御三家 ①(画像あり)
※本作中の挿絵・画像は自動生成AIによるものです。
イメージや雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
なお、キャラクターの容姿や髪型、衣装などは
作中の描写と多少異なる場合があります。
あらかじめご了承ください。
一条は静かに席へと戻ると、改めてこちらに向き直り、深く頭を下げた。
「此度の一連、皆様を巻き込んでしまい、
誠に申し訳ございません」
その所作は丁寧で、形式的でありながらも、
そこに逃げの色はなかった。
俺は湯呑みを置きながら、一条を見る。
「……説明、してくれるんだよな?」
問いかけに、一条が口を開こうとした、その時だった。
「その件は、我から話そう」
落ち着いた、しかしよく通る声が響いた。
見ると、先ほどまで気を失っていた二宮が、
いつの間にか目を覚まし、身体を起こしていた。
二宮は一度、ゆっくりと周囲を見渡すと、
上座へと歩み、改めて腰を下ろす。
その動きを見て、一条は何も言わず、
一礼しながら静かに後ろへ退き、脇へと座り直した。
「改めて、初めましてじゃな」
二宮は背筋を伸ばし、わずかに顎を上げて言った。
「我は、二宮・姫華親王である」
親王。
その言葉に、俺は思わず眉をひそめた。
……正直、聞き覚えがない。
俺が首を傾げているのを見て取ったのか、
二宮は小さく鼻で笑った。
「お主……『二宮』という言葉に、聞き覚えがないのか?」
どこか呆れたような、そして少しだけ優越を滲ませた声。
俺が言葉に詰まっていると、
すぐ横から一条が静かに補足に入った。
「獅子堂様。二宮とは“宮号”(みやごう)でございます」
一条は、淡々と、しかし噛み砕くように続ける。
「宮号とは、天皇陛下の御親族、
あるいはその補佐を担う血縁者に与えられる称号です。
ゆえに正式には、
“二宮・姫華親王”――
それが正しいお呼び方となります」
……なるほど。
俺は思わず、周囲の顔を見回した。
イザベリアは小さく首を振っている。
どうやら彼女も知らなかったらしい。
一方で、沙耶は静かに、しかし確かに頷いていた。
――ああ、そういうことか。
御影家。
情報・暗躍を得意とする家系
「……流石に、詳しすぎだろ」
思わず小声で呟くと、
沙耶は何も言わず、ただ静かに視線を伏せた。
その沈黙が、肯定だった。
俺は気持ちを切り替えるように背筋を伸ばし、
改めて二宮の方へ向き直った。
これが正しい作法なのかは分からない。
だが、少なくとも――
先ほどまでの相手に、何もせずにいるのは違う気がした。
両手を畳につき、頭を下げようとした、その瞬間。
「やめい」
短く、しかしはっきりとした声が飛んできた。
顔を上げると、二宮は少しだけ面倒そうな顔をして、
こちらを見下ろしていた。
「今さら、お主に敬意を払われても嬉しくはないわい」
そう言って、ふっと鼻で笑う。
「先ほどまでの、ぶっきらぼうな態度で構わん。
形だけの礼など、却って鬱陶しい」
……なるほど。
俺は手を止めたまま、少しだけ間を置き、
そのまま身体を起こした。
すると、場の空気を読んだ一条が、柔らかく補足を入れた。
「皆さまも、どうぞ。
足を崩して、楽にしていただいて構いません」
その言葉に甘えて、俺たちは揃って正座を解いた。
正直なところ、助かった。
慣れない正座を続けていたせいか、
足の感覚はとっくに怪しくなっていたし、
今にも痺れが本気を出しそうだ。
格式ある場で言うことじゃないが、ツラいものはツラい。
一方の二宮はというと……
すでに足を横へ投げ出し、肘掛けに肘をついて、頬杖をついていた。
……いや。
くつろぎすぎだろ。
その様子を見ていた一条は、
何も言わず、ただ小さく苦笑いを浮かべている。
見慣れた光景なのだろう。止める気もないらしい。
「……さて」
二宮は天井を仰ぎ、ぶつぶつと独り言のように呟いた。
「どこから話したもんかの~」
言葉とは裏腹に、その視線は、確かにこちらを捉えていた。
ここからが、本題だ。
少しの沈黙のあと、俺は腹を括った。
回りくどい前置きはいらない。
聞きたいことは、最初から決まっている。
「なら、俺から聞きたい」
自然と声が低くなる。
「お前たちは――敵なのか?」
その一言で、場の空気がわずかに張りつめた。
二宮はすぐには答えなかった。
眉間にしわを寄せ、肘をついたまま、ゆっくりと天井を見る。
「敵か味方か……」
ぽつりと呟くように言い、
「そもそも、何が敵で、何が味方なんじゃろうな」
言葉を転がすように、思案する。
「正義も悪もありはせん。
善や悪も、所詮は立つ場所で変わるもんじゃ」
……来たな。
俺は思わず、息を吐いた。
「そういう哲学の話が聞きたいんじゃ――」
言い切る前に、被せるように声が飛んできた。
「分かっておるわい」
二宮は視線をこちらに戻し、
今度ははっきりと俺を見据えた。
「どうせお主は、
“結局どっちなんだ”と聞きたいんじゃろう?」
逃げてはいない。
だが、簡単にも答える気はない。
その視線に、俺は小さく肩をすくめた。
「そうだよ。
敵なら敵、味方なら味方だ。
少なくとも、命を預ける相手かどうかは知っておきたい」
二宮は、ふっと鼻で笑った。
「直球じゃのう……しかし、敵か味方かと問われれば――」
二宮は、まるで冗談でも言うかのように肩を揺らし、くつくつと笑った。
「我は味方で、一条は敵じゃな」
あっさりと、そう言い切る。
「今回の首謀者、という意味なら一条で間違いあるまい。
こやつが一番しっくりくる」
そう言って、二宮は楽しそうに声を立てて笑い、
一条の方へちらりと視線を向けた。
「じゃがな――」
笑みを浮かべたまま、視線で一条を差した。
「この騒動を鎮められるのも、結局はこやつじゃ」
どこか愉快そうに、口元を歪め。
「なんじゃったか……まっちぽんぷ、じゃったかの?」
意味が分かっているのかいないのか、
二宮はその言葉を転がすように呟き、またケラケラと笑った。
――その瞬間。
俺は反射的に身体を強張らせ、足に力を入れた。
敵だ、と言われ、それだけで警戒するには十分だった。
だが、二宮は即座にこちらを見据えた。
先ほどまでの軽い笑みは消え、鋭い視線が突き刺さる。
「やめておけ」
低く、押し殺した声だった。
「こ奴を討っても、何も変わらん」
その一言には、はっきりとした怒気が滲んでいた。
俺と二宮は、しばらくのあいだ視線を交わしたまま動かなかった。
睨み合い――というより、
どちらが先に折れるかを測り合っている、そんな空気だ。
だが、このままでは埒が明かない。
俺は小さく舌打ちし、視線を外した。
その瞬間を待っていたかのように、二宮が口を開く。
「……そもそもの始まりはな」
低く、落ち着いた声だった。
「すべては、そやつ――御剣の倅が産まれたことじゃ」
そう言って、二宮は顎で示す。
視線の先には、
部屋の脇で未だ意識を失っている御剣の姿があった。
その刹那。
明確な“怒気”が、沙耶の身体から立ち上った。
張り詰めた殺意。
一瞬でも遅れれば、飛びかかりかねないほどの圧。
それを感じ取った二宮は、即座に声を上げた。
「やめい」
短く、しかし鋭く。
「御影の娘。そなたも、状況ぐらいは理解しておろう」
その一言で、沙耶の動きが止まった。
歯を食いしばり、拳を握りしめたまま、
沙耶はゆっくりと怒気を沈めていった。
「……申し訳ございません、二宮様」
深く、深く頭を下げる。
その姿には、一切の言い訳も反発もない。
ただ、忠誠だけがあった。
二宮はその様子を見て、小さく肩をすくめる。
「ったく……」
呆れたように息を吐き、
「貴様ら一族の忠誠心は、相変わらず異常じゃの」
ぶつくさと、まるで昔から知っている相手に向けるようにぼやいた。
だがその声に、侮りはなく、
むしろ、よく分かっている者の声音だった。
「――お主、御三家を知っておるか?」
不意に、二宮がこちらを見てそう問いかけてきた。
俺は一瞬考え、思いつくままに答えた。
「皇家、それから……御剣家と黒羽家、だろ?」
その言葉を聞いた二宮は、ふっと鼻で笑った。
「今の言葉で言えば、そうじゃな」
含みのある言い方だった。
「……違うのか?」
俺がそう問い返すと、二宮は答える代わりに視線を一条へと投げた。
それを受けて、一条が一歩前に出る。
「説明いたします」
柔らかく、しかしはっきりとした声だった。
「“御三家”とは本来、特定の役割を担い、
同じ姓――すなわち“宮号”を名乗ることを許された家系を指します」
俺は思わず眉をひそめる。
姓、ではなく……宮号?
一条は続けた。
「ゆえに、本来の御三家とは――」
少し間を置き、
「一宮、二宮、三宮。
この三つの宮号を与えられた家々を指す言葉でございます」
……なるほど。
俺がこれまで“御三家”だと思っていたものは、
もっと後世的で、政治的に整理された呼び方だったというわけか。
「皇家や御剣家、黒羽家は――」
一条は言葉を選びながら続ける。
「その流れを汲み、守り、支えるために分かれた家系。
現在の体制においては御三家と呼ばれていますが、
本来の意味合いとは少々異なります」
説明を終えた一条は、静かに一礼した。
二宮は満足げに頷く。
「そういうことじゃ」
肘をつき、こちらを見下ろすように言う。
「今の世では忘れられがちじゃがな。
“名を名乗る”ということが、どれほど重いかを」
その言葉に、場の空気がわずかに引き締まった。
――御三家。
それはただの家格や権力の話ではない。
“名”を預かり、
“役割”を背負い、
“代々、逃げることを許されなかった者たち”。
そんな意味が、ようやく見え始めてきた気がした。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
本作に登場するイラストは、自動生成AIによるものです。
物語そのものを補足する「正解のビジュアル」ではなく、
あくまでイメージや雰囲気を楽しむための要素として見て頂ければ幸いです。
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