追放処分
一族全員がそろった会議室の中で、俺の命運は決まろうとしていた。
「天音槐を追放処分とする」
誰も爺様に反論しようとはしなかった。
俺は鎖によって体を縛りあげられた上に床に寝かされて反論するような状況では無い。
万物を支配する魔法。
俺が追放処分になる理由であり、天音一族が日本を裏で支配する御三家の一つに成り上がった理由でもある
天音の一族は声で万物を支配する魔法を代々受け継いでいる。他の御三家にも魔法を使える物は多いが、この魔法だけは天音の一族にしか使えない。
俺は万物支配の魔法が使えなかった。
その事実が判明してからの俺の扱いは酷い物だ。一族の人間は裏で俺の事を、天音の汚点、歪んだ音、などと蔑みを込めて呼んでいた。
俺が天音の歴史上最強の魔法使いなのに。
ここに居る全員を殺してやろうと思うが、刀を喉元に突きつけられている状態では無理だ。
俺は刀を突きつけている張本人である天音鍔鬼を睨みつける。
天音鍔鬼はそんな俺を見ながら、にたにたと笑っている。
弟の鍔鬼からしてみればこれほど嬉しいことは無いだろう。
才能がありながらも俺のスペア扱いされていたのが、正式に家を継ぐことが出来るのだから。
「意義を申し立てます」
その場に居る全員がその声の主を見た。天音桜、俺の妹だ。
桜は椅子から立ち上がり爺様を睨みつけた。
「家は長男が継ぐと言う家訓はどうするおつもりなのでしょうか」
「桜は先ほどの話を聞いていなかったのか。
こいつは世界を終極させる特異点だ。
存在してはいけない人物だ。
生きているだけで世界が、いや死んでいても世界を終極に向かわせる。
存在を無かった物にするしか無い。家訓を問題にするまでも無い」
「でも兄様は家族です。何も悪いことをしていません!」
張り裂けそうな声で桜は泣いていた。
「存在しているのが悪だ。私はそう言っている。鍔鬼、追放はお前がやれ」
「解りました爺様」
鍔鬼が詠唱を始める。
桜を除外しても、ここには分家の代表者も含めて三十人ほどいる。
せめて鎖に縛られてなくて、鍔鬼が居ないのならば、ここから逃げ出すことも出来るのだが……
それでも駄目だ。桜が人質にとらわれてしまう。
「なら私も追放されます!」
「桜やめろ」
俺が諦めたように喋ると、桜は裏切られたような悲痛な表情を浮かべ、素直に椅子に座った。
「殺せないのが残念だ」
鍔鬼は俺に唾を吐きながら言った。
追放処分。
天音の一族にはされない処分だ。
家から追い出すなら放逐処分、殺すなら殺処分。
本来なら殺処分がふさわしいが、俺は天音を継ぐはずだった男、それを堂々と殺すのは流石に無理がある。
ならば、居なかったと言うことにしてしまえば良い。そういうことだろう。
あるいは本当に俺が世界を終極させる特異点であり、存在ごと消さなければいけないと言う可能性もある。
世界から情報そのものを消す追放ならば、間違いなく特異点が消える。
本来ならば魔法を表舞台に出してしまった愚か者に対する処分する方法だ。
「安心しろよ。お前を殺しに戻ってくるさ」
俺は笑って答えてやった。
鍔鬼が追放魔法を唱えたのか、俺の意識が薄くなっていく。
「兄様!」
桜の悲鳴が俺の脳にこだましていく。