日常~学生時代~
部屋の掃除をしているとクローゼットの下に開けていないダンボールがあった。
中身がどうしても思い出せずガムテープの封を解くと中には洋服が畳まずに入っていた。
実家からここへ引っ越す際の荷造りで途中面倒になったからあんまり着ていない洋服を一緒くたに入れたんだと思い出したが、その洋服がどんなものか思い出せずとりあえず1つずつ見ていくことに。
これはテレビで紹介されてたのを衝動買いしたけど結局1回しか着てないブラウス、これは色合いが気に入って買ったけど家に帰って見たら同じようなやつが何着もあって全然着てないカーディガン、これは昔着てたけどお腹周りがきつくなってこれを着れるまで痩せてやろうと思ったが挫折したタイトスカート…
蕾は野球好きでよく例え話でそれを引用してくるけど、それを真似るならこの服たちは"二軍"…いや支配下登録まで行かない選手ぐらいかな?
彼女の影響で私も野球の知識ついたなと思いながらダンボールの中を見ていくと下の方にクリーニングの袋に包まれた制服があった。
紺のブレザーにチェック柄のスカートに赤いリボン…見ているだけで高校生だったのが昨日のように思い出される。
自宅から高校へは徒歩圏内で行ける場所にあって、私は朝早く起きて身だしなみをチェックし隣に住んでいる大好きな人を迎えに行って一緒に登校する毎日を過ごしていた。
眠い目を擦りながら気だるい感じで出てくる彼女、大きな欠伸を何度もする彼女、不意に私の話しで笑う彼女…その全てが好きだった。
クラスは別だったので学校に着いたら自分の教室へ向かうのだが、私は仲の良いグループの子達と他愛のない話を教室に着いたらよくしていて、蕾は自分の席に座り窓の外の風景を見ていたり寝たフリをしていたので友達はいたのか怪しいくらいだったので、学校生活がつまらなくならないよう休み時間には彼女をよびだしては教室の前の廊下で立ち話をしてあげるようにしていた。
黒く長い綺麗な髪、大きな目に長いまつ毛、大きな胸を持つのに程よく引き締まっているウエスト、スカートから見える美脚…その全てが好きだった。
お互い部活に所属していなかったので放課後はまた一緒に下校。
いつの日だったか蕾から言われた事があった。
「カレンは友達も多くていつも教室では誰かと一緒にいるのに、どうして休み時間とか登下校も私なんかと一緒にいてくれるの?」
その時はまだ好意を伝えていなかったしそんな勇気なかったからなんて返答すればいいか結構悩んで「親友だから」と答えたんだっけかな。
それ聞いて少し照れてる顔がまた可愛いのなんのって…
懐かしい…高校生の時から身長とか変わってないから今も制服着られるかも。
色々な思い出が駆け巡り制服を着てみたいと思ったがダンボールから昔は着れていたタイトスカートが私を見ているような気がした…いや、あの時は着られなかったけど今は食事も計算して取ってるし今ならいける!とりあえずタイトスカートから"対決"することにし、少し苦しいが着れて勝利を収められた。
まてよ、高校生の時好き勝手食事して運動もしてない時のサイズから社会人になって仕事し少し痩せた時に買ったタイトスカートのサイズ…つまり制服のサイズの方が少し余裕あるのでは?と私の脳内コンピューターは結論を出したので、早速クリーニングの封を開けて着用する事に。
白のシャツにリボンを付けて、次にスカート…よし着れた!少し暑いからセーターはなしにして次はブレザーを着用すると少しだけ背中が苦しい感じがしたが何とか着ることができた。
最後に28cm丈ぐらいの紺のスクールソックスを履けば完成!姿見で見ているがパッと見高校生と言ってもバレないのでは?
流石にこれで外行く勇気はないので出掛けている彼女がもう少しで帰ってくるのでこの格好で出迎えてみようと思い彼女を待つことに。
しばらくすると玄関からただいまーと彼女の声が。
リビングで待機していた私を見てなんて言うだろうとウキウキしながら待っているとリビングの扉を開けた彼女が私を見て一瞬硬直した。
「えっ、コスプレ…?」
「違う!これ高校の時の制服、覚えてないの?」
「言われてみれば確かそうだった…かも。
てかよく着れたね、サイズ大丈夫だったんだ?」
自慢げに胸を張って無事着れた事をアピールしてみた。
「そういえばその制服見て高校時代思い出したけどさ、カレンってずーーーーーっと私の事見てなかった?登下校の時も休み時間話してる時も」
「だって蕾可愛いかったし、可愛いかったし…」
「可愛いしかないのかい!…その、カレンもそれ似合ってて可愛いよ…」
2人とも照れてしまって数秒沈黙が流れる。
そういえば蕾は制服保存してないのか疑問に思ったので聞いてみると部屋に置いてるそうなのでここに持ってきて着て見せてよとお願いしたら最初はちょっと嫌がっていたが何回もお願いするとしょうがないと部屋から一式持ってきてくれた。
「蕾の制服姿楽しみだなー」
「なんかすっごい恥ずかしんだけど…まずはシャツを…」
彼女がシャツを着てボタンを閉め終わった瞬間の出来事だった、胸の所のボタンが2つ程勢いよく弾け飛んだのだ。
「…思えばバストサイズ高校生の時より上がってるんだった」
「…チッ…」
自然と舌打ちが出てしまう、まさか現実でこんな漫画のような出来事が起きるとは思わなかった。
私のサイズはBで彼女のは…くっ、これが俗に言う"胸囲の格差社会"か!
心の中で悔しさを噛み締め弾け飛んだボタンを回収しコスプレ大会は終わりを迎えた。