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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第四章 京都百鬼夜行

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京都駅(画像あり)

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

列車内でしばらく雑談をしているうちに、魔導列車は静かに減速し、やがて京都駅へと滑り込んだ。


扉が開いた瞬間、どっと人の気配が押し寄せてくる。


ホームも改札も、人、人、人。

行き交う声、足音、荷物の擦れる音が重なり合い、京都駅はまるで生き物のようにざわめいていた。


俺たちが乗ってきた魔導列車からも、次々と乗客が降りていく。

修学旅行生、関係者、一般客――

その数に、思わず目を見張る。


「……すげーな……」


思わず、声が漏れた。


前世では当たり前だった通勤ラッシュの光景。

だが、転生してからは――

こんな“人の密度”を見ることなんて、ほとんどなかった。


人が多い。

それだけで、少し息苦しくて、同時にどこか懐かしい。


そんなことを考えながら、きょろきょろと周囲を見回していると、


「皆さん、こちらですよ〜!」


人混みの奥から、聞き慣れた声が響いてきた。


顔を向けると、手を振りながらこちらを呼んでいるのは――風見先生だ。


「いたいた……」


俺たちは人の流れに押されながら、先生のもとへ向かって歩き出した。


「よう、先生。久しぶりだな。」


俺が軽く手を挙げて挨拶すると、風見先生は一瞬きょとんとした顔をしたあと、額に青筋を浮かべた。


「久しぶりじゃありません!!毎日、クラスで授業をやってます!!」


思った以上の勢いで返され、思わず肩がびくっと跳ねる。


「獅子堂君はですね!」


風見先生はそのまま、指を突きつけるようにして続けた。


「もう少し真面目に授業を受けてください!!

 授業が退屈なのは分かりますが、ふて寝したり、堂々とサボったりしないで下さい!!」


周囲の生徒たちの視線が、痛い。

完全に公開説教コースだ。


「……いや……だってさ……」


俺は“やべぇ”と思いながら、頭をかきつつ言い訳を絞り出した。


「今さら基礎講習なんて、正直退屈なだけじゃねぇかよ〜……」


――その瞬間。

風見先生の表情が、すっと真顔になった。


(あ、これ……踏み抜いたな。)


「獅・子・堂・君?」


名前を一音ずつ区切って呼ばれた時点で、完全にアウトだ。


「基礎があるから応用があるんです!!

 あなたのように“分かっているつもり”で聞き流す生徒が、一番危ないんですよ!!」


「……すみません……」


俺は視線を逸らしながら、素直に謝った。

どうやら、思いっきり先生の地雷を踏み抜いたらしい。


イザベリアは少し離れたところで苦笑し。

沙耶は「ご愁傷様です……」と小声で呟き。

御剣は状況が分からず首を傾げていた。


「ハハハ。公衆の面前で公開説教とは――なかなか噂に違えない男だな、君は。」


不意に、凛とした声が割って入った。


カラン――カラン。


下駄の乾いた足音を響かせながら、人混みを割るように、一人の女性がこちらへ歩いてくる。


艶やかな黒髪が腰の辺りまで真っ直ぐに伸び、身に纏うのは、白地に豪奢な刺繍が施された振り袖着物。

その上からでもはっきり分かる、はち切れそうなほどの豊かな胸元。


そして何より目を引いたのは――

腰に差された、異様に長い大太刀だった。


ただの着飾った女性じゃない。

一目でそう分かる“気配”がある。



挿絵(By みてみん)



「……?」


俺が言葉を失っていると、彼女は楽しそうに口元を緩めて言った。


「初めまして、だな。私は御剣みつるぎ 刹那せつな

 ――そこの葵の姉だ。」


一瞬、空気が変わった。


御剣。

しかも“姉”。


俺は反射的に背筋を正し、差し出された手をしっかりと取って握手を交わした。


「初めまして、刹那様。獅子堂健二です。」


「ふふ……随分と律儀だな。」


刹那は愉快そうに笑い、握った手を軽く離した。


その横で、御剣はというと、


「……姉様……」


と、少し気まずそうに視線を逸らしていた。


どうやら――

京都に着いて早々、とんでもない人物と出会ってしまったらしい。


御剣 刹那。

御剣家の次期当主。


神速の居合の使い手であり、縮地と組み合わせた高速居合は、

斬られた者ですら、自分が斬られたことに気づかないと言われている。


斬撃の瞬間ではなく、納刀の際に鳴る音で初めて異変に気づく――

その異名は、『音斬り』。


紛れもない化け物だ。


そして――

俺との相性は、最悪である。


「しかし、サボりはいかんぞ。」


刹那は腕を組み、諭すように言った。


「ギルドの情報は、すぐに変わる。

 私たちのような上位ランクになってくると、どうしても基礎や座学を軽視しがちだからな。」


意外なほど真面目な口調だった。


「それに――」


刹那は少しだけ目を細め。


「学生気分を楽しめるのも、今のうちだぞ。」


そう言って、にこっと笑った。


……この人、顔だけ見れば普通に美人なんだよな。


「じゃあ、刹那様も勉学に励まれるんですか?」


俺は軽く皮肉を混ぜて聞いてみた。


「いや。」


即答だった。


「遠慮する。」


「即答かよ!」


「必要な情報や変わった動きがあれば、ギルド職員に聞けば済むからな。」


「あー……ですよね〜。」


俺たちは一瞬だけ視線を合わせ、

次の瞬間――


「「アーハハハハハ!」」


揃って大笑いした。

完全に同類の笑いだ。


その様子を横で見ていた風見先生が、こめかみを押さえながら、ぷるぷると震え出した。


「……貴方たち……」


次の瞬間。


「貴方たちわぁぁぁぁぁぁ!!」


京都駅構内に、先生の絶叫が響き渡った。


……あぁ、また怒られるな、これ。


それから――

俺たちは、風見先生にしっかりとガミガミ説教された。


いや、正確には俺と刹那様が中心で、だ。


……というか、風見先生すげぇな。

御剣家の次期当主様に、真正面から説教する一般教師って何者だよ。


ともあれ。

一通りの説教が終わり、場の空気がようやく落ち着いたところで、刹那様が一歩前に出た。


「改めて名乗ろう。」


さっきまでの軽口は影を潜め、背筋を伸ばした刹那様は、まるで別人のように凛とした佇まいになった。


「私は、御剣家次期当主――御剣刹那だ。

 今回の学園行事における護衛の総指揮を任されている。」


その声はよく通り、ざわついていた周囲が一瞬で静まった。


「各国から来賓も多い。不測の事態も想定されるが――皆、協力を頼む。」


短く、それでいて重みのある挨拶だ。


……さっきまで俺と一緒に笑ってた人と、同一人物とは思えねぇ。


「それと――おい。」


刹那様は、少し奥の方で何やら打ち合わせをしていた女性に声を掛けた。


「出てこい。」


呼ばれた女性がこちらに歩いてくる。

どこかで見たことがあるような……いや、ある。


顔をはっきり認識した瞬間、俺は思わず心の中で叫んだ。


うげっ。


「私のサポート、そして副指揮を担当してもらう。――神崎薫だ。」


「初めまして皆様。」


薫は一歩前に出て、丁寧に頭を下げた。


「今回、副指揮官を務めさせていただきます。神崎薫と申します。よろしくお願いいたします。」


……いや、なんでいるんだよ。


俺が完全に「なんで?」って顔をしていたのだろう。

刹那様が、それを見逃すはずもなく、ニヤニヤしながら近寄ってくる。


「不思議そうな顔だな?」


そして、悪戯っぽく続けた。


「ギルド本部でな。落ち込んでる薫を見つけたんだ。

 『主様に置いて行かれた……』って、ふてくされててな。」


「ちょ、ちょっと刹ちゃん……!」


薫は慌てて止めに入るが、刹那様は気にせず続ける。


「だから、無理やり引っ張って来た。」


「もう……!」


薫は顔を赤くしながら、あわあわしている。


……なるほど。

どうやらこの修学旅行、思ってた以上に、厄介な面子が揃ってしまったらしい。


「しかし、薫を見つけた時は驚いたぞ。」


刹那様は腕を組み、愉快そうに俺を見た。


「コイツとは同期だからな。戦闘面は、正直言って――ポンコツだった。」


「ちょっ……!」


「それがだ。」


刹那様は、にやにやと口元を歪める。


「男を知ると、こうも変わるのか?」


完全に俺を見て言っている。


「……私も男を知れば、変われるのか?」


今度は、にやにやした視線が薫へ向いた。


「……刹ちゃん!?」


薫が慌てるのを見て、刹那様は満足そうに頷いたあと、さらっと続けた。


「――とはいえ、私は駄目だぞ。獅子堂君。」


「は?」


「私の身体は、葵のものだからな。」


そう言って、刹那様はいきなり葵を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。


「刹那姉様……」


葵は抵抗するでもなく、どこか諦めきった表情を浮かべている。


……いや、

聞いてないし。


俺がぽつりと小言を漏らすと、刹那様はすぐさま反応した。


「ん?私の身体に興味はないのか?」


刹那様は、悪びれもせず胸を張る。


「女としては一級品だと自負しているし、母体としても、最高だと思うがな?」


「……いや……知らねぇ〜よ……」


興味がないわけじゃない。

むしろ、最高だと思う。

だが、口が裂けても言えるか。


すると、聞いてもいないのに横から声が入った。


「ちなみに――」


沙耶が、真顔で言う。


「私の身体も、葵様のものです。」


「いや、だから聞いてねぇ!」


だが、もう止まらない。


「閣下でしたら、私の身体を好きにしていただいて構いませんわ。」


イザベリアが、優雅に微笑みながら言ったのを皮切りに、


「私も大丈夫だよ〜!」


鈴凛が軽く手を挙げる


ヴィヴィアンは、「ええ……」と何度も頷いている。


おい、なんで全員乗ってくる。


そして、極めつけ。


「ち、ちなみに……せ、先生も……だ、大丈夫ですよ……」


風見先生が、顔を真っ赤にしながら、おずおずと手を挙げていた。


その瞬間、俺は腹の底から叫んだ。


「知るかァァァァァァァァァ‼」


京都駅構内に、俺の魂の叫びが虚しく響き渡った。


……修学旅行、初日からこれである。



ここまで読んで頂き、ありがとうございます。


本作に登場するイラストは、自動生成AIによるものです。

物語そのものを補足する「正解のビジュアル」ではなく、

あくまでイメージや雰囲気を楽しむための要素として見て頂ければ幸いです。


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