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第五話「亡霊」

 朝から昼休みまで僕はただひたすらに憂鬱だった。だって、女子寮だぞ?しかも、相部屋……。もちろん相手は女の子だろう。絶対にボロが出るに決まっている。体は女の子だけど、元男だとバレるのは避けたい。そもそも、信じられる話しではないけど……。


「はぁ……」


 溜息も何度目かわからない。

 流石に心配した美鈴達から声がかかる。


「優雨ちゃん、どうしたの?カップ焼きそばを湯切りする時に麺を全部シンクにブチまけたみたいな顔して」


「何、その例え……」


 想像したらすごい嫌だけど。


「じゃあ、カップ焼きそばにお湯入れる前にソース入れちゃったような顔?」


「いや、カップ焼きそばから離れようよ……。ていうか、そんな顔してるんだ……僕」


 いったいどんな顔だ。


「でも、そんな顔も可愛いよ!ぐふふ……食べちゃいたい」


 僕はあまり食べられたくないな……。


「美鈴はカップ焼きそばでも食べてなさいな。ところで、二人とも入るクラブは決めた?」


 話しを強引にぶった切った琴音に美鈴が答える。


「とりあえずこの後の集会のクラブ紹介見てからかなー。とりあえず陸上部はチェックするつもり!」


 この学校は絶対に一つ以上のクラブに入らないといけないらしい。

 そもそも活動しているかどうかわからない部も沢山存在しているので幽霊部員になることは簡単だと、担任が言っていた。


「僕は、運動あんまり得意じゃないし……文科系のクラブかなー」


「あ、そうなんだ。優雨ちゃんお嬢様ぽいもんねー。琴ちゃんは剣道部でしょ?」


「そうね。剣道部に入ったら家で稽古する時間を減らしてもいいってお父様も仰ってたし」


「やった!これでいっぱい遊べるね!」


 美鈴がはしゃぐ。


「お家でも稽古するなんてすごいね。道場か何かやってるの?」


「琴ちゃんの家はねー、この辺で一番大きな神社なんだよ!その敷地内に剣道場もあるの!」


 神社の娘か。大和撫子を体現した様な琴音の姿にすごく納得する。

 厳しそうだもんなあ。うちのぐうたらとは大違いだ。


「しかも、琴ちゃんすっごい強いの!琴ちゃんなら巷で噂の吸血鬼なんてフルボッコだよ!」


 ドクン。心臓が跳ねる。


「いくら何でも無茶よ。剣道の試合と実戦は違うもの」


「吸血鬼……?」


「あれ?優雨ちゃん知らないの?最近多いんだよ。……夜に一人で歩いてる人が襲われて血を吸われて殺されちゃうの。この一ヶ月で五人くらいかな」


 間違いない。あいつだ。

 僕も一人の時に襲われた。


「しかも、昨日も一人襲われたんだって」


 ちょっと待て。

 今なんて?昨日?

 僕があいつと出会ったのは一昨日。確かにこの手で……。灰になって消えたはず。

 あいつがまだ生きていた?


「……どうしたの?優雨ちゃん顔が真っ青だよ?」


「あ、うん……ごめん、ちょっと怖くなっちゃって」


「もうこの話しはおしまいにしましょう。美鈴もあんまり変な話しばかりしないの」


「う、うん。ごめんね?優雨ちゃん?」


 生きているはずはない。

 しかし、仮にあいつが生きていたとして……あんな目に合わせた僕を放っておくだろうか。


「大丈夫……僕こそ、ごめんね」


 そこからの話しはあまり耳に入ってこなかった。








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