僕の人生
この物語は団地に住む男の子とひとりぼっちの大人の人生を描いた話である。
僕の名前は三浦健太。学校に通っていたら小学校2年生になる。
両親はいるが、仲が悪い。父が工場勤務で母は事務職。いわゆる授かり婚で、仕方なく僕が生まれてしまった。
昔遊び半分で父が遊んで子供を授かってしまったのが僕の母親。
結婚なんてするつもり無かったし、尚更子供なんて産むつもりもなかった。でも産まなければいけなかった。
母が父に子供が出来たと、教えた時期はもう中絶出来ない状態になっていた。
僕はこの世に生まれてこないで欲しかった。必要とされてない人間。こんなことになるなら僕だって生まれてきたくなかった。
両親は僕のことをサンドバック兼執事だと思ってるのか。仕事でイラつくとすぐ殴ってくるし、お皿は割れるし、毎日怒号が飛びまくってるし。正直こんな家は大嫌いだ。
僕は親に縛られている。そんな家すぐに出ていけばいいじゃないかって思うかもしれないが、そんな勇気はないし。そんなことをしたら、それこそ僕の居場所はなくなる。
こんな家だけど、ここしか僕の居場所は無い。
だから、僕はいくら両親に殴られても、お皿が割れて怪我をしても、学校に行けなくても、友達ができなくても、ここに居るしかない。そう、居るしかないんだ
親が帰ってくるまでの間、テーブルに置いてある1000円札の紙切れ1枚でコンビニご飯を買う。
僕のご飯はない。いままで一度もご飯を用意されて食べたことは無い
父と母、500円ずつで弁当を買う。そのまま出してもいいが怒られるので、きちんとお皿に盛り付ける。
両親が帰ってきてからも僕は人形のように立って、親の憂さ晴らしに殴られるサンドバックとなる。
もう殴られるのも、平気になった。最初は痛いし、辛いし、嫌だったけど、もう今は心を無にしている。そうじゃないと精神的にも肉体的にも耐えられない。
親が寝てからは、まずいと言われて残したコンビニ弁当を貪る。お皿は使えない。食べたとバレるから。
それから、静かに外に出てゴミを捨てる。ここからが僕の自由時間。
外に置いてある植木鉢の下から鍵を取って、散歩しに行く。これが僕の日常
公園のブランコに乗り、滑り台を滑る。もちろん夜中だから僕以外一人もいない。遊具も全部独り占め。
そんな時間が好きだった。
特にジャングルジムが大好きだった。てっぺんに登って、上から景色を眺める。まるで僕が世界の頂点に君臨してるみたいで好きだった。
ジャングルジムなんて低いから世界の頂点じゃないだろって思うかもしれないが、僕にとってはこの小さな狭い世界でここが世界の頂点。てっぺんなのだ。
遊具で遊んだ後はベンチに座って休憩する。
すぅっと深呼吸をして、今日の自分にお疲れ様と心のなかで唱える。
しばらくしたら、家に帰る。鍵を開けて、玄関を音が鳴らないようにそっと開けたら、植木鉢の下に鍵を入れてそっとドアを閉める。
リビングの片隅に置いてあるダンボールを床に置いて、団地で拾ったブランケットをかけて寝る。
布団で寝たことはない。これで僕の一日が終わる。
夢で自分が良い両親の元に生まれて、幸せに暮らしている。そんな夢を見る。
そんな幸せな夢も一瞬。すぐに朝が来てしまう。
また、僕の一日が始まる
親が起きるまでの間冷蔵庫の中にある卵とソーセージを焼いて、用意しておく。
親が起きてからはリビングの片隅で人形のように立ってお腹が減るのを我慢して親が仕事行くまで耐える。
その後は残した朝ごはんを食べて、また僕の自由時間が始まる
学校には行けないので、朝の時間を有効的に使える。
夜と同様、植木鉢の下から鍵を取って外に出る。
朝の団地は夜と違い人が居てなんだか嬉しい。
おじいさんが公園でラジオ体操をしていたり、公園の周りをグルグル周って運動してるお兄さん。はたまたおばさんが近所の人とガヤガヤ喋ってたり。朝は人間観察がとても楽しい。
いつものように人間観察をしていると、1人の男が話しかけてきた
「なぁ、隣座ってもいいか?」
誰か分からなかったが、もう話しかけてこないだろうと思い、「うん」と返事をした。
朝いつも人間観察をしているが、こんな人見たことがなかった。
男の人なんて気にもせず。朝の日課を再開しようと思ったその時。また男の人が話しかけてきた。
「ひとつ聞いてもいいか?」
「うん」
「お前は学校には行かないのか?」
「行けないの」
「そうか」
短い会話だったけど、なんだかこの人も僕と同じ人生を送っているのかなって。勝手にそう思ってしまった。
なんだか気になるので今度は僕から話しかけてみた
「ねぇ、おじさん」
「なんだ?」
「おじさんもひとりぼっち?」
「あぁ、そうだな。一人ぼっちだ」
「話し相手なんて居ないさ。」
「じゃあ、僕がおじさんの初めての話し相手?」
「そうだ。」
やっぱり僕の思い通りおじさんはひとりぼっちみたいだ。でも、どうしてだろう。
どうしておじさんは僕に話しかけようと思ったのだろう。どうして僕を気にかけてくれたのだろう