旧日本海軍は大艦巨砲主義だった。という主張を見かけて
そんなわけあるまい。
その論者はしばしば大和型戦艦が大戦中に進水したことが理由としてあげるわけだが、ここで空母の進水数には触れられないのだ。
確か日本海軍は5隻以上の空母を開戦後に就役させてるんだ。大和型はせいぜい二隻だし、三番艦は空母にする予定だった。
じゃあこの日本海軍は大艦巨砲主義という印象はどこから来たのか。
B-29が原因だと私は思う。B-29は東京をはじめとする主要都市を焼き尽くし、広島、長崎に原爆を投下した。その上、ジェット機の飛び交う朝鮮戦争でも同じように用いられた。
アメリカがB-29を作っている間に、日本はそういうものを作れてはいない。
ということは
日本は航空機を作らない大艦巨砲主義だ
という具合であろう。
それなりにこの手の事情に詳しい人からすれば馬鹿げた主張だが、そうでない人からすれば一見正しいようにも見えてしまう。
じゃあどう間違っているのか解説しよう。
第一に、日本は航空機含むエンジン技術で他国に劣っていた。これは、航空技術に全精力を注ぎこんだところで十年単位で早く産業革命が起こっていた他国との根本的な差は覆せないだろう。
第二に、日本は大型爆撃機を作る理由がない。当時は領土が広かったものの、陸軍にとっては目の前の中国を差し置いて仮想敵であるアメリカを陸上爆撃機で爆撃するためだけに離島に大きな滑走路を造るというのはあんまりだ。そして、日本海軍は漸減作戦。つまり防衛に重きを置いたドクトリンであるのでわざわざ航続距離を伸ばして他の性能を低下させたくはない。
こういう理由である。日本にB-29がないのは「大艦巨砲主義だから」じゃないきちんとした理由があるんだよって話だ。
そもそもこの時のアメリカは空母の建造と戦艦の建造、爆撃機の製造を同時にできる国家で、勝ってるところを探すとどうにかなってしまうのだ。
ともかく、太平洋戦争時の日本は大艦巨砲主義だったって考えは間違いなんだよ。
というか空母や戦艦を持てる海軍力がある国は米英日くらいで、三か国は戦艦よりも空母の保有数が基本的に多いので世界全体が同時に航空主兵論になっていった時代なのだ。
この手の勘違いはうっかりすると「あの時代の人間はバカだった」みたいな故人を中傷する言説に繋がるので減ってほしいなあ。