りのアレンジか。たぶん両方だろう。


 対してリースは好き勝手に踊っている。ゴブリン達がドラムなどの打楽器による原始的な踊りに対して、リースは日本舞踊のような静寂さのある美しい舞であり、ゴブリン達も踊るのを止めて見とれていたぐらいだ。

 ゴブリン達の宴で特徴的なのはスピーチが多いことだ。例によってゴブリン達の言う事は長かったり、要領を得なかったりでまともに聞いてはいないが、とにかく多い。

 スピーチの後には拍手喝采なのだから、ゴブリン的には面白いのだろう。


 こういう楽しそうな祭りやパーティと言う物を俺は体感したことがなかった。

 おおよそ根回しの為に開かれる物で、愛想笑いと、金の話が渦巻く、恐怖の場だった。

 だからみんなが心から楽しそうにしていると言うだけで、俺まで楽しい気分になれる。


 ゴブリンの一人が俺の前にやってきた。

 この祭りの主役は俺だ。当然俺にもスピーチをして欲しいのだろう。

 と思ったが、差し出されたのは指輪だ。

 調べてみたが、特殊な効果は無いただの指輪だ。あえて言うなら装飾されていることぐらいだが、本来指輪は装飾品だ。


 村一番の美人も同じように指輪を持っており、俺の指にはめようとしている。

 さすがにここまで来れば、察しの悪い俺でも解る。


 このお祭りは、

 キラートマトを倒した祭りではなく、

 キラートマトを倒した(勇者との結婚)祭りだったと。

 とりあえず村長を呼びつけて事情を説明させる。


「コンゴウマナコサマスクッタ、ホウビ、ケッコン」

「褒美は他のでくれ」

「ケッコン、マイニチ、ニク、タベレル」


 一瞬だけこの村に定住する生活を考えてしまった。

 衣食住全てそろっているこの場所で暮らすのもありなのでは。何より肉が毎日食べられる。

 違う。俺は肉だけで釣られるような安い男ではない。

 パンもよこせ。

 村長に対して諸事情の問題で結婚できないことを説明する。


「ワカッタ」


 どうやら納得してくれたらしい。さすが知能の高いゴブリンだ。


「モウヒトリ、ヨメ、ツケル」


 村長の後ろからもう一人のゴブリンが出てきた。

 やはり俺の異世界ハーレムはまちがっている。


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