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鍛冶4

 ミリアがニュータラン(金属)を地面に置いて、ハンマーを構えた。

 ニュータランを使って、ハンマーを作ろうと言うことになった。


 俺お手製のは鍛冶で作ったと言えないからな。やはりこういう物は専門の物が良いのだろう。採掘スポットの時も俺がバリツを使わずにミリアの話を聞いていれば、こんなことにはならなかったはずだ。


「とっても熱い炎をください」

「俺の魔法の神髄を見せるときが着たみたいだな」


 魔法使いと言っても色々いる。

 世界の真理を求める者、今日の食い扶持を稼ぐ為に、カッコイイから、父親が魔法使いだったから、本当に色々だ。


 天音は人を支配する為の手段として魔法を選び、子孫に受け継がせてきた。

 天音の魔法は人を掌握する為の魔法であり、それが出来なければ、天音では何の価値も無かった。


 俺は天音であると証明するために、全く新しい天音の魔法を作りあげようとした。


 自分が支配できる人間を作りあげてしまえば、それは天音の魔法になるのでは無いか。 神のような存在になる為の魔法ではなくて、神そのものになる魔法。


 そのためには宇宙を作りあげる必要が俺にはあった。

 俺は両手を合わせ円の形にする。


「鳥かごの宇宙コスモケージ


 そう唱えると、手のひらの中に宇宙と太陽ができあがった。


 この魔法を使って天音の人間に認めてもらおうと思ったが、結局俺しか使えなかったので意味が無かった。何より問題が山積みだ。まず手を開いてしまったら、この宇宙はすぐにでも崩壊してしまう。


 でも、太陽を作りあげる魔法なのだからもっと評価されるべきだろう。

 しかもあいつら、それは太陽として認められないと言いだし始めるし。

 まぁいい……今大事なのは炎としての太陽なので、すぐに崩壊してしまう事はあまり問題にならない。


 作りあげた太陽をニュータラン(金属)に叩きつける。

 金属は一瞬にして液体になり蒸気をあげる。

 ミリアがハンマーを振り下ろした。

 しかし、何も無かった。


 目の前にあるはず金属が忽然として消えてしまったのだ。


「ご主人様どうして、金属が消えちゃうの?」

「ブラックホール化したのか?」


 太陽が消えるだけなら理解できるが、それと共に金属までセットで消えるとなると、そう考えるしか無かった。ブラックホール化して金属を飲み込んだ直後、自重に耐えきれず崩壊した。


「なるほど、そういうことか」


 ここに来て俺の疑問が解かれた。


 俺が作っていたのは太陽では無い。もっと質量の大きい恒星だ。

 それでは地球を作り出すことは出来ない。地球を作り出すことが出来なければ、人類もまた生まれず、支配できない。

 天音には不要な魔法だ。評価されないのも当然だ。


「ぶらっくほーる?」

「何でも吸い込んでしまう現象だ。どうやら偶然出来てしまったらしい」


 しかし意図的にブラックホールを作り出せるなら、戦闘用の魔法として便利かも知れない。余裕が出来た時にでも研究しておこう。


「ご主人様は一体何をしようとしてるの? 怖いよ!」

「さて、気を取り直してもう一回いこうか」


 今度は通常の炎の魔法を使って鍛冶を行った。特に問題になるような事も無く終了。


「ご主人様、ハンマー出来た。これで楽しく鍛冶生活だよ! お肉への第一歩だよ」


 ミリアには悪いが、俺お手製のハンマーの方が見た目かっこよかった。


「とりあえず、どちらが上手に出来ているか調べる為にもう何個か作ってみるか」   

「うん」


 ミリアは新しいハンマーに握り直した。

 そうしてできあがったのがこのフライパンと鍋だ。

 、防御補正、命中補正、炎耐性、毒耐性、麻痺耐性、アイテム使用でステータス補正をゼロに、など色々な補正がついている名品らしい。

 でも鍋とフライパンだ。味に対する補正が欲しい。


「香辛料の補正って無いのか?」

「無いよ」

「それで、ハンマーの使い勝手はどうだった?」

「あんまり変わらない。だったらご主人様が作ってくれたのが良いな」


 つまりハンマー制作勝負は俺の勝ちだな。

 鍛冶スキルなど使わなくても俺がミリアに負けることなどあるはず無かろう。

 ミリアはハンマー勝負に負けたことを悔しがる様子もなく、俺が作ったハンマーを眺めていた。


 ミリアは俺が作ったハンマーを握り振り下ろす。

 たったこの一回の動作で、金属は命を得たように動き回り、武器の形に固定される。


 この世界の鍛冶なら火が無くても出来そうに見えるな。実際は火の神の祝福を受ける行為を、鍛冶と言うらしいので必要なのだが……日本での鍛冶の常識を捨てた方が良さそうだな。


「出来たよ。ご主人様」


 俺はできあがった短剣を手に取る。刃渡り二十センチほどのサイズで、装飾なども無いが俺は気に入った。


「肉作り包丁だね」

「その名前は止めろ。もっとカッコイイ名前、例えば受肉剣なんてどうだ?」

「かっこいい?」


 今は名前よりも大事な事がある。

 早速俺は洞窟から飛び出すと、海に飛び込んだ。


「マッハピラニアかかってこい!」


 待ってましたとばかりにマッハピラニアが俺を襲ってくるので、短剣で切り上げる。マッハピラニアは、肉に変化していく。


 しかも一本の骨の周りに肉がくっついている。これは人類が夢見ていた漫画肉だ。


「肉だ! ついに肉が手に入ったぞ!」


 俺は肉をつかみミリアの元に戻った。


「やった! お肉なんだね! 今夜はお肉だね!」

「そうさ! 肉だ! 肉だ! 肉だぞ!!!!!」


 俺たちは熱く抱き合った。

 遭難して何日目だろうか。ようやく魚以外の食べ物を口に出来る。しかも肉だ。


 肉を食べるだけなのにこんなに嬉しかった事はあっただろうか。いや、無い。


 何でマッハピラニアから肉が出てくるのか、そんなのはどうでも良い。とにかく肉だ。肉を食べたい。


「ご主人様、次はモンスターを塩に変換する武器を作ろうよ」

「コショウも忘れるなよ! 今夜は謝肉祭だ!」


 俺は肉を狩るためにまたマッハピラニアの待つ海へ駆け込んだ。


 マッハピラニアを乱獲。

 海に浸かっているだけで向こうから襲ってくるのだから、笑いが止まらない。 


 今日だけで、二十体のマッハピラニアを撃破した。

 そこで止めたのは食べ切れなさそうだからだ。


 今日作ったフライパンの上には漫画肉マッハピラニア。

 油も引いてないのに、肉から油がしみ出している。


「良い匂いだね」

「そうだな」

「そろそろ食べ頃だよ」

「ミリアが先に食べろ」


 鍛冶をしたのはミリアだ。今回肉にありつけたのはミリアの功績が大きい。俺だけでは絶対にありつけなかった。


「ご主人様のおかげで食べられるんだから、ご主人様が先だよ」

「そうか、なら先にいただくぞ」


 漫画肉の骨をつかんで一口。


「味はいつものマッハピラニアだ」


 見た目はどこからどう見ても肉だ。

 ただし味はマッハピラニアだし、パサパサとした食感もマッハピラニアだ。


「ミリアは騙されないよ」


 そう言いながら、ミリアもマッハピラニアを食べた。

 お互い無言のまま目線が合う。


「明日は別の場所を開拓するぞ。出来れば肉が食えそうな場所だ……」

「解りましたご主人様……」


 残りのマッハピラニアも食べると、俺たちはさっさと寝ることにした。

 この憤り、どこにぶつければ良い?



 ミリア日記


 ご主人様に名前の書き方を教えてもらった。シンプルでかっこよかった。

 あと、ハンマーももらった。ご主人様お手製のプレゼントだから大切にしよう。

 鍛冶はやってみると楽しかった。これで、もっといろんなのが出来たら良いのになぁ。

 お肉とか、鍛冶で出来たら凄かったのに。

 後お肉たべたい。

 それと、お肉食べたい。それにお肉、あとお肉、お肉、お肉、お肉、お肉、お肉、お肉、お肉……



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