一時の休息(画像あり)
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。
結局、あれからは一度きちんと調査を行う、という方針で解散となった。
憶測や曖昧な情報のまま推測を重ねれば、かえって混乱を招きかねない。
状況が整理でき次第、改めて連絡を入れる。
そう告げられ、俺たちはその場を後にした。
そのまま向かったのは、宿泊予定となっている京都のグランドホテル。
中へ足を踏み入れた瞬間、思わず息を呑んだ。
高い天井、バカでかいロビー。
磨き上げられた大理石の床に、豪華絢爛という言葉がそのまま当てはまる内装。
正直――落ち着かない。
「……金、かかってるな……」
思わず、率直な感想が口を突いて出た。
ここまでやる必要があるのか、俺には正直、理解できなかった。
「致し方ありませんわ。」
そう言って、イザベリアが静かに補足する。
「こちらは外交やビジネスの場としても使われる施設ですから。」
なるほど、と一応は納得する。
自分たちの権力・富・技術力・美意識――
要するに、“威信”を見せるための場所らしい。
もっとも、日ノ本の國においては、こうした豪華な施設は決して珍しいものではないらしい。
むしろ、本当に丁重にもてなす場合は――
「伝統ある高級旅館に招くのが、本来の形ですわね。」
そう言われて、ああ、なるほどな……と妙に腑に落ちた。
この街は、見せる顔と、隠す顔を、当たり前のように使い分ける。
京都とは、そういう場所なのだと、改めて実感した。
「はいはい、みなさ〜ん。」
風見先生が、軽く手を叩いて皆の注意を引いた。
「これから各自、割り振られた部屋に移動して、まずは荷物を置いてきてください。」
生徒たちがざわりと動き出した。
「その後、十二時に二十階の食堂へ集合です。」
先生は、指を立てて念を押した。
「時間厳守ですよ。遅れないようにしてくださいね。」
その言葉に、緊張していた空気が少しだけ緩んだ。
ざわざわと動き出した皆の様子を横目に、俺は手元の案内を確認した。
この建物は――地上五十階建て。
そして、俺たちに割り当てられていた部屋は。
「……三十階……?」
思わず、声が漏れる。
しかもVIPルーム。
一瞬、文字を見間違えたのかと思って、もう一度、しっかり確認する。
……間違いない。
「修学旅行、だよな……?」
誰に言うでもなく呟きながら、俺はゆっくりと視線を上げた。
この扱い、どう考えても“学生”のそれじゃない。
「閣下は男性ですから。致し方ありませんわ。」
イザベリアが、さも当然といった口調で言った。
周囲を見回してみると、他の男性陣も、どうやら三十階より上のフロアに割り振られているらしい。
「男性を保護・警護するとなると、最上階や低層階は避けるのが基本ですから。」
そう補足してくれる。
どうやら、二十五階以上は、すべてスイートやVIPルーム仕様。
エレベーターも通路も一般フロアとは分離され、外部からの侵入が難しい構造になっているらしい。
「逃げやすく、守りやすい配置、というわけですわね。」
さらに聞けば、俺たちの部屋の周囲には、警護担当者たちの部屋もまとめて配置されているとのこと。
つまり一フロア丸ごと、VIPエリア。
そこまで説明を聞いて、俺はしばらく黙り込んだあと、思わず本音を漏らした。
「……馬鹿じゃね?」
守られてるのは分かる。
分かるけど――
これ、修学旅行の扱いじゃねぇだろ。
俺の呟きは、虚しく廊下に溶けていった。
三十階に到着し、エレベーターを降りると、正面に伸びる通路の突き当たりが俺の部屋らしい。
そして、その左右に並ぶ客室が、クラスメートたちに割り振られているようだ。
部屋に入ると、まず目に入ったのは、落ち着いた色合いの内装。
豪華ではあるが、嫌味な派手さはなく、どこかシックで統一されている。
高級感はあるのに、妙に居心地がいい。
室内は広く、簡易的とはいえバーカウンターまで設置されていた。
「……修学旅行の部屋、だよな?」
窓際へ近づき、カーテンを開と、眼下には、京都の街並みが一望できた。
思わず、息が漏れた。
「失礼しますわ。」
その声と同時に、イザベリアたちがぞろぞろと中へ入ってくる。
「へぇ……」
「広いですわね……」
遠慮もなく室内を見て回り、棚を開け、カウンターを覗き、完全に物色モードだ。
一通り確認が終わったのか、それぞれ脇の部屋へ荷物を運び、やがてリビングのソファーに腰を下ろして寛ぎ始めた。
……馴染むの早ぇな。
「閣下のお部屋は、奥ですわ。」
イザベリアがそう言って、通路の奥にある扉を指さす。
なるほど。どうやら、一番奥が俺の寝室らしい。
「……ってか、なんでいるんだよ⁉」
思わず素の声が飛び出した。
状況が理解できず、俺は目の前の光景をもう一度見渡す。
――普通にいる。
普通にくつろいでる。
完全に“ここが定位置”みたいな顔で。
俺が呆然としていると、イザベリアが何でもないことのように答えた。
「私たちは、閣下の護衛ですわ。」
「……はい?」
「私と、鈴凛、ヴィヴィアン、それから――」
そう言って、イザベリアは何の前触れもなく指を差した。
「黒が担当ですわ。」
「……」
……。
……。
いたのかよ。
いつの間にか、部屋の隅に溶け込むように立っている“黒”。
存在感がなさすぎて、今まで完全に気づかなかった。
「……いやいやいや!護衛って、普通は別室とかだろ⁉」
俺が慌てて突っ込むと、イザベリアは首を傾げた。
「常に視界に入る距離での護衛が、一番安全ですわ。」
「無防備すぎるわ‼」
この部屋、俺のプライベートはどこへ行った。
そんな俺の心境などお構いなしに、ソファーでくつろいでいた鈴凛が、にこっと笑って言った。
「大丈夫だよ〜、もう“慣れてる”し!」
何にだよ……
学園では、寮生活だと割り切っていた。
部屋に引き籠るか、寝るだけで済ませていた。
その辺りの自由は、ちゃんとあった。
だから、あまり深く考えないようにしていたのだが……
……これは。
問題がありすぎる。
「手を出しても構わない」とは言われている。
だが、出す気になれないし、正直、出せるわけがない。
後が怖すぎる。
冗談じゃなく、一度でも変な前例を作ったら、何を突きつけられるか分かったもんじゃない。
既成事実?
そんなもん、命取りだ。
これはもう、変に誤解される前に、食われないよう細心の注意を払うしかない。
初日から難易度高すぎだろ。
俺は、自分の身の安全について、これまでで一番真剣に考えていた。
戦闘よりも、よっぽど神経を使う案件だ。
結局、部屋でのんびり落ち着く間もなく、気が付けば昼の時間になっていた。
俺たちは、そのまま二十階の食堂へ移動した。
……いや、食堂というより、完全にレストランだな。
フロアには複数のレストランが並び、各クラスごとに利用する店が割り振られている。
まぁ、ホテルに“食堂”なんてものがあるわけもないか。
割り振られた店の中に入り、指定された席へと案内された。
当然のように、メンバーは部屋と同じ顔ぶれだ。
席に着くと、メイド服姿の店員が、手際よく料理を運んでくる。
その瞬間――
鼻をくすぐる、はっきりとしたスパイスの香り。
……ああ。
確かに修学旅行の昼といえば、これだ。
これなんだが――
「違うだろうが!!」
思わず、叫ぶようにツッコんでしまった。
いや、ここまで来たらさ。
豪華なフルコースとか、ホテル特製のバイキングとか、そういう流れじゃないの?
「……なんで、カレーライスなんだよ。」
目の前に並べられたのは、どう見ても、どう嗅いでも――
カレーライス。
高級ホテル。
VIPフロア。
メイド服の給仕。
それで出てくるのが、カレー。
……ギャップが強すぎわ‼
修学旅行らしいと言えば、確かにらしい。
らしいんだが――
「ここまで来て、これかよ……」
俺はスプーンを手に取りながら、なんとも言えない気持ちで天を仰いだ。
「閣下が、何にそんなに驚き、愕然としているのかは分かりませんが……」
イザベリアは、呆れたように微笑みながら言った。
「ここのカレーは、有名なんですわよ。」
「……有名?」
首を傾げる俺に、イザベリアは当然のように続ける。
「ええ。ここのホテルのカレーは、世界的にも有名ですわ。
このカレーを目当てに、わざわざ宿泊せずに食事だけしに来る方もいるほど、人気がありますわ。」
俺は、改めて目の前の皿を見る。
……どう見ても、普通のカレーにしか見えない。
「それだけじゃありませんわ。」
イザベリアは、少し得意げに付け加えた。
「ここのシェフは、うちの学園の《Service》の元料理長で、奉仕科のOGだそうです。」
「……あ。」
その瞬間、妙に納得がいった。
ドラゴンの肉を、あそこまで美味く仕上げたあの料理長の……。
「あの人の先輩か……」
「ええ。料理の腕は、折り紙付きですわ。」
そう言われて、俺はスプーンを手に取った。
……世界的に有名。
学園《Service》の元料理長。
そこまで言われたら――
「……まぁ、食ってみるか。」
俺は、半信半疑のままカレーを口に運んだ。
――そして。
「……あ。」
さっきまでのツッコミは、喉の奥へと消えていった。
……なるほど。
これは、修学旅行の昼飯じゃねぇ。
完全に、“本気のカレー”だった。
――美味い。
いや、美味すぎる。
気が付けば、俺は無言のままスプーンを動かし続け、いつの間にか三皿目を空にしていた。
「……いやぁ~、食った食った。」
腹をさすりながら、ようやく一息つく。
さっきまで胸の奥に張り付いていた緊張感や、京都に対する嫌な予感――
そんなものは、どこかへ吹き飛んでいた。
周りを見渡すと、皆それぞれ楽しそうに食事をしている。
鈴凛は満足そうに笑い、ヴィヴィアンは珍しそうにスパイスの香りを楽しみ、
イザベリアは優雅に、しかししっかり完食していた。
ほんのひと時だが、今だけは――
ただの修学旅行みたいな時間が、確かに、そこにあった。
黒
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本作に登場するイラストは、自動生成AIによるものです。
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