日常特別編~趣味活動部との出会い・トータルコーディネート編~
夏から秋に季節が移り変わろうとしていた時、ふとクローゼットを見ると夏物が多く秋物はほとんど実家に置いている事に気がついた。
私自身あまり服にこだわりはなく相方からなんやかんや服装の事について言われるのが多いので、実家にはあまり着ない服を置いていたが何か着れそうな物があるかもとダメ元で実家へ行くことにした。
家からバスを使い15分程で実家に到着しリビングへ行くと家族の他に制服を着た女の子が2人座っており、その内の1人は見覚えがあった。
「もしかして梓ちゃん?久しぶりだね」
「あ、蕾ちゃんだー、懐かしー!何年ぶりかな?」
この子は愛川 梓ちゃん、高校1年生だ。
彼女とは自宅が近く親同士も仲が良かったので頻繁に会っていたのだが、最近はカレンの告白やら同棲やらでバタバタしており3年くらいは会っておらず、久しぶりに見た彼女は少し大人…っぽくはなっておらず、あまり変化は見られないし、ぱっつん前髪と左側に音符の装飾がある髪留めをつけている所なんかは昔と変わっていない。
そして梓の隣にいる茶色っぽい髪が長い子は見た事がなく誰だろうと思っていた。
「そうだ!この子は私の友達で同じ部活してる江島 英玲奈ちゃんだよー」
「初めまして、あずー…ちゃうわ、梓の友達兼部活仲間の江島 英玲奈言います~、よろしゅうお願いします」
どこかおかしなイントネーションの関西弁を話す女の子は自己紹介をして礼をしてくれたので私もつられて礼をしてしまう。
「これはご丁寧にどうも…そういえば梓ちゃん、同じ部活って言ってたけど何部なの?」
「"趣味活動部"だよ!」
「…ん?」
「"趣味活動部"だよ!」
胸を張りドヤ顔で2回も同じ事を言われたが聞いた事のない部活名だし、何より趣味活動部とは何をする部活なのか…
戸惑ってしまい硬直している私に英玲奈ちゃんが補足説明をしてくれた。
「いや名前だけ言われても何する部活かわからへんやん…蕾さん、"趣味活動部"って言うのは趣味が特になかった"あずー"が他の部員と趣味を作ったり、他の人達の趣味を共有する部活なんですよ。
部活にしたのはその方が皆集まりやすいかなって言うのと教室が割り当てられるから、で説明はあってる?"部長"さん」
「うん!さすが英玲奈ちゃん、略して"さすえな"!」
…なるほど、梓ちゃんが設立したオリジナルの部活だから聞いた事のない部活だったのか。
確かに趣味って何と聞かれた時にパッと答えられる人って結構いないかもしれない。
色々してるけど趣味とまで言えない事も多いし、新しい事に挑戦する時って何からすれば分からないこともあるし、そんな時にその事知ってる人がいれば教えてもらったりしてやりやすいかも…ちょっと考えただけで楽しそうだなと思ってしまう。
「今部員は何人いるの?」
「今は5人の顧問が1人で全員女の子…あぁ先生である"かな姉"は女の子ちゃうか…」
「えー!かな姉先生も立派な女の子だよー!」
彼女達のやり取りを見ているだけで仲がいいのがわかる、私も学生時代何か部活してれば良かったなぁ…
「そういえば蕾ちゃんは何か趣味あるの?」
「んー…野球観戦かな、あとは特にないかも」
「おー野球ええですね!私達知らないですし教えてください、"つぅ姉"!」
英玲奈ちゃんから妙なアダ名をつけられるが、内心ちょっと気に入りながらも野球のルールや応援の仕方など話してると彼女達は目を輝かせて興味津々で聞いてくれている。
話してる方も楽しいし彼女達も楽しそうだ、趣味活動部…私は好きかもしれない。
「つぅ姉ありがとうございます!私達からも何か趣味共有したいけど今日道具持ってきてへんからなぁ…」
「英玲奈ちゃんの趣味って何なの?」
「ウチの趣味は"手芸"です、ぬいぐるみとか作ったりしとります。
それ共有したいけど…あ、話変わりますけど、つぅ姉髪型に何かこだわりとか別の髪型にする事あります?」
「髪型か…いつもこんな感じでカレン…同居人からは"姫カット"って言われてるけどこれ以外した事ないかも」
「ええもったいない!せっかく長くて綺麗な艶のある黒髪してるんですからもったいないですよ!」
滅多に褒められる事がないので嬉しくなりニヤニヤしそうになってしまっていたがそれを我慢し、英玲奈ちゃんはどんな髪型にするのか聞いてみるとシニヨンやポニーテールなど色々しているようで、私は風呂に入る時湯船に髪の毛がつかないよう適当に結んでるだけなので、どんな髪型が似合いそうなのか私よりキャリアのある英玲奈"先生"へ相談することにした。
「つぅ姉ロリータ系とか似合いそうやから…"くるりんぱ"なんてどやろ?」
「あ、私それ知ってる!帽子叩きつけた後また被る時言うやつ!髪セットした後叩きつけるの?」
「あずー、元ネタは間違ってないけどそれちゃうで…てか叩きつけるヘアってなんやねん…」
…私もそう思っていたが黙っていよう。
くるりんぱとは、毛先をまとめる際に、結んだ毛束をくるりとひっくり返す事で結構基本らしいが上手くまとまらずボサボサになったりするそうだ。
「んじゃ早速失礼して…めっちゃ髪手触りええわ~羨ましいです!」
褒めてくれながら手際よく髪をセットしてくれる姿は美容師みたいに見え、あっという間に後ろに編み込みが出来て、毛先もコテを当ててくれて内巻きに。
完成した髪型を鏡で見ると彼女の技量がわかる、これは趣味と言うよりヘアアレンジは特技と言えるほどではないかと思ってしまうほどだ。
「凄い!蕾ちゃん似合ってて可愛い!」
「これが私…」
こんな機会あまり無いかもしれない、ヘアも決めたのなら他もちゃんとしてみたくなった。
何よりこの髪型で帰るのだからアイツも見るわけで、どうせなら完璧と言えるほどにしたい…そう思い英玲奈ちゃんへ服のコーディネートもしてもらう事にした。
どこにしまっていたのかわからないがクラシカルロリータと言うべきかブラウンのワンピースに袖口のフリルにリボンが付いている服でこんな服今まで着たことがない。
メイクも服に合うようにしてもらうと、もはや鏡に映る人は自分なのかわからなくなるほどだった。
「凄い!まさに"蕾"が"花"開いたみたい!」
「あずー上手いこと言うやん!…でも本当に似合ってて可愛ええですよ!お人形さんみたいやわぁ~」
「ありがとう英玲奈ちゃん、これで同居人にあっと言わせられるかも!」
「最初から気になってるんやけど、同居人って彼氏さんですか?」
ここまでしてもらって隠す必要もないかと思いカレンと私の関係を伝えると2人はまた目を輝かせどっちが告白したのかや同棲生活はどうとか興味津々に聞いてきたが、そろそろカレンが帰ってくる時間だと思い帰る事を伝えると少し寂しそうにしていた、。
「蕾ちゃんまた会おうね!」
「わかったわ、必ずまた会いましょう」
「あ、せや!別れの挨拶はいつものにしようや!」
「そうだね英玲奈ちゃん!蕾ちゃん、私達の部活の挨拶って会う時も解散する時も"乙~"って挨拶するの。
私蕾ちゃんの事も部員みたいに思いたいなって…ダメかな?」
「いいよ、むしろこっちからお願いしたいくらい。
ありがとう英玲奈ちゃんと"部長"さん、それじゃ、乙~」
「乙~!また会おうね蕾ちゃーん!」
「乙です~、彼女さんといつまでも幸せに~!」
こうして私は臨時とは言え趣味活動部の"部員"となった。
自宅へ戻りしばらくすると玄関からただいまーと彼女の声が聞こえた。
リビングで待機していた私を見てなんて言うだろうと待っているとリビングの扉を開けた彼女が私を見て真顔になり動かなくなった。
「えっ蕾だよね…どうしたの…?」
「実家に帰って秋物の服取りに帰ったら昔仲良くしてた子、女子高生2人なんだけど、その子にコーディネートしてもらったの…似合ってない?」
「ううん、可愛すぎてびっくりして動けないだけ…」
何その格好キツくないとか私的にはこれをこうしたらいいとかダメだしされたり、からかわれるんじゃないかと少し思っていたのでこれは予想外の反応だった。
「写真撮っていい?」
「いいよ」
「抱きしめていい?」
「んー…少しだけね」
「キスしても…」
「要求が多すぎる!…もう聞かなくてもすればいいじゃん!」
「うん、その…本当に可愛すぎてなんて言えばいいんだろう…」
「なんか戸惑ってるカレンって久々で見てて面白い!…そう言うカレンはいつも可愛いよ…ほらおいで、カレン」
席から立ち両腕を前に出し左右に広げると、とぼとぼと歩いてきて私に抱きついてきた。
最近ハグとかしてなかったかも…こうなったのも彼女達のおかげだ。
ありがとう、趣味活動部…
【新作予告】
「私達と一緒に趣味、作りませんか!?」
高校生になった愛川 梓は学校で話題となっているSNSサイト・Yutter(通称:Y)を始める事に。
しかしプロフィール欄の設定時【趣味:】の欄が埋められなかった。
今まで趣味と言えるものがなかったかも…よし!友人と一緒に【趣味活動部】を作って趣味を共有しよう!
こうして主人公と友人、新たな仲間達と共に趣味を増やしていく趣味活動部、通称"しゅーかつ部"が誕生する!