魔導列車
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。
結局あれから何事もなく、気づけば、修学旅行当日を迎えていた。
集合場所は、学園の敷地内にある魔導列車の駅。
普段はほとんど使われない、半ば“飾り”のような施設だ。
こういう大人数の長距離移動では、これが一番安全で効率がいいらしい。
プラットホームに足を踏み入れた瞬間、独特の“魔力”と、金属の冷たい匂いが混ざったような空気が広がっていた。
線路の先には、ごつい鉄塊のような黒い機関車が鎮座していた。
見た目は、昔のSL"蒸気機関車”そのもの。
ただし、その心臓部は“魔力炉”。
車体の側面には青白い魔力紋が走り、
ぼうっと淡く光っている。
「……これが、魔導列車か。」
俺は思わずつぶやいた。
黒野が隣で小さく笑う。
「一般には使われないからな。珍しいだろ。」
「そりゃあ珍しいけどよ……もっとこう、近未来の乗り物って感じかと思ってた。」
「見た目に騙されるなよ。魔導列車は、“新幹線の線路”を改修して走る設計だ。
線路は昔のまま使うから、機体が無駄にでかくはできねぇんだ。」
「へぇ……そういう理由だったのか。」
イザベリアが旅行鞄を抱えながら説明を引き継ぐ。
「魔力炉は大変便利ですが……その分、魔石の消費も激しいのですわ。
大人数を乗せて長距離移動する時以外は、採算が合わないのですわ。」
「つまり“燃費が悪い”ってことだな。」
視線を前に戻すと、魔導列車の煙突からは黒煙ではなく、青白い霧がふわりと溢れ出していた。
蒸気と魔力の混合物。
どこか神秘的だ。
「……にしても、俺が乗るのは初めてだな。」
思わず胸がわずかに高鳴る。
御剣は大きな瞳で列車を見つめ、「わぁ……本物の魔導列車……」と感嘆の息を漏らしていた。
沙耶はその肩を軽く押さえながら微笑む。
「騒ぎ過ぎないで下さいね、葵様。転びますから。」
列車の足元で魔力結界が振動するのが、かすかに感じられた。
――いよいよ、出発だ。
普通の修学旅行のはずが、どうせ“普通”では終わらないだろうな……
そんな予感を胸の片隅に抱えながら、俺はゆっくりと列車へ歩み出した。
「んじゃ〜な獅子堂。気をつけて行ってこいよ。」
黒野は、ホームに残って片手をひらひら振っていた。
「は? お前は来ないのかよ?」
俺が思わず聞き返すと、黒野はポケットから煙草を取り出し、火をつけながら言った。
「あぁ〜……ちょっとこっちでやる事があってな。」
煙がふわりと揺れる。
俺はあっけに取られて立ち尽くした。
「やる事って……おい、何だよそれ。」
だが黒野は、俺の疑問など聞こえないかのように続けた。
「獅子堂。あまり向こうで無茶すんなよ。イザベリア様、こいつらを頼みます。」
そう言って、深々と頭を下げた。
「お、おまっ……ちょ……」
俺が戸惑って言葉を詰まらせていると、黒野はニヤリと笑った。
「なぁに。何もなけりゃ二、三日で合流できるさ。」
満面の笑み――
完全に、逃げる気満々の笑みだ。
その瞬間。
ピィィィィィィィィィ!
けたたましい笛の音がホームに鳴り響き、魔導列車の扉が閉まり始めた。
「じゃ〜なー!」
黒野は手を振り続けていた。
じゃ〜な、じゃねぇ!!!
扉が完全に閉まり、視界から黒野が消えた直後――
「――逃げやがったなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
魔導列車の車内に、俺の叫び声が盛大に響き渡った。
イザベリアが額に手を当て。
沙耶が肩を震わせて笑いをこらえ。
御剣はぽかんと口を開けていた。
列車はごぉぉぉ……と低い音を響かせ、ゆっくりと動き出した。
こうして、黒野に見事に押し付けられた形で、俺たちの“厄介すぎる修学旅行”が始まったのだった。
魔導列車の車内に足を踏み入れた瞬間、俺は思わず硬直した。
「……馬鹿かよ……広っ……」
ひとつの車両が**丸ごと“室内空間”**になっていた。
床はふかふかのカーペット。
壁は魔力灯の柔らかな明かりで照らされ、中央にはホテルのラウンジのようなソファーセットが置かれている。
さらに奥を見ると――バーカウンターがあり、棚には多種多様な酒瓶とジュースがずらりと並んでいる。
横にはコンロと小型オーブンまで揃った簡易キッチンまであった。
極めつけは、部屋の奥にどんと鎮座しているクイーンサイズのベッド。
「……ホテルかよ。」
呆れの声が自然と漏れた。
俺たちが荷物を持ったまま立ち尽くしていると、ソファでくつろいでいた鈴凛が気づいて、ぱっと顔を輝かせた。
「獅子堂様! すごいですよね〜! ここ、VIP席ですよ!」
鈴凛はスナック菓子をつまみながら満面の笑み。
隣ではヴィヴィアンが優雅にお茶を飲んでいた。
今回のメンバーは、俺、イザベリア、鈴凛、ヴィヴィアン、アリア、御剣。
そして御剣の護衛として御影沙耶。
……本来なら黒野と、その付きのクリスティーナもいるはずだった。
“本来なら、な。”
ちなみに、俺は護衛を断った。
最初は薫が来る予定だったが、他の護衛がいるから大丈夫だと断った。
俺達の他にも、他の男子や学生の為に、幾つかの上級冒険者が準備されている。
俺は室内を見渡しながら、二人の姿がないことを確認すると、鈴凛に聞いた。
「アリアとクリスティーナは?」
鈴凛は「ああ、そのことですか」と頷いた。
「アリアは、二週間くらい前から国のお仕事とかで休学してますよ。学園にも顔を出してないんです。」
「あぁ……やっぱり……」
最近見かけなかったのは気になっていたが――
まさか本当に“国の用事”なのかどうか……。
横目でイザベリアを見ると、イザベリアも静かに頷いた。
(……多分、同じこと考えてるな。)
続いて、ヴィヴィアンが補足してくれた。
「クリスティーナ様は……『黒野様が来られないのでクラスに戻ります』とおっしゃって、
今朝のうちに自分のクラスへ戻られました。」
「あの逃亡者め……」
俺が苦々しく呟くと、イザベリアが少しだけ肩を揺らして笑った。
俺は深々とため息を吐き、手に持っていた荷物をソファ脇へ置いた。
気を取り直すように肩を軽く回し、「飲み物でも取ってくるか……」
と呟いてカウンターへ向かった。
ラウンジの中央を横切ると、魔力灯の柔らかな光が、足下のカーペットを淡い金色に照らしていた。
静かで落ち着いた空気……いや、落ち着いているのは“空気だけ”だ。
心は全然落ち着かねぇ。
カウンターに近づくと、棚には透明度の高い魔力ウォーター、蒸留酒、果実酒、ジュース。
さらには見慣れない蛍光色の瓶までずらりと並んでいた。
「何だよこれ……」
思わずぼやきながら、とりあえず無難な炭酸水の瓶を手に取る。
すると、カウンターの奥からひょこっと顔を出したのは、鈴凛だった。
「獅子堂様〜、何飲むんです? 私、さっき全部ラベルチェックしたんですよ〜!」
「お前、どんだけ暇なんだよ……」
「だって気になるじゃないですか〜。
このキラキラしたの、“魔力ドリンク(強)”って書いてありますよ。
飲んだら絶対目が冴えます!」
「それ絶対、寝れなくなるやつだろ……」
鈴凛のテンションに押されながらも、俺はグラスに炭酸水を注いで、ひと息ついた。
「なぁ、京都の百鬼夜行祭って……結局、何をするんですか?」
魔導列車のラウンジでくつろいでいた鈴凛が、ふと俺に問いかけてきた。
「妖怪の格好に仮装して、京の街を練り歩くんだよ。簡単に言えば、コスプレパレードだな。」
俺がそう答えると、鈴凛は目を丸くして驚いてみせた。
「へぇ〜、京都の華族様って、すごいんですねぇ〜。」
「……何がだよ?」
いまいち意図が掴めずにそう聞き返すと、鈴凛は相変わらず“猫を被ったような”調子で言葉を続けた。
「今回の修学旅行の旅費や、魔導列車の手配なんかは、全部——京都の華族様持ちなんですよ?」
「マジでか……」
思わずグラスの中の炭酸水を見つめた。
どうりでやたらと豪華なわけだ。
魔導列車も、宿泊予定のホテルも……桁違いに金がかかってる。
普通の学園行事じゃ到底無理だと思ってたが、そういうことか。
「京都の“百鬼夜行祭”に合わせて、全国から人を集めたいっていう意図があるらしいですよ」
「へぇ……」
俺はソファに腰を下ろしながら小さく頷いた。
表向きは“学園行事”でも、裏には何かしら別の意図がある。
そんなことは最初から分かっていた。
けど、それがここまで大規模とはな……
鈴凛は俺の反応に満足したのか、再びスナック菓子をつまみながら、楽しげに足を揺らしていた。
それにしても……どうもこいつ、俺と話す時だけ丁寧というか、芝居がかった口調になるんだよな。
普段の鈴凛を知ってるだけに、何とも居心地が悪い。
「お前、普通に喋れよ。なんで俺の前だと“それっぽい”感じになるんだ。」
俺がぼやくと、鈴凛は一瞬だけ言葉に詰まったあと、笑ってごまかした。
「だってぇ〜……そのほうが、いいでしょ?獅子堂様的に。」
「俺がかよ……」
言葉を飲み込みながら、俺は天井を見上げ呆れた。
どいつもこいつも、俺の為だとか言って取り繕いやがって……
俺はため息をついて、グラスの中身を一気に飲み干した。
鈴凛とのやり取りが一段落したところで、静かにお茶を飲んでいたヴィヴィアンがふと窓の外を見つめながら呟いた。
「京都全体でのお祭り……楽しみです。」
その声音には、ほんのりとした期待と緊張が混じっていた。
「……そうだな。たしか、京都中が“百鬼夜行”の舞台になるんだったな。」
俺が応じると、沙耶が補足するように言葉を続ける。
「仮装だけでなく、各地の神社や寺院でも儀式や舞が奉納されるようです。しかも……今年は“特別な年”だとか。」
「特別?」
俺が聞き返すと、沙耶は少し間を置いてから答えた。
「ええ。百年に一度の“巡り年”。星の運行と神域の力が重なる“祭祀の年”だそうです。御霊と妖が交差する、特異な時期……」
「……そりゃまた、タイミング良すぎるな。」
肩をすくめると、御剣が小さく笑って言った。
「でも、ちょっと楽しみ。お祭り、行ったことないから。」
「……あー、そういえば。」
確かに、御剣の育った環境を考えれば、“普通の祭り”なんて縁がなかったはずだ。
警備、結界、制限。
何もかもが“保護”の名のもとに制約されていた。
そんな彼にとっては、街に出て仮装して練り歩くなんて、まるで夢のような話だろう。
「無理に我慢するなよ。せっかくの修学旅行なんだし、ちゃんと楽しめよ。」
俺の言葉に、御剣は目を瞬かせ、それからふっと笑った。
「うん!」
気づけば、列車はもう本格的に加速していた。
窓の外に流れる景色が、次第に山あいから古都の風景へと変わっていく。
この先に、何が待ち受けているのか。
――平穏か、混沌か。
俺たちの“修学旅行”は、確かに始まっていた。
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