012:覚醒
皆さまお盆休みはいかがでしたか?
毎日暑いですが、暑さに負けず頑張ります!
神殿の奥深く、シエルを抱えた名を与える者はゆっくりと歩を進める。名を与える者の周りだけがポウっと明かりにつつまれ、彼の居場所だけが特定できる。闇に包まれていて神殿の広さは計り知れなかったが、やがて彼の前に重厚な扉が一つ現れた。
名を与える者が近づくと扉は音もなく開いて彼を招き入れる。開いた扉の先もまた闇、だがそこには小さな燭台が置かれていた。
フッと名を与える者が息を吹きかけると、蒼白い炎が灯る。闇の中に一つ浮かび上がる炎はその周囲だけを照らし出し、まるで炎が浮いているように見えた。
《光と闇を擁きし君、その力見せてみろ》
名を与える者がシエルの体を闇に放すと、闇の中でシエルの体は何かに支えられているかのように空に浮き、名を与える者の体から放たれる白金色の光につつまれて行く。
面白い、面白い、と名を与える者は心の中で何度も呟く。久しぶりに世界が再編される様子を見られるかもしれない、と思うと心が躍る。前に世界再編が起こったのは、もう何万年もの昔。1つだった大陸が4つに分かたれた、あの光と闇の大戦の時代。もしこの闇人と閃光王が対立すれば、と閃光王の姿を脳裏に描いて思う。 こんなに面白いことはない。
《眼を覚ませ、シエル・ソワ・ルーロ・メランダスク、光と闇を擁きし君よ。》
名を与える者の呼びかけに、シエルの額の黒水晶が光を帯びる。
光、なのか闇、なのか判断できない『黒い輝き』。その輝きは徐々に力を増し、空間を充たしていく。やがてその輝きは見ていられないほどの激しい光となって燭台の炎を消し飛ばし、フッと一箇所に集束した。
ドサリ、と力を失って空から落ちてきた少年を名を与える者は受け止め、空に浮遊する集束した1点の輝きを見上げる。
見たことのない色だ、と思う。まばゆい輝きに見えたかと思うと、吸い込まれそうな闇の色にもなる。
めまぐるしく色を変える輝きは、ゆっくりと、だが確実にシエルの元へ降りてくる。気を失っているシエルのかわりにその輝きを受け取った名を与える者は手に伝わるその力に笑みがこぼれる。ぞくぞくするほどの可能性を秘めた力。
《闇王となり、この世界を変えてみろ。》