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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第四章 京都百鬼夜行

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不穏な気配(画像あり)

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は違ったりもします。

俺たちは、京都駅前――

大階段前の広場に集合していた。


整然と並べられた生徒たちの前で、まずは学園の挨拶と、今後の予定が告げられた。


京都の一条家をはじめとする華族からの正式招待。

三日後に行われる百鬼夜行祭への参加。

そして、京都滞在中の注意事項――。


一通りの説明が終わると、今度は御剣 刹那様が壇上へと上がった。


その瞬間、空気が変わる。


「――傾注‼」


凛とした一声が、広場に響き渡った。


「気をつけ‼」


バッ、と。

学園の生徒たちが一斉に姿勢を正す。


「休め。」


再び、バッ、と揃った動き。


……相変わらず、すげぇな。

俺たち男性陣は、先生たちの後ろからその様子を眺めていた。


刹那様は、生徒たちを正面から見据え、淡々と告げる。


「学園側からの護衛依頼の総指揮を執り行う、御剣 刹那だ。」


静まり返る広場。


「此度、京都の一条家をはじめ、各華族からの要請を受け、我々は京都の百鬼夜行祭に参加することとなった。」


そこで、わずかに間を置き――

刹那様は、はっきりと言い切った。


「しかし、学園側には悪いが。修学旅行という学園行事は、今回中止とする。」


その瞬間、学園の先生たちから一斉に声が上がった。


「お待ちください!」

「それでは本来の目的が――」


だが、刹那様は一歩も引かない。


「先生方の言い分は理解している。だが、これは決定事項だ。

 そして――命令でもある。」


きっぱりとした断言。


「この件に関する補填は、皇家および御三家が責任を持って行うと通達を受けている。」


そこまで言われ、先生たちは苦虫を噛み潰したような表情で口を閉ざした。


当然――

納得していないのは、先生たちだけではない。


生徒たちの間に、ざわざわとした空気が広がる。


そのとき。


「――静粛に。」


壇上の横に控えていた薫が、パン、パンと手を叩いて声を張った。


一瞬で、場が静まる。


刹那様は、その様子を見届けてから――

深く、深く頭を下げた。


「……こちらの勝手な裁量で、一番の被害者は君たちだ。」


その姿に、生徒たちのざわめきが完全に消える。


「本当に、申し訳ない。」


刹那様はしばらく頭を下げ続け、やがて顔を上げ、全体を見回した。


「これより皆には、男性を守る団体護衛演習へと行動を変更してもらう。」


ざわり、と空気が動く。


「見ての通り、今の京都には、全国から多数の人が集まっている。ゆえに――」


刹那様の声が、はっきりと響く。


「各クラスごとに割り当てられた男性を、クラス一丸となって護衛に当たってほしい。」


「最小限のグループ行動、および単独行動は原則禁止とする。」


「クラス単位での団体行動を徹底せよ。」


再び、刹那様は頭を下げた。


「――協力を、頼む。」


「返事は!!」


横に控えていた薫が叫ぶ。


「「「ハイ!!」」」


生徒たちの声が、広場に響き渡った。


「出来る限り、お前たちの意図を汲めるよう努力はする……」


刹那様は、少しだけ表情を緩めた。


「……すまないな……話は以上だ。詳細は、追って通達する。」


――こうして。


俺たちの修学旅行は、

正式に“演習”へと姿を変えた。




各クラスごとに輪ができ、ざわざわと話し合いが始まった、その最中だった。


「――済まないが。」


不意に、よく通る声が広場に響いた。


「獅子堂グループ。少し、こちらへ来てくれないか?」


声の主は――

御剣 刹那様だった。


一瞬、周囲の視線がこちらに集まる。


「……え?」


思わず間の抜けた声が出る。


俺は反射的に風見先生の方を見ると、先生も同じように首を傾げていた。


「……心当たり、ある?」


小声で聞いてみるが、


「……全くありません。」


風見先生も、困惑した表情で首を横に振る。


嫌な予感しかしない。


「と、とりあえず行くか……」


俺はそう言って、クラスの面々に目配せしながら、そのまま全員を引き連れて歩き出した。


ざわめきの中を抜け、刹那様の待つ場所へ向かた。

刹那様のもとへ辿り着いた俺たちだったが、刹那様は相変わらず忙しそうに指揮を執っていた。


「少し待っていてくれ。」


そう言われ、俺たちはその場で暫し待機することになった。


的確に指示を飛ばし、周囲の護衛や関係者が散っていく。

やがて一段落ついたのか、刹那様は小さく息を吐き、こちらへと歩み寄ってきた。


「……すまなかったな。」


そう言ってから、改めて俺たちの人数を見渡し――


「しかし……また、えらく大人数で来たものだな……」


思わず、といった様子で呟いた。


「団体行動で、というご指示でしたので。」


即座に返したのは、風見先生だった。

少し棘のある言い方だ。


「あ……いや……そうだったな。」


刹那様は一瞬言葉に詰まり、「今さら例外を作るわけにもいかないか……」

と、苦笑を浮かべた。


「お邪魔でしたら、席を外しますが?」


風見先生は、相変わらず機嫌が悪そうだ。

――まあ、それも無理はない。

楽しみにしていた修学旅行を中止され、護衛演習に切り替えられたのだから。


「いや、大丈夫だ。」


刹那様は軽く手を振った。


「少し、聞きたいことがあっただけだからな。」


そう言って、刹那様は俺たち一人一人を見回し――

やがて、ある人物で視線を止めた。


「……確か、君だったかな。ヴィヴィアン・パルドナーラ。」


名を呼ばれ、ヴィヴィアンは「はい」と短く返事をし、一歩前へ出た。


「君は、ブデザム教国のシャーマン。――シヴァ様の巫女だったな?」


「はい。ご存じでしたか。」


「一応な。」


刹那様は軽く頷く。


「重要人物には、目を光らせている。」


そう言って、わずかに頬を緩めた。


「……それで、私に何か御用でしょうか?」


ヴィヴィアンは、表情を引き締めて問い返した。


「別に、とって食おうという話じゃない。」


刹那様はすぐに首を振った。


「君の力を、少し借りたいだけだ。」


そう言って、どこか申し訳なさそうに苦笑した。


「君たちシャーマンや巫女は、霊的地場や力の流れ、歪みが“視える”と聞いている。」


刹那様の声が、低く落ち着いたものになる。


「そこで聞かせてほしい。

 ――今の京都の街が、君の眼にどう視えているのかを。」


一瞬、周囲の空気が張り詰めた。


「一条家からは、霊的地場が淀み、浄化が追いついていないとは報告を受けている。だが、それが――」


刹那様は、静かに言葉を区切った。


「街全体で、どの程度の規模なのか。どこまで影響が広がっているのか。

 私は、それを正確に把握しておきたい。」


刹那様の視線が、真っ直ぐにヴィヴィアンを捉えていた。


「補足します。」


刹那様の横から、一歩前に出てきたのは薫だった。

先ほどまでの柔らかな雰囲気は消え、今は完全に副指揮官の顔をしている。


「現在、京都市内では大小さまざまなトラブルが多発しています。」


薫は手元の端末に視線を落としながら、淡々と続けた。


「幸い、現時点で死者や重傷者は確認されていません。ですが――」


そこで一度、言葉を区切った。


「ボヤ騒ぎ、器物損壊、盗難事件が、通常時と比べて明らかに増加しています。」


周囲の空気が、じわりと重くなる。


「中には人為的な事件と思われるものもありますが……

 それとは別に、説明のつかない事例も多数報告されています。」


薫は画面を操作し、簡潔に列挙した。


「突然、物が消えた。理由もなく火が着いた。触れていないのに物が壊れた。」


どれも決定打には欠ける。

だが――


「一件一件は小さくても、発生頻度と分布を考えると、偶然とは考えにくい状況です。」


そう締めくくり、薫は顔を上げた。


「……以上が、現時点で把握している京都の状況です。」


沈黙が落ちる。


大きな事件は起きていない。

だが、何かが確実に“滲み出してきている”。

そんな感覚が、全員の胸に共有されていた。


刹那様は腕を組み、低く唸る。


「やはり……表に出る前段階、というわけか。」


その視線が、再びヴィヴィアンへと向けられた。


「だからこそ、君の“眼”が必要なんだ。」


ヴィヴィアンは、こくりと小さく頷いた。


そして、真剣な表情のまま、ゆっくりと顔を上げる。


その瞬間――

彼女の瞳が、ほんのわずかに淡く光った。


「…………」


ヴィヴィアンは、京都駅周辺を静かに見回す。


「……凄いですね……」


思わず、吐息のような声が零れた。


「霊力が……溢れかえっています……大小の精霊も、こんなに……」


彼女の視線が、空を、建物を、人の流れをなぞっていく。


「凄い……綺麗……」


その言葉とは裏腹に、次の瞬間――

彼女の表情が、はっきりと歪んだ。


「……っ」


視線が、駅の外――

街の方へ向いた瞬間だった。


「……外は……瘴気……?」


声が、わずかに震える。


「……淀んだような……濁った霊力で……溢れています……いえ……これは……流れている……?」


ヴィヴィアンは、困惑したように首を傾げる。


「精霊も……沢山います……でも……苦しそう……」


さらに、言葉を選ぶように続けた。


「それに……見たことのない精霊が……沢山……」


そう言って、ヴィヴィアンは静かに目を閉じた。


しばしの沈黙。


「……ありがとう。パルドナーラ嬢。」


刹那様は目を閉じ、腕を組んだまま、思案するように低く唸った。


「夢……幻界……あるいは、それに類する領域が、現世に干渉してきている……?」


数秒後…


「……ああ、駄目だ。」


と小さく首を振った。


「済まない。私はこの分野は専門外だ。」


刹那様は、改めてヴィヴィアンを見据えた。


「よければ、パラドナーラ嬢の見解を聞かせてほしい。

 この京都という街が、今、どういう状態にあると感じた?」


ヴィヴィアンは少し考え、言葉を選びながら答えた。


「……京都の街が、本来どういう“在り方”なのかは、正直、分かりません。」


そう前置きしてから、彼女は手元に広げられた地図を指差した。


「ただ……北側から……こう……」


地図の北、市内方面から、指を真っ直ぐ下へ滑らせる。


「……淀んだ魔力が、流れ込んできているように感じます。

 流動的に……常に、動いている……そんな感覚です。」


「それは……異常なのか?」


刹那様の問いに、ヴィヴィアンは小さく首を振った。


「……断定は、出来ません。」


だが、すぐに補足する。


「本来、淀んだ魔力や霊力は、その場に留まり、濁り、蓄積されます。

 それが、霊的現象を引き起こし、ダンジョンが生まれる要因だとも言われています。」


一同が息を詰める。


「ですが……」


ヴィヴィアンは、わずかに眉を寄せた。


「それが“流れる”“動いている”となると……考えられるのは二つです。

 誰かが――

 意図的に動かしているか。

 もしくは――

 どこかから、溢れ出している。」


重い沈黙。


「……まさか……スタンピードか!?」


誰かが、思わず声を上げた。


ヴィヴィアンは、ゆっくりと首を振る。


「……分かりません。」


その一言が、かえって場の空気を重くした。


確かなのは一つだけ。

京都は、既に“何かに触れられている”。

しかもそれは、まだ表に出ていないだけで、確実に“動いている”。




ヴィヴィアン・パルドナーラ

挿絵(By みてみん)


ここまで読んで頂き、ありがとうございます。


本作に登場するイラストは、自動生成AIによるものです。

物語そのものを補足する「正解のビジュアル」ではなく、

あくまでイメージや雰囲気を楽しむための要素として見て頂ければ幸いです。


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