第1章 赤髪の少年、蒼の森に降り立つ
17歳の高校生・朝霧レン。
彼は赤髪が象徴の、誰にでも優しく、好奇心旺盛で頼りがいのある少年だった。
しかし16歳の時――不治の病にかかり、突然の入院生活を余儀なくされる。
それまでの明るい活力は次第に失われ、レンは長い孤独と闘う日々を送っていた。
そしてついに、その時は来た。
家族に見守られながら静かに息を引き取ったレンは、次に気づいた時、見知らぬ白い空間に立っ
ていた。
そこで彼は“神”を名乗る存在と出会い、死の理由と、転生の機会を告げられる。
――その魂は、人を助けることに迷いがなかった。
――どれだけ苦しくても、何度でも立ち上がろうとする強さを持っていた。
だからレンは選ばれた。
神は微笑み、四つの祝福を与える。
「全属性持ち」
「異常な魔力耐性」
「異常な物理耐性」
「コピー能力」
「新しい世界で、君が君らしく生きられることを願っている」
その言葉と共に、レンの意識は光に包まれた。
次に目を開けた時――
そこは、青い空が果てまで広がり、魔法が当たり前に存在する世界だった。
異世界での新たな生――
そして、最強へと歩む物語が始まる。
──静かだった。
機械音だけが響く白い病室で、俺は最後の息を吐いた。
十七歳。高校二年。未来なんて、まだこれからのはずだったのに。
だけど、不思議と死への恐怖はなかった。ただひとつだけ願いが叶うなら──
「もう一度、誰かを助けられる自分になりたい」
それだけだった。
視界が闇に沈む瞬間、誰かの声が聞こえた気がした。
『……ならば、望む未来を与えよう。朝霧レン』
──気がつくと、俺は森の中に倒れていた。
「……ここ、どこだ?」
湿った土の匂い。頭上には青く澄んだ空。
さっきまで病室にいたはずなのに、今は深い森の中だ。
ゆっくりと体を起こすと、まるで別人のように軽い。
入院生活で衰えきっていたはずの体が、嘘みたいに動く。
「本当に……生き返ったのか?」
手に触れた赤髪が風に揺れる。
鏡はないけど、これは間違いなく“俺の体”じゃない。
胸の奥で何かが脈打つ。魔力──そう呼ぶしかない何かが流れている。
そのとき。
──ドォンッ!
大地を震わすような轟音が、森の奥から響いてきた。
「な、何だ……!? 火の匂い……?」
焦げた匂い。遠くの赤い光。悲鳴。
誰かが……襲われてる。
心臓が跳ねた。
病気で何もできなかった日々の悔しさが一気に溢れ出す。
「助けに行かなきゃ……!」
体は自然と炎の方へ走り出していた。
魔力に意識を向けると、手のひらがじんわりと熱くなる。
同時に目の端が淡いブルーから一瞬だけ赤にチラついた。
「な、なんだこれ……?」
驚きつつも走り続ける。
森を抜けた瞬間──目の前の光景に息を呑んだ。
小さな村が、燃えていた。
逃げ惑う村人たちの悲鳴。
黒い炎を纏う魔物が暴れ回っている。
「クソ……!」
怖い。足が震える。
でも。
「な、なんなんだよ、この状況は....。」
目の前に広がる悲惨な現実に俺はただ動揺するしか無かった。
そのとき──少女の叫び声。
「いやっ……来ないで!!」
銀髪の少女が魔物に追い詰められていた。
「助けなきゃ……!」
「──危ない下がって!!」
俺はその辺に落ちていた剣を手に取り少女の前に飛び込み、魔物と対峙した。
突然頭の中に声が聞こえてきた。
「──己を信じて戦え。」
胸の奥の魔力が爆ぜるように広がり、
視界が鮮明になり──目が二色に輝いた。
少女が息を呑む。
「目の色……二つ同時……なによそれ.....?」
二属性同時発動
「《水刃》(スイジン)!」
鋭い水の刃が魔物の足元を裂く。
「《火槍》(カソウ)!!」
炎の槍が魔物を貫き、ヘルハウンドは黒い残骸だけを残して崩れた。
二属性、同時発動。
少女は呆然と呟いた。
「……そんなの、できるはずないのに……」
ドスンッ……ドスンッ……!!
巨体のオーガが姿を現す。
「オ、オーガ……!?」
「俺がやる。下がってろ!」
少女が震える声で制止しようとするが、俺は前へ出た。
オーガの拳が飛んでくる。
**ドッ!!**
体が吹き飛び地面を転がる。
「ぐっ……!」
少女が泣き叫ぶ。
「やめて!もうやめてよ!!」
それでも──俺は立ち上がる。
「こんなの……前の俺に比べたら……!」
病室で起き上がることもできなかった日々より、ずっとマシだ。
「まだ……やれる!!」
「《水縛》(スイバク)!」
水の鎖がオーガの脚を捕らえる。
「《火嵐槍》!!」
炎が竜巻のように渦巻き、巨大な槍となってオーガを貫いた。
大きな影が倒れ、静寂が訪れる。
俺は膝をつき、座り込んだ。
少女が駆け寄る。
「だ、大丈夫!?ひどい怪我……!」
「はは……ちょっと無茶したかも……」
「あなた、名前は?」
「レン。……朝霧レン」
「私はリサ。リサール・フィオレンテ。みんなはリサって呼ぶよ」
リサの手は震えていたが、その瞳は強くて綺麗だった。
「レン……ありがとう。村を、私を、救ってくれて」
「助けられて良かったよ」
視界が暗くなり、体が傾く。
リサが支える。
「しっかりして!師匠のところへ連れていかなきゃ!」
炎が鎮まりつつある村を後にし、リサは俺を支えながら森を進む。
その先にいるのは──
《“黒鎖の魔導士” カイラス・ヴェルダイン》
俺の運命が、静かに動き始めた。
次回 第2章「カイラスの試練 ― 魔力適性テスト―」
突然の魔物襲撃に揺れたリサの村。
その混乱の中、ほんの一瞬だけ放たれたレンの“謎の力”。
それを見たリサは確信した。
「この子は……必ず強くなれる。だから、師匠に頼むしかない!」
村を守るため、そしてレンを救うため、
彼女は少年を連れて山奥の隠者――カイラスのもとへ向かう。
静かな家に迎え入れたカイラスは、レンを一目見て言う。
「……なるほど。面白い気配だ。まずは、お前の“本質”を見せてもらおう」
そうして始まる《魔力適性テスト》。
村を救った“覚醒”が偶然か、それとも秘められた才能なのか。
レンの力の片鱗が、ここで初めて明らかになる――。
初めての師、初めての試練。
そして、眠り続けていた“全属性の力”が動き出す。
次回、第2章「カイラスの試練 ― 魔力適性テスト―」
少年の物語は、静かに、しかし確かに動き始める!




