プロローグ2
俺が自分の力に気付いたのは、五歳の時だった。
家はそれほど裕福でもなければ、貧乏でもない普通の家で、家族関係もそれほど悪いわけでもなかった。
ただ、それだけの事なのに、俺は不満だった。
それなら、もっと裕福になりたいと俺は願った。
すると、父親が経営していた店が繁盛し、母親が買った宝くじが大当たりして、家はあっという間に裕福になった。
でも、これだけじゃ、自分の力が未だに信じられなかった。
次に俺は、妹の病気を治してほしいと願った。
俺より一つ下の妹は、生まれつき体が弱く、運動もできずに家に過ごす毎日で、医者からは長くは生きられないと診断されていた。
「こんな、動けなくて、友達もできずに過ごす人生なんて、私は嫌だよ。」
家で妹と遊んでいた時に、急に妹が発したこの言葉に俺の心は辛かった。
おそらく、この年頃なら、外で遊んだり、友達を作ったりできるのに、妹にはそれが出来ない。
だから、俺は願った。
そんな病気なんてなくなってしまえと
すると、妹の病気が嘘のように治り、外で遊べたり出来るようになった。
この頃から、自分が願えば何でも叶うんだと思うようになった。
それからは、退屈の日々だった。
両親は、俺の力に気付かないでも、毎日欲しい物や、事を言うようになった。
俺としては、拒む理由もなかったので、ただひたすらにそれを叶え続けた。
それが三年続き、冷たい雨が降っていたある日
俺はそんな生活に嫌気がさして、家を飛び出した。
親が必要としていたのは、確かに家族だったけど、次第にそれは、俺達兄弟が持っていると思っている望みをかなえる力にしか向かなくなった。
本当は妹も連れて行きたかったけど、そんな事をすれば両親が何を仕出かすかわからなかったからやめておいた。
「父さん、母さん、奈世、幸せに。」
それだけを言い残して、俺は今までの自分という存在を、秋継 玲音と言う名を、この世から抹消した。