秘密の女子会
教室に戻ってきてからアリシアやユグナも、
心配そうな顔をしていた。
ロゼリアの詰めは、もう虐めに近いんじゃないか
という疑問がふつふつと湧き上がる。
授業も上の空で三時の休憩を迎えた。
アリシアも席を立ち、近づいて来た。
隣のユグナが声をかける。
「マリーネ、顔色悪いよ」
「どうすればいいかな」
アリシアは何か思いついたようだ。
「そうだ!マリーネを応援する秘密の女子会!」
「え!?」
「放課後やろう」
放課後か・・と思案していたら良い案を思いついた。
この前ユグナはイラストにも興味を持ってくれていたし、
うちの屋敷に誘ってみよう。
「その秘密の女子会、うちの屋敷で開いたらどうかしら?」
ユグナはちょっと申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「え、そんな悪いよ」
アリシアは興味津々だ。
「マリーネのお屋敷に行けるなんてこんなチャンスないよ!
色々力になれるかもしれないしさあ」
「じゃあ決まりね。今度の日曜日ならお父さんいないから大丈夫そうよ」
アリシアが飛び上がって喜ぶ。
「やっほーい!マリーネ様のお屋敷ツアーだ」
二人に話す前はかなり落ち込んでいたので、
本当に嬉しく前向きな気持ちになれた。
残りの授業もどうにか終えて、馬車で帰路につくことになった。
✧・゜:*✧・゜:*
その日の夜、私は不思議な夢を見た。
何故か「ロゼリアの両親」と思われる人とロゼリアが話をしているのだ。
そしてロゼリアの横には見覚えのあるフランス人形。
3人で話をしているのかと思ったら今度は違う情景へと変わり
先程とは違う女性がロゼリアに激しく叱責している。
と、ここで夢は終わり飛び起きた。外を見るとまだ真夜中だった。
そして、自分の手を見つめる。
「もしかして転生する前に何か憑依して、別の能力が宿ったのかしら」
✧・゜:*✧・゜:*
そして日曜日になり、
アリシアとユグナが女子会に来てくれる日が来た。
二人には最寄りの駅に来てもらい、
馬車で迎えに上がることになっている。
女子会に合うようなドレスをエマと一緒に選ぶ。
今日はグリーン系の色でまとめることにした。
エマがそろそろ馬車が到着しますよと合図してくれた。
少し急ぎ気味に屋敷の階段を下り、
大きな玄関扉を開けるとまだ到着はしてなさそうでほっとする。
敷地内の門まで歩いていると、
馬車がコトコトと音を立て屋敷内に入ってくるところだった。
右手を少し挙げて微笑むと、二人は馬車から降りて笑顔で応じてくれた。
「すっごいお庭だね。憧れる~」
「あの薬草気になる」
アリシアは驚きっぱなしだ。ユグナは薬草に興味あるみたいね。
「アリシア、ユグナ、ようこそグラナド邸へ」
ユグナが薬草を見たいようなので中庭を抜けて温室まで案内した。
柔らかな日差しが温室の中を照らす。
「これ、貴重なカラクサ草だ」
ユグナが手に取り、観察する。
「そうなの、王国でも簡単に手に入らない苗らしいわ」
散策した後、玄関から屋敷に入ってもらい、応接間に通す。
侍女のエマが紅茶を淹れて持ってきてくれた。
「マリーネ様のお友達ですね。こんにちは」
「こんにちは!いつもお世話になってます」
「あらあら、マリーネ様のご友人は元気がいいこと」
エマは優しく微笑み一旦下がった。
最初は応接間で話そうと思っていたけど、
侍女のエマや母も近いので私室に移動することにした。
アリシアが無邪気な笑顔を向ける。
「噂には聞いてたけど・・憧れる・・私もうここで暮らす!」
「褒めすぎだって」
「今日は二人とも来てくれてありがとう。
私がやらかしちゃったことなのに・・・ごめんね。
もうあんなイラストは持っていかないことにするわ」
アリシアも同意する素振りで
「マリーネも反省してるし、これで落ち着けばいいんだけど」
「それで、今回話しておきたいのは、ロゼリアのこと。
彼女、何か色々と抱えてるんじゃないかと思って。
鞄にぶらさげてる人形から、だだならぬ瘴気を感じるのよ。」
アリシアは呆れた表情になり
「もうマリーネはお人良しなんだから、今は自分のことでしょ、
それに何でマリーネは関係があると思ってるの?」
「お人好しっていうのは、まあそうよね・・
関係がありそうと思ったのは私の勘かな。
ユグナは何かロゼリアのことで知ってるかしら?」
ユグナはゆっくり紅茶を口に運ぶと、
カップを置いて小さくため息をついた。
「ロゼリアね……。彼女、今は“ベラローセ館”に住んでいるらしいよ。
あの館、辺境の旧領主家がかつて暮らしてた場所なんだけど、
十数年前からほとんど空き家だったとか」
飲んでいた紅茶をこぼしそうになった。
まさか転生前に訪れたあの「ベラローセ館」の名が
この世界ででてくるなんて夢にも思わなかった。
「ユグナ、その~ずいぶん詳しいのね?」と私も眉をひそめた。
「だいたいこの王国の主要な館の名前なら頭に入ってるよ。
陰気な石造りで、噂では“誰もいないはずなのに明かりが灯る”とか
……昔から不気味な話が多い場所。
霊感がある貴族の家系では近づくなって言い伝えがあるくらい」
マリーネが思わず身を乗り出す。「その、瘴気の噂と関係あると思う?」
ユグナはうなずいた。
「私はあると思ってる。
最近になって学院の周囲で瘴気を感じるようになったのは、
あの館に誰かが“住み始めてから”と時期が重なってるのよ。
瘴気ってのはね、霊そのものじゃない。
人の負の感情や未練、
恨みといった“精神の淀み”が積もって発生する波動みたいなもの」
「それって……」息をのむ。
「ええ、ロゼリアのように強い怒りを抱えた人物が、
そういう場所に長く滞在すれば、瘴気が濃くなるのは当然。
しかもベラローセ館のように“地盤が悪い”場所ならなおさら、ね。
まるで傷んだ地面に毒を注ぎ込むようなもの」
アリシアは押し黙り、
私も手を組んだまま目を伏せる。
ユグナは続けた。
「私はまだ確証は持てない。
でも、ロゼリアがあそこに住んでいて、瘴気が増してる。
それだけで、もう十分不自然でしょ?」
正直ユグナの博識ぶりには驚いた。
前世ではお祓いの概念があったけど、このルシエラ王国ではどうなのか。
「ねえ、ユグナ、
もし霊を取り除く方法があるとしたらどんな方法があるかしら?」
「そうね・・有効なのは“浄化”かな。
これは光属性の魔法の応用で、
聖堂魔術に近いけれど、実際には場所や感情に働きかける技術よ。
術者の精神状態も影響するから、使いこなすには修練がいる」
アリシアが感心したように眉を上げた。
「それって、ユグナは使えるの?」
「簡易的なものならね。深い悪意を浄めるには、
私一人じゃ力不足だけど」
なるほど、異世界でもそこまで”除霊”の概念や方法まである、
いやこれはユグナが独自に考案したものだわ。とんでもない才女ね。
「もし、必要なら私も手伝うわ」
胸に右手をあててポーズをとる。
秘密の女子会は有意義に終わり、
二人を馬車まで見送った。




