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図書館3

今日も朝日で目を覚ます。早く屋根のある場所で寝たい。

 寝覚めもそうだが、朝起きたらずぶ濡れなんて状況も回避出来る。

 もしも風邪を引いたら致命傷になりかねない。俺の魔法では怪我を治せても病気までは治せない。


 なぜ病気を治す魔法を開発しなかった理由はいくつかある。


 一つは病気の原因をしっかり把握してないと無理な事。

 二つ目は解った所で病気だけ殺すのが無理なこと。ウイルスは小さすぎてピンポイントに殺せない。

 三つ目は俺が病気にならないこと。

 バリツによって磨き上げられた体は病気とも無縁だ。


 つまりバリツは健康にも良い最高の格闘技だ。もっと流行れ。


「ご主人様みてみて」


 ミリアが飛べそうなほど耳をばたつかせて俺を呼んでいる。

 ドリアードの木がたった一晩で生えている。芽吹いたとかそう言うレベルではない。すでに30センチ以上はある。

 ミリアを土に埋めて一晩たてば、お姉ちゃんなミリアがご主人様と慕ってくれるのではと、一瞬考えてしまった。


「君の名前はビビドくんだよ」


 その声に反応してドリアード、いやビビドはざわっと動いた。


「もう動けるのか」

「ビビドは元気いっぱいだよ」


 ミリアがビビドの葉を撫でるとカタカタと根元の部分で笑っていた。

 俺もミリアのマネして葉を触ろうとしたら根が触手みたいに絡みついてきた。


「ビビドはご主人様の事苦手みたい」

「俺が何をやったと言うんだ」


 ……そう言えば昨日の農作は何もしてなかったな。

 ビビドが俺から触手をはずして、根っこを全て地面に出してひょこひょことリースの方へ歩き始めた。

 リースも同じように葉の部分を撫でるとビビドはカタカタと笑っていた。


 女好きって事か。




 今日も引き続き図書館でスキル探索。農業スキルで食糧事情が改善しそうだが、それ以外にも課題は山積みだ。


 マルーは昨日と同じように本を漁っている。違うとすれば机の上にいくつか本が載っかっているって事だろうか?    

 俺たちに気づいたのか、本から少しだけ視線をそらしてじとーっと睨んでくる。


「ここペット禁止だから」


 それだけ言うとマルーはまた本に眼を戻した。


「ごめんねビビド」


 ビビドは葉をかさかさ振るわせて抗議だか悲しんでるんだか、よくわからない行動をしている。


「衛生面を考えれば致し方ないですね」

「リースちょっと待て、モンスターまで居るような図書館に衛生面の問題など今更だろ」


 昨日レッドキャップが本を読んでいるところを見たぞ。

 こちらに気づいてすぐに逃げ出したが、あいつらやっぱ知性あるよな?

 本当に食べて良いのか?


「しかし規則は規則です」


 リースはビビドの腕(?)をつかみ地上に連れて行った。


「俺たちの事は報告しないくせして、ペットの連れ込みは禁止するのか」

「報告しない方がわたしの手間にならないし、あの子は足に土が大量についてるでしょ。面倒なのよ、掃除が」


 使い魔って言うから任務に忠実なのかと思ったが適当だな。 


「ほら邪魔しないで、今日もわたしは寛大で偉大で美少女だから見逃してあげる」

「ありがとうマルー。愛してる」

「だ、だ、だれが、あ、愛してるって!」


 何度も言った(空っぽの)愛の言葉をこんなにも真剣に受け止めてくれるなんて、マルーちゃん、マジ、マルーちゃん。

 可愛い子には意地悪したい理論で、机に置いてある本を一冊手に取ってみる。


"三分後に女の子の反応が変わる一言"


 非モテ系男子の為のバイブルだ。マルーには必要なさそうだ。

 隣のもう一冊も取ってみる。


"異世界漂流時の魔法恋愛術"


 こちらも同じような非モテバイブルだ。ただし、こっちは小説仕立てになってる。

"交渉術。30分後はベットの中"

"デートで言いたい100の言葉"

"7倍モテるようになる。デキる男の心遣い"


 全部同じような本ばかりだ。

 遺産囲いはもうちょっと集める物を選べ。


「マルーはバイなのか?」

「ちっがうわよ! わたしはちゃんと男が好きよ!」

「俺とか?」

「あんたなんて全然好きじゃないわよ! 踏み殺してやる!」

「マルーに踏まれて死ねるなんて幸せだなぁ」

「うぅううぅううぅうぅぅぅうぅぅぅうう!!」

 顔を真っ赤にしながらどうやって言い負かそうか頭抱えるマルーちゃん、きゃっわぃぃ!


「ご主人様……」


 ………ミリアの軽蔑してくる視線が痛いから調子に乗るのは止めよう。

 少なくとも今日は。


「ここにある本はね! 金剛眼様が集めるように指定してきた本よ! けっして、けっっして!! わたしの趣味じゃないんだから!」


 エルダードラゴンの名前だと思うが、それにしてもこの島に何体のドラゴンがいるんだ?


「金剛眼はそんなにモテないのか?」


 ファンタジーのドラゴンと言えば女と財宝を略奪するイメージだが、金剛眼は脱オタでも目指しているのだろうか?


「金剛眼様はそういった俗物に興味が無いお方よ。一日中部屋にこもって実験ばかりしているわね」

「そんな奴がどうしてモテる為の本を探してるんだ?」

「わたしに聞かないでよ。わたしは言われたとおりに探しているだけ」


 まぁいいか。マルーが持っている本の中に、スキルツリーの本があるかどうかを調べていただけだしな。




 今日もスキルツリーは見つからない。


 掘った穴を埋める作業と同じ拷問に思える。ミリアが本を読んで現実逃避をしているのもしょうがないか。


「見つかったか?」


 読んでいる本がスキルツリーの本だとは思わないが、一応聞くだけ聞いてみる。


「ご、ごめんなさい。読みふけってたの」


 表紙に"ロウソクのキャッド"と書いてある。擬人化されたロウソクの絵本だ。

 ミリアは本を閉じて本棚に戻したが、俺はすぐに本棚から抜き取った。

 仕事熱心なミリアが仕事を放棄して読みふける本だ。きっと面白いに違いない。


 軽く流し読みをすると、思ったよりも悲しい話であることが解った。


 ロウソクのキャッドは皆に頼まれて火を付けていたが、徐々にキャッドが短くなっていく。

 それを見かねた友達のネズミがキャッドに火をともすのを止めようとするが、キャッドは

『誰かが火を付けなければいけないし、僕は人のために生きたい。だから他の人を瀬間ないで欲しい』

 そう言って結局は溶けて死んでしまう。


 ミリアがキャッドを自分に重ねたのだろうか?


「この本持って帰ってもいいかな? ビビドに読み聞かせしたいの」

「いいぞ」


 問題があったとして怒られるのは俺ではなくてマルーだ。大体すでに一冊ほどくすねている。さらに冊数が増えたところ何も変わらない。

 盗人らしく猛々しくやろう。


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