011:引き継ぐ力
今回はレイ目線です。
ちょっと説明的になっています。
少年が神殿の中に消えてから数刻。レイは扉の前に腰を下ろし、『その時』を待っていた。
何も知らぬ、名もなき少年。彼を拾ったのは何故だろう?哀れな彼に情けをかけた?それとも、己のため?
一目で、『闇人』だと分かった。銀色の瞳に銀色の髪、あんなにはっきりと闇の色を持つ者に出会ったのは初めてだ。
『金と銀の衣を纏い天空を舞い踊る気高き姿あり。その怒り大地を焦がし、その涙海を別つ。二つの力交わる時、古の語り部が新しき物語を紡ぎ創める』
光と闇、この世を統べる対なる力、確か、そんな古文書を読んだ事がある。
レイの知る限り、各国の歴代の王は『光』か『闇』の力を持つ者。世襲制と言ってしまえばそれまでだったが、光と闇の二つの力は、親がいかに強大な力を持っていたとしても子に受け継がれることは稀だと言う。王家に生まれ、その力を頂かなかった子の運命を思うと、胸の奥に痛みが走る。
名を与えられなかったそれらの子は、人知れず最果ての村に流され、そこで生涯を終えることとなる。
最果ての村に住む者が皆金色の髪をしているのは、光の王家の血がそこに流れている証だ、とまことしやかなウワサが囁かれている。
力には様々な形があり、同じ魔道の力を持つ親から生まれた兄弟であっても様々に変化する。レイに与えられた魔道の力は雷と風。本来雷も風も、いわゆる黒魔法の類に入るものだが、二つの力を組み合わせることで、守護の力に変えることができる。それに加え、『混血』であるが故に引き継いだ武の力がレイに類まれなる運動能力が加わり、剣術、弓に魔道の力を纏わせることで、武道においてもレイの能力は計り知れぬものとなっていた。
いつしか混血の戦士は『魔法剣士』と呼ばれるようになり、レイの持つ力を求める国も少なくない。
レイは左手首に刻まれた刻印に手をやる。魔道の力を示すヒスイを、武の力を示す獅子が抱いている。ヒスイの色は、雷の黄色と風の蒼を含んだ深い『ビリジアン』。
レイが名を頂いたのは、生まれてすぐの赤子の頃。どうやってここに来て、どうやって名を頂いたのかの記憶はないが、意識の底に、言葉だけが残っている。
《二つの力に選ばれし剣士、王の牙となり、王を守れ》
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お盆休みなので、ちょっと更新遅れます・・・。