地獄からの解放
朝から緊張していた。
今日は警察の人も来て、本格的に健太を助けに行く日
朝から総務部長と警察の方と話して、どうゆう感じで保護していくか流れを大まかに決めた。
絶対救ってやるからな。健太
そう意気込んでインターホンを押した
「誰ですか」
「あ、お父様。児童相談所です。」
「またあんたか。だから、虐待なんてしてないって」
「今日はですね、警察もいます。」
「健太くんを強制保護させていただきます」
「警察だと!」
「はい、ですからドアを開けてください。」
「分かったよ」
まずは第一段階クリア。
ここまで順調に行くとは思わなかった。お父さんも警察がいることがわかって、さすがに抵抗しなくなったか。
「これは通告書です。」
「これがあると、強制保護できるってのか?」
「はい、そうです。」
「健太くんを保護させていただきます。」
「今はお父様だけですか?」
「いや、中に家内もいる」
「そうですか。そしたら、2人で警察の方と一緒にいいですか?」
「チッ…分かったよ」
「ご協力ありがとうございます」
前回の抵抗が嘘のようにすんなりだった。
さすがに諦めたのか
さて、健太くんを探すか
まずは押し入れ。
いないか。
寝室。
いない。
どこだ。どこにいる。
くそ。どこにいるんだ
早く助けてあげなくちゃ
こうゆう場合。ダンボールの中にいる場合が多い。
何度もダンボールの中で見つかったという事例を聞いたことがある。
俺は家中にあるダンボールの中を探した。
どこだ!健太!どこ
いた!!
だいぶ衰弱してる。かなりやせ細っている。きっとご飯も食べさせられない。
「健太、健太」
「………タ…クヤ」
「そうだ!タクヤおじさんだよ」
「健太を助けに来たんだ」
「あ…り…がとう」
「よかった。すぐ病院に行こう。」
すぐに入院になった。
食事をしてない栄養失調と水分をとってなかったのか極度の脱水症状と診断された。
ここから3日ほど入院する。その間俺は健太の様子を見つつ、保護施設を決めなければいけない。
入院してから1日目は一度も目を覚まさなかった。
ぐっすりと気持ちよさそうに寝ていた。
2日目は午前はぐっすり寝てたが。午後に目を覚ました
「タクヤおじさん」
「健太!」
「目を覚ましたのか」
「うん。ここは病院?」
「あぁ、そうだよ」
「僕を助けに来てくれたの?」
「健太を地獄から救いに来たヒーローさ。」
「うん。本当にヒーローだ」
「ありがとう。タクヤおじさん」
「健太が元気なら良かった」
3日目はすっかり元気になって。退院した。
「僕、この後どっか行くの?」
「とりあえず、施設行くよ」
「施設?」
「うん。まぁもっと詳しく言えば俺の仕事場の仮保護施設ってとこだな」
「仮保護施設?」
「うん。健太の両親はまだどんな処罰が下されるかわかってないのと、児童保護施設は入れるのに時間がかかるんだ」
「処罰って何?」
「うーん。健太の両親は悪いことをしたからね。健太に嫌なことしてきたでしょ?」
「うん。」
「それをダメですよって偉い人が反省しなさい!ってすることかな?分かりやすく言えば」
「そうなんだ。」
難しいな。まだ8歳、9歳になる子供に説明するってのは。さらに難しい言葉を使ってもいけないし。
上手く伝わってくれたかな?
「着いたよ。健太」
「ここが仮保護施設?」
「うん」
「ここで僕一人?」
「健太一人じゃ、寂しいだろ」
「うん…寂しい」
「だから、俺も一緒にいるよ」
「児童保護施設とか諸々決まるまでね」
「やったー」
本当は一緒に暮らすなんて良くないことだ。
でも、総務部長と管理職に懇願して、決まるまでの間一緒に過ごさせてください。そう頼み込んだ。
了承してもらえて、尚且つ休職という扱いで一日中そばにいてあげなさい。
そう命令された。
本当、総務部長と管理職には感謝しなきゃ行けない
「タクヤおじさん…」
「どうした?健太」
「タクヤおじさんは仕事ある?」
「ううん、ないよ。ずっと健太と一緒」
「ほんと!?ずっと一緒なの?」
「そうだよ!」
「嬉しい」
俺がずっといるってわかった瞬間めっちゃ笑顔になった。
こんなに笑顔な健太は初めて見た。
こんな笑顔になれるのも、地獄から抜け出したから。
そう考えたい。
「タクヤおじさん、これって何?」
「テレビだよ」
「テレビ?」
「うん。このリモコンで映像がついて、色んなのが見れるよ」
「おー!テレビ……すごい!」
テレビも知らないのか…
確か健太の家はテレビなかった気がするもんな。
親がみてたりしたら、何となくわかるもんな
「なぁ、健太。他に知りたいものはあるか?」
「んーと、箸とスプーン?とフォークとか!」
「わかった。この俺様が、教えてあげよう」
その後は健太に色々教えた。
箸、スプーン、フォーク、電子レンジ、炊飯機、冷蔵庫。その他諸々
こんなにも知らないものがあるのか。そうおもった。
そして、悲しくなった。健太のように何も知らず、親に殴られ、蔑まれる。
そんな子供がこの世にまだいっぱい居るという現実。
全ての子供を救ってあげたいけど、そう上手くは行かない。
健太のような子供がこの世からいなくなり、救えますように。
そう願う。