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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第四章 京都百鬼夜行

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京都百鬼夜行祭 参

遅くなってすみません。

なかなか、まともに執筆出来る時間が取れませんでした。

出来るだけ頑張って書いていきますので、引き続き応援をお願いします。


※本作中の挿絵・画像は自動生成AIによるものです。

イメージや雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。


なお、キャラクターの容姿や髪型、衣装などは

作中の描写と多少異なる場合があります。

あらかじめご了承ください。

「――『酒呑童子』が来た」


そう言い残した刹那様は、「用事がある。先に行く」とだけ告げて、どこかへ去っていった。


俺は一人、鴨川の河川敷でぼうっと立ち尽くし、これからどうするべきかを考えていた。


――正直、認識が甘かった。

どこかで「大丈夫だ」「問題ない」「自分なら解決できる」と思っていた。

だが刹那様の言う通り、俺の認識は甘かった。


ゲームや物語の主人公気取りだった。

現実だと受け入れていたはずなのに……

まだ、どこかでゲーム感覚が抜けてい……。


絶対なんて、ない。

勇者でも主人公でもない。

俺はただの学生。


なるほど、二宮様に言われるわけだ。


「お主の記憶がどうかは知らんが……もう少し、この世界を知ることじゃ。さもなければ、大事の時、何も出来んぞ」


言われた言葉が頭の中をかけめぐった。


なるほど確かにそうだ……

今の俺は、何も知らない。

だからどうしたら良いのかが分からない。


「はぁ~……確かに、何も知らなければ、何も出来ないな」


俺は一人そう嘆きホテルに戻った。



ホテルへ戻る頃には日が沈み、辺りはすっかり暗くなっていた。

遅くなったな――そう思いながらホテルに入った。


すると、ロビーは騒然としていた。

先生や生徒たちがバタバタと走り回わっていた。


俺がその光景を眺めていると、風見先生が駆け寄ってきた。


「よかった……獅子堂君、戻ってきたんですね。ひとりで勝手に出かけたら駄目じゃないですか」


俺の顔を見るなり、先生は安堵の表情を浮かべ、そのまま小言が始まった。

俺は「すみません」と頭を下げながらも、周囲の慌ただしさが気になり、口を挟む。


「先生、何があったんです?」


「あっ……そうでした!」


先生は思い出したように声を上げ、話しだした。


「本部から退避命令が出たんです!」


「退避命令?」


「はい。『現状が悪化したため、学生の領分を超えた』と……。それで今、慌てて帰り支度をしている最中で……」


そこで先生は、言葉を濁した。


「何かあったのか?」


俺が問うと、先生は複雑な表情で答えた。


「本部から連絡が来る少し前に……三組が祭りに行ってしまったんです。連絡を受けてすぐ呼び戻そうとしたのですが、連絡が取れず……人も出しましたが、いまだ戻ってきていなくて……」


先生の声には、はっきりと焦りが滲んでいた。


俺は、少しでも安心させようと軽く言った。


「御剣なら大丈夫だろ。多少の荒事なら、なんとかするさ。それに、クラスの連中も一緒なんだろ?」


「……はい」


「なら問題ない。三組は御剣の分家や関係者が大半だろ?」


「……はい」


「だったら、全力で御剣を護るさ」


「……いえ……生徒に何かあった時点で問題なんですが……」


そのときだった。


――荘厳な鐘の音が、空気を震わせた。


ゴーン。

ゴーン。

ゴーン。


ロビーのざわめきが、凍りつく。


羅生門の出現を確認。

幻界の侵食を確認。

九尾――玉藻前の復活を確認しました。

これよりレイド戦を開始します。

討伐目標:九尾 玉藻前。

鬼神 酒呑童子。

防衛目標:二宮 姫華、一条 綾女の生存。

これより近隣一帯が夢幻界化します。


ワールドアナウンスが、無機質に響いた。






時間を少し遡り、京都某所――地下祭儀場。



「ガハハハハ! 良いのう! 祭りは実に良い!」


高笑いとともに、鬼の面をつけた三人が現れた。


それを見た一条は、静かに問いかけた。


「お祭りは、もうよろしいのですか?」


「あぁ! 満足じゃ! 良い男も見つけたしの!」


そう言って、黒い鬼の面は豪快に笑った。


「お頭は遊びすぎなんですよ~」


赤い鬼の面が呆れたように言うと、白い鬼の面は「うんうん」と頷いていた。


「ところで……」


黒い鬼の面が、ふっと空気を変えた。


「うちの総大将は、まだ目覚めんのか?」


ギロリ――


その視線が一条を射抜いた。

一条は臆することなく、祭壇へ視線を向けたまま答えた。


「今朝のうちに、封は解いております」


「なら、なぜ出て来ん? 失敗じゃあるまいな?」


黒い鬼の面の言葉に、一条は首を振る。


「分かりません。まだ、お目覚めになられていないのかもしれません」


そのとき――


「シッ」


小さな音が横から聞こえた。


次の瞬間。

――ドゴォォン。


目の前の祭壇が、黒い鬼の面によって粉砕された。


拳が振るわれただけだった。

轟音とともに祭壇は弾け、破片が衝撃波に押し出されて四方へ飛び散った。


それを見た一条は、「はぁ……」と、大きくため息をついた。


埃が舞い上がる中、瓦礫の奥から声が響いてきた。


「……誰じゃ。わらわの眠りを妨ぐるものは」


妖艶で、艶やかな声。


「なんと騒がしきことよ。

 久方ぶりに目を覚ませば、随分と無作法な客人がおるものじゃのう……」


瓦礫の奥で、気配がゆらりと揺れた。


「わらわを呼び覚ましたのは、そなたらかえ?」


空間が歪み、その裂け目から一人の女性が姿を現した。


黒く長い髪。

白い着物をまとった、妖艶な女性だった。


着物は大きく着崩され、美しく艶やかな肌を惜しげもなくさらしている。

豊満な胸元を誇示するかのように、衣はゆるく開かれていた。


だが、一目見ただけで、彼女が人ではないことは明白だった。


頭には狐の耳。

そして背後には、ゆらりと揺れる九本の黒い尾。


その姿は、まさしく――


九尾の妖狐。


「やっとお目覚めか、女狐」


黒い鬼の面がそう言うと、九尾の女はゆっくりと視線を向け、鼻で笑った。


「……ふん。不躾な阿呆が誰かと思えば、丹波の小鬼か」


その言葉に、黒い鬼の面のこめかみに血管が浮き上がる。


「……何だと。年老いた獣ババアが、いい歳こいて醜い姿態さらしてんじゃねぇよ!」


「なんじゃと、餓鬼風情が!」


「おーおー、怖い怖い」


黒い鬼の面は肩をすくめ、嘲るように笑った。


「老いぼれた色香でしか男を誘えねぇとは、哀れなもんだな」


九尾の女性の目が細くなる。


「脳味噌まで筋肉の餓鬼が……。

 そんなんじゃから、皆に逃げられるのじゃ。哀れじゃのう、戦馬鹿は」


「っあァ⁉」


その瞬間――


二人の妖気が激突した。


空間が軋み、地下祭儀場の空気が悲鳴を上げる。

見えない圧力がぶつかり合い、空間そのものが歪んでいく。


そのときだった。


パンッ!


乾いた音が響いた。


二人が同時に視線を向けると、そこには、手を打ち合わせ、静かに佇む一条の姿があった。


「お二人とも、児戯はそこまでですよ」


「誰じゃ?」


九尾の女性が、目を細めて問いかける。


「初めまして。玉藻前様。

 京の都の守護を賜っております、一条 綾女と申します。以後、よしなにお願い致します」


玉藻前は「ふん」と鼻を鳴らし、蔑むような視線を向けた。


「そなたか……わらわの封を解いた愚か者は。……いま、何と言った?」


玉藻前の目が鋭くなる。


一条は表情を変えず、答えようとした。


「ええ……都の守護を賜っております、一条――」


「それじゃあ!」


玉藻前は、一条の言葉を遮るように叫んだ。


「なぜじゃ!京の守護結界を司る一族が、わらわの封を解いておる!

 そなたは帝の守護者であろう! なぜじゃ!」


突然の怒声に、黒い鬼の面が顔をしかめる。


「うるせぇな、ババア……急に叫ぶなよ」


耳を指で押さえながら、吐き捨てるように言った。


「黙っておれ、酒呑!」


玉藻前は吐き捨てるように酒呑童子を一喝すると、そのまま一条へ詰め寄った。


「小娘!説明せい!事と次第によっては、ただでは済まさんぞ!」


怒気を滲ませながら迫る玉藻前に対し、一条はまるで意に介した様子もなく、淡々と答えた。


「その話は……立ち話では何ですので、奥の間で。宴の準備も整っております」


そう言うと、一条は玉藻前たちを奥の間へと案内し始めた。


先を歩く一条の背を、玉藻前は目を細めて見つめていた。

その様子を見て、酒呑童子が口を開いた。


「どういうことだ?」


玉藻前はちらりと酒呑童子を一瞥しただけで、何も言わず黙って歩きだした。


「おい、待てよ」


酒呑童子はそう言って玉藻前を追いかけた。

険しい顔のまま黙って歩く玉藻前に、酒呑童子が詰め寄る。


「いい加減、黙ってないで教えろ」


すると玉藻前は、わずかにため息をつくようにして答えた。


「……一条家は、藤原五摂家の一家。帝に仕える公家の一角じゃ」


玉藻前は酒呑童子を横目に見る。


「要するに――わらわたちの敵、陰陽寮の上役よ」


玉藻前はそう言って黙って歩き続けた。




玉藻前


挿絵(By みてみん)




ここまで読んで頂き、ありがとうございます。


本作に登場するイラストは、自動生成AIによるものです。

物語そのものを補足する「正解のビジュアル」ではなく、

あくまでイメージや雰囲気を楽しむための要素として見て頂ければ幸いです。


感想・考察・ツッコミなど、

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