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おためし
本日曇天大雨なり。
それは五郎の心も同じで、重い雲がのしかかるような気分に陥っていた。
街はもう暗闇。街灯、建物、それらが出す光以外は闇に包まれていて、
まるで五郎の運命を表すよう。
五郎はまだ16。
16の少年が何故さまよいながら、暗闇を進むのかは誰も知らない。
いや、知る必要もない、と言っておこうか。
とにかく、こんな暗闇を少年が歩いても何もおかしくない、いわば無法地帯を五郎はゆっくり、ゆっくりと
練り歩くのである。
無論金は無し。
服装は丁度白いカッターシャツに、紺ズボン、と
学校指定の服装で、特に変わったところはない。
雨はやまない。止まらない。五郎の足も止まることはない。
ふと、暗闇しか移さなかった五郎の目に大きな明かりが映る。
何やらバーの様で、この大雨の中で一際目立ち、唯一ここらで開いている店であった。