EP4 銀狼戦1
初戦闘です。うまく出来たかは微妙です。
では、どうぞ!!
「アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
「ちょっ!!」
待てと言う前に、銀狼が俺に襲いかかってくる。
俺は咄嗟に、右に転がるようにして、それを避けた。
瞬間、俺がいた場所が、奴の爪によって消し飛んだ。
「ッ!!」
俺は驚いたが、すぐに正気にかえる。
奴が、身体を俺に向けて駆けてくる。
「ちょっと待てよ!!」
俺は叫ぶが、相手は俺の発言を無視して襲ってくる。
今度は木すら薙ぎ倒せそうな尾を振りまわしてきた。
「くっ!」
俺は、後方に飛び下がってそれをかわした。
どれと同時に奴は、鋭い爪で切りつけてくる
俺は、かわす事に全神経を集中しながら、対策を模索する。
(どうする?)
最も良いのは幻想創造だが、あれを使うにはまず心のスイッチを入れないといけない。
そうすると、一瞬だが俺の身体は無防備になる。
一瞬、されど一瞬
それが、奴にとって絶好のチャンスだという事は目に見えて明らかだ。
今はかろうじて奴の攻撃を避けているが、いつまでこれが保つかもわからない
俺は奴から逃げるように走り回る。
対し奴も、俺に先回りするかのように動く。
それをどれだけ繰り返しただろうが。
そろそろ、俺の体力が限界に近づいた時だった。
「あっ!!」
後ろに下がろうとした俺の脚に何かが当たる。
同時に俺は体勢を崩してしまった。
それを奴が見逃すはずがなかった。
「グオオオオオオオオオオオ!!」
瞬間、奴の右爪が俺を左肩を引き裂いた。
「ぐああああああああああああああああああ!!」
焼けるかのような痛みに俺は悲鳴を上げた。
激痛に耐えながら、俺は必死に奴から距離を取る。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!)
焼ける様な痛みが俺の心を支配する。
左肩を右手で押さえながら、俺は立ち上がり奴を睨みつける。
対し奴は、完全に主導権を握った者の眼で、俺を見ていた。
「くそ・・・・」
俺に小さく舌打ちした。
痛みで視界が揺らぎ、意識が飛びそうになるが、俺はそれを必死に堪えることで、なんとか頭に少し余裕が持てた。
同時に対策を考える
が
「正直、相手の大手か・・・・」
対抗策が何も思い浮かばなかった。
それは、自分の怪我の状況を踏まえたうえでの結果だった。
そして、何より奴の戦闘能力が問題だった。
今、奴との距離はおよそ5メートル。
普通なら幻想創造を行うには十分な距離だ。
そう普通ならば・・・
だが奴にかかれば、5メートルなど近づくのに数秒もいらないだろう・・・・・
現に、奴と会った時、俺との距離は10メートルほどあった。
それを奴は、僅か3秒ほどで俺との距離を詰めて攻撃してきた。
「まずいよな・・・・この状況は・・」
しかも、先ほどとは違い俺は負傷している。
次に奴がきた時に、避けられる自信もないし、それだけの体力も怪我したときに粗方持っていかれてしまっている。
完全に詰みの状態だった。
そして、その時がやってきた。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「やばっ!!」
奴が大きく叫び、駆けだしてきた。
俺との距離が徐々に縮まる。
3メートル
2メートル
1メートル
奴が大きく右前脚を振りかぶる
俺は動けない身体で、それを見つめていた。
そして
それが、俺に当たる正にその瞬間
俺の視界は真っ白に染まった。
「あれ?」
いつまでたっても痛みが来ない事に俺は疑問を感じた。
そして周囲を確認したら・・・
「なんじゃこりゃ?」
俺の視界は、白一色に染められていた。
「なんか、心の世界に似ている感じはするけど・・・・」
俺の意識が、ゆっくりと状況を把握し始める。
白一色で染められたこの空間は、俺の心の世界に似ているように俺は感じていた。
「いや・・・・・・なんか違うな。」
しかし、何かが違う事も、俺の心は感じ取っていた。
もし俺の心の世界なら、俺は心の一体感というか、心が満たされる感じがあるのだが、此処ではそれを感じない。
「じゃあ、此処はどこだ?」
俺は真っ白に染まった視界を見ながら呟く。
とはいえ、このままでも埒が明かないので、俺はひとまず先程までの記憶を思い出すことにした。
先程まで、俺は銀狼にボコボコにされていて・・・・・
「それから、あいつがまた襲い掛かってきて・・・・あれ?」
そこで俺は止まった。
そうだ
そこから先の記憶が俺にはない。
(つまりこれって・・・・)
そうなると、この状況は・・・・・
「死んだのか・・・・・・俺?」
『違うわよバカ』
背後から、女性のツッこむような声が聞こえてきた。
「は?」
俺はゆっくりと振り返る。
聞き覚えのある、あの声
とても馴染みのあって
いつも一言多い、あいつの声が・・・・・・
そこにいたのは・・・・
「なんでお前がいんだよ。」
俺が友達と呼んでいた女の子がいた。
『それは私が聞きたいわよ。あんたが此処に来るのはまだ早いのに・・・』
そう言いながら、友達は俺を近づいてくる。
腰まである蒼い髪
見通すような真紅の瞳
凛とした表情
雪のように白い肌
それに見合うかのような、白のワンピース
間違いなく、こいつは友達だ。
俺が家を出て少し経ってから出逢った人
それが友達だ。
でも、なんでお前が此処にいるんだ?
だってお前は・・・・・・あの時に・・・・・・・・・・・
「お前は・・・・・」
俺が言おうとした口を友達の人差し指が押さえた。
まるで、何も言わないでと伝えるかのように・・・・
そして
『まったく、こんな怪我までして・・・・・最近腑抜け過ぎてない?』
友達は俺の心を一刀両断しやがった。
「な!腑抜けてなんかないやい!」
意味を把握した途端に、俺は友達に食ってかかった
『良く言うわ。あんな狼相手に、こんな怪我してる時点で、あんたは腑抜けているわよ!』
とまた、こいつは俺の心に手痛い事を平然と言ってのけてくる
「また腑抜けって言ったな!!」
『腑抜けに腑抜けって言って何が悪いのよ!!』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・』
徐々に睨み合う俺と友達。
周囲は一触即発の空気に包まれる
そして・・・・・・
「『ふぶっ!!』」
たがいに大きく吹きだした。
「はは!!お前も相変わらずだな!!」
「なっ・・・なに言ってんの!!ふふっ・・・・・そっちこそ。」
しばらくの間、俺と友達はその場で笑い合った
そう、これが俺と友達のコミュニケーション。
友達が毒舌して、俺がツッこむという行為。
ただ、それだけのやり取りだが
『あぁ―――、久しぶりに笑ったわ・・』
「それはこっちもだ」
俺達にはそれが合っていた。
たがいに満足していた。
俺は久しぶりの再会に少し満足感を得た。
「まぁ、そろそろこれぐらいにしてと・・・・」
互いに笑い合って、俺は友達に向き直る。
「ありがとな」
何故か、今は無性に俺はこいつにお礼が言いたかった。
「ふ・・・・・・・ふんっ!」
俺が礼を言うと、友達はプイっと視線を反らした。
『わかってるんなら、とっとと行きなさい。此処にあんたが来るのは早いのよ。だから・・・・・』
そう言う友達の表情が若干赤いのは、気の所為なのだろうか・・・
「わかってる。」
俺はそう言って、心のスイッチを掴む。
もうやることは決まってる。
多分友達の言うとおり、俺はまだ此処に来るべきではないのだろう・・・
だからこそ俺は、戻らなければならない。
「行ってくる。」
いつまでも、この世界にいるわけにはいかないのだ
現実の世界に・・・・戻らないと
俺は後ろを向くと、力強くスイッチのボタンを押した。
その瞬間、白だった空間が少しずつ消えていく
「はいはい・・・」
友達の声が背後から聞こえてくるのを確認し、俺は前を歩く
振り返らず、ただ前へ・・・・・
「・・・・・・・・・・・行ってらっしゃい・・」
意識が覚醒する瞬間、俺の耳に友達の声が微かに、しかしはっきりと聞こえた。
ゆっくりと視界がはっきりしていく。
確認したら、今まさに銀狼が俺に止めを誘うとしている。
前の俺だったら・・・・・・此処で死んでいただろう
「でも・・・・・・・今は違う。」
俺は銀狼に視線を向けて、ただ一言つぶやく
「吹っ飛べ」
その瞬間、銀狼は文字通り吹っ飛んだ。
そのまま、数秒間の浮遊感を味わった後、銀狼は地面にたたきつけられた。
「ギャウッ!!!」
銀狼の声を聞きながら、俺は左肩に視線を移す。
血が少しずつ出てきてるのを確認する。
「我望むは、何事も無き事実を求む・・・」
おれがそう言った瞬間、左肩の傷は一瞬で消滅した。
まるで最初からなかったかのように・・・・
「???!!!」
起き上がった銀狼が、その光景を目にして驚愕の表情を作った。
「さぁ・・・・・」
それを見ながら、俺は戦闘態勢に入る・・・・
「第二ラウンドと行こうか!!」
今度は俺が銀狼に向かって駆け出した。
友達の存在は、玲音にとって大切な存在で、この物語のキーパーソンでもあります。
次回をお楽しみに!!