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金剛眼1

「どうでした? 鉄の世界の一般家庭で使われているカガクって魔法を使用したお風呂だよ。わざわざ次元を歪めてここまで持ってきてるんだよ。興味深いでしょ?」

「あぁとても驚いたよ」


 次元歪めてやることが風呂の調達ってことがね。


「ささ、早く来てくれ、せっかくのお客様だ。おもてなししないとね」


 金剛眼につれられて通路を歩いて行く。

 つれてこられたのはモデルルームみたいな空間だった。窓ガラスからは海が見える。


「即席の空間だから味気ない場所で申し訳ない」


 金剛眼は頭をかきながら謝った。意味がわからないので考えないことにする。

 ゴブ太郎はすでに六人掛けのテーブルに着いていて、コーヒーを飲んでいた。


「君たちもコーヒーでいいかな? 紅茶もあるけど? ロップの君はオレンジジュースの方がいいかな?」

「コーヒーをストレートで」

「ジュースください」

「コーヒーをストレートだなんて若いのに渋いねぇ。ちょっと待ってくれたまえ」


 しょうがないので俺たちもテーブルに着く。

 ゴブ太郎の手には本が握られていた。背表紙に幾何学模様が入っていたので、スキルツリーが入っているのだろう。

 金剛眼は三分もしない内に戻ってきた。持ってきたトレイの上には飲み物の他に、アップルパイも並んでいた。


「最近料理を作るのに凝っていてね。味見をして欲しいんだ」


 そう言うと金剛眼はゴブ太郎の隣で俺と対面する位置に座った。

 直感スキルもミリアも反応しない。と言うかミリアは気にせずパイを食っている。


「このパイとっても美味しいよ」

「おかわりもあるから遠慮しないで食べてくれよ」

「うん」


 どう見ても優しいおっさんだよなぁ………

 どうしてリースはこんな人、いやドラゴンを殺そうとしてるんだ?

 俺も気にせず、パイを貪りコーヒーを飲む。日本に居た時を思い出させる味だ。


「ゴブリン達には申し訳ないことをしたよ。最近家に閉じこもっていて、外に出るのを忘れていたんだ」

「あんたが金剛眼だな」

「その名で呼ぶのは止めて欲しいな。

 僕は確かにエルダードラゴンだが、他のエルダードラゴンほど強いわけじゃないし、人間にちょっかいを出す気も無い。

 ただ単に長く生きているだけだよ。

 それに、そう呼ぶ奴は全員敵なんでね。

 呼ぶならテネヴと呼んでくれ。

 僕は君と敵対する気は無いんだよ。君がどんな目的でバーンランドに来たのかは解らないけどね」

「解ったよテネブ、俺は天音槐、こっちがミリア ハートフィールド、いきなり世話になった。感謝する。ありがとう」

「気にしないでくれ、ここでの生活の不満と言ったら、誰も人が来ないことでね。来客は何時でも歓迎だよ」


 どこからどう見ても気の良いおじさんだ。

 もしかしたら俺が魔王として扱われているように、テネブも何かの間違えでリースに恨まれているだけかも知れない。


「あら、お客さんなの?」


 扉から若い女性の声が聞こえた。

 朗らかに笑っていたミリアの顔から急激に表情が消え去り、俺の服の裾を強くつかんだ。


「あぁ、起きたのかい。紹介するよ。同居人のドロシー マクベス」


 金髪を束ねてポニーテールにしており、見るからに気の強そうな顔をしている。

 ドロシーは軽い礼だけするとテネブの隣に座った。

 ミリアはうつむいたまま何も喋らないし、ドロシーも何も喋ろうとはしない。

 この二人の関係性の詮索をするよりも、とりあえずこの場から立ち去った方が良いだろう。

 修羅場なんて見たくない。


「そろそろ帰らせてもらうよ。コーヒーとパイ本当にありがとう」

「服は?」

「また今度取りに来る」

「ここまでまたこれるかい? 帰還のスキルツリーは」

「あるから大丈夫だ。いこうミリア」

「うん」


 俺はミリアの手をつないで部屋から出て行った。

 ミリアとドロシーが目を合わせることはなかった。 


 テネブの家から出ると、ミリアは安堵のため息をついた。

 おおよそドロシーとミリアの関係性は予測がついていた。だからミリアが言いたくないのなら、聞かないことにしようと決めた。


 帰還魔法を使って壁に戻る。すでに夕方でリースもすぐに戻ってくるだろう。

 ミリアは俺の体に抱きつく。

「あの人は元ご主人様」


 ミリアの反応から考えてそれぐらいしか無いとは思ったが、やはりか。


「私、戻りたくない。もっとご主人様と一緒に居たい。あんな生活イヤ、イヤだよぉ」

「大丈夫だ。ミリアは絶対に渡さない」




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