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第四話「転居」

 喫茶店ではつい長話をしてしまい、早々に約束の時間になってしまった。慌てて喫茶店で二人と別れた僕は、駅前のビルの中にあるレストランで異常に座り心地のいい椅子に座っていた。僕の前にはテーブルと空席が一つ。僕をここに呼びだした人物は予約の時間になってもまだ来ていなかった。


 周りを見渡してみると店内は綺麗で塵一つもなく、食事を楽しんでいる客達も皆がそれなりの格好をしている。所謂高級なレストランって奴だ。今着ているのが制服じゃなくてスーツなのは逆によかったのかもしれない。


 ぼーっと入り口あたりを見ているとよく見知った顔が入ってきた。父さんだ。父さんは店員と二言三言交わすとこちらに近づいてくる。


「いや、すまんすまん!遅れてしまったな」


「別にいいけど、ちょっと心細かったよ。こんな店に一人なんて」


 周りは大人ばかりだし。座り心地のいい椅子が逆に落ち着かなかった。


「ちょっと校長との話が長引いてな。入学おめでとうな。まあ、今日は美味いもんたくさん食ってくれ」


「そのつもり。この体になってからあんまりお腹空かないからいっぱいは食べれないかもだけど」


「入学式はどうだった?友達は出来たか?」


 僕は二人の少女の顔を思い浮かべながら答える。


「うん、出来たよ。さっきまで一緒だった」


「そうか!そりゃよかった!祝杯にいっちょワインでも飲むか?」


「高校入学したばっかりの実の子にお酒勧めないでよ……」


「お堅い奴だなー」


 父さんはグラスに注いだワインをクイっと煽る。


「父さんが柔らかすぎるんだよ……」


 少し呆れていると料理が運ばれてきた。

 少し大きめなお皿の中央に生ハムと彩り豊かな野菜が乗せられ周りをソースが飾り付けている。


「うわ、すっごい綺麗。美味しそう」


「うん、美味いぞ」


 美しい盛り付けに見惚れていると、父さんは既に料理を食べ始めていた。


「あ、ずるい。いただきます」


 一口食べてみる。

 これは、美味しい……!!見た目の綺麗さに負けないとても繊細な味だ。


「これ、すっごく美味しいよ!」


「おう、どんどん料理くるからな。味わって食べろよ」


 これだけ美味しいならこの体でもどんどん食べてしまえそうだった。



  ▽ △ ▽



 結局出て来た料理は完食する事が出来た。

 体を支配する幸福感に身を委ねていると、暫く黙っていた父さんが口を開いた。


「実はな、さっき校長とも話してきたんだが……」


 普段の姿からは珍しい真面目な口調だ。


「どうしたの?」


「急な出張でな、暫く家に帰れないんだ」


「あ、そうなんだ。何か久しぶりだね」


 父さんは昔からよく出張で家を空ける。母さんが亡くなってからは僕に気を使ってか、ずっと家にいてくれたので、随分久しぶりだ。


「ああ、それでな。今回はいつ帰れるかも分からなくってな。もう母さんもいないし、お前一人じゃ家の管理も大変だろう。あの家は人に貸そうと思うんだ。思い入れのある家だし、売りに出すよりはいいだろう?」


「え?あ、うん、それはそうだけど……僕はどこに住めばいいの?」


「それなんだが、寮にまだ空きがあるらしい。とりあえずはそこに住んでいいそうだから、お前明日から寮暮らしな。荷物なんかは届けとくから、明日はうちじゃなくて直接寮に帰れよ?」


「ちょ、ちょっと待ってよ話が急過ぎて何が何だかーー」


「ん?不安か?友達もできたみたいだし大丈夫だろ?」


「不安に決まってるじゃないか!いきなり寮生活しろだなんーー

 」


「あ、ちなみに女子寮だからな」



 は?


 女子……寮?


「だってお前今女だし。よかったな、正直羨ましいぞ。女子高生に囲まれて生活。しかも、相部屋だろうから同室の娘とあんなことやこんなことにーー」


「えええええええええええええぇぇぇぇぇ!!!!」


 駅前ビルの24階。

 夜景が綺麗と評判の高級なレストラン。その中に、いや、きっとビル全体に、僕の悲痛な叫びが響き渡った。





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