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男の秘密

俺の名前は中西 タクヤ

児童相談所の職員をしている


ある日住んでいる団地でいつもひとりぼっちの男の子がいることに気づいた。


観察していると、毎日同じ時間にベンチに座ったり、遊具で遊んだりしている


決まって夜の0:00から2:00まで。朝の10:00から16:00まで。


決まった時間に決まった行動を1人でしている。


俺は彼に何らかの事情があって、ひとりで過ごしているのだろうと推測した。


しばらく観察してから、自分から近づこうと決心した。


決行の日。彼が座っているベンチの横に座ることに成功した。


彼は学校のある時間帯いつもベンチにいる。だから、思い切って聞いてみた。学校は行かないのか?って


最初は怯えたような、不思議そうな顔をしていたが。

行けないの と小さな声で答えてくれた。

いきなり変なおじさんに話しかけられたら怖いよなと少し後悔した。


次はどんな質問をしたら、怖がられないかなと考えていると、今度は彼から話しかけてきた


「おじさんもひとりぼっち?」

「ひとりぼっちだよ。話し相手なんて居ないさ」


そうやって答えた。本当は友達だっている。けど、ここは居ないって答えた方が心を開いてくれるだろうと思った。


あと一つ気になったことはおじさんと呼ばれたこと。

俺の年齢はこの子からするとおじさんなのかと少しショックを受けた。


でも、相手から話をしてくるのは少し嬉しかったし、少しだけ心を開いてくれたのかなと思った。


最初の日は少しだけ会話をして、お別れをした。


また2日後とかに行こうと思ったが、仕事が忙しく行けない日々が続いた。


最初の決行日から1週間が過ぎた日。仕事にも目処がついて、やっとあの子に会える時間が出来た


最初会った時に覚えてるのかすごく不安だったし、なんて言おうか迷った。考えた挙句最初に言った隣座ってもいいか?って言ってみた


そしたら、男の子は ぱぁっと顔を明るくしてくれた

良かった。覚えててくれたと安心感が凄かった。


おじさんと呼ばれるのが癪だったので、名前を教えた


「俺の名前はタクヤだ」

「タクヤおじさん?」


おじさんは抜けないのかって思ったけど、名前を覚えてくれたのならそれでいいかと思った


思い切って、彼の名前も聞いてみた


「名前はなんて言うんだ?」

「えっとね、健太!」


健太と言うのか。いい名前だ。お互いの名前を認識したことでまた更に心を開いてくれた気がして嬉しかった


その後は互いに世間話をした。公園でラジオ体操しているおじいさんは4年くらい同じ場所で体操してるんだぞとか。公園をグルグル回ってる人は最近団地に来たこと。そんな些細な話をしてあげた


些細な話だったけど、健太は興味津々に俺の話を聞いてくれた。


「そうなんだ!知らなかった」とか「最近来たんだね!」とか色んなリアクションが見れて嬉しかった。


段々と心を開いてくれたなと思ったところで、さらに思い切った話をしてみた。


「お父さんとかお母さんに殴られたり、いじめられたりされてない?」


随分思い切りすぎたかなと悩んだが、健太はすごく考えていた。

どうやって答えようかとしばらくの間があった。


5分くらいの間の後


「されてないよ」


健太はそう答えた。でも、俺にはわかった。嘘をついていると


顔が物語っていた。怯えたようなそんな顔をしていた。


仕事柄怯えたような顔をして、嘘をつく子供を幾度となく見てきた。


嘘だよねとかそんなことを言うのは違うなと思い


「されてないか!それなら良かった」


と嘘がバレてないよみたいなテンションで答えた。


俺は決意した。嘘をついてまで恐怖に縛られている子供をこれ以上見たくないとそう思った。


だから、健太には別れを告げて仕事場に行った


仕事場に着いてからはすぐデスクにある

団地の子供と住所を調べた。


健太、健太。どこだ。どこの部屋だ


「あった!!」


三浦健太。8歳。小学校2年生になる歳だ。

学校には行ってない。親は工場勤務と事務職か。

あの時間帯1人になる理由は親の仕事柄か。


夜の時間は親が寝たあとこっそりと出ているのだろう。朝から夕方にかけての時間は仕事に行ってる間の時間。


多分この時間が彼にとっての縛られない大事な時間。


その後は総務部に行った


「総務部長」

「どうした。タクヤ」

「私が住む団地にいつも一人でいる小学2年生になる歳の三浦健太という男の子がいるのですが」

「虐待か」

「私はそう思っています。」

「親の仕事は」

「工場勤務と事務職です。観察をしてみると

親が寝たあとの2時間と仕事に行ったあとの6時間一人でいることが確認されています」

「なるほど…わかった。」

「このことから親から日常的に殴られたりしているのではないかと推測しました」

「男の子の両親には私から連絡しておく」

「ありがとうございます」


これで俺の仕事のひとつは終わった。この仕事で健太の両親がどんな反応をして、どんな行動をするか

また観察して、健太の心をさらに開いていかないとな。

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