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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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ドラゴンステーキ

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

俺は深く背もたれに沈み込み、両腕を投げ出した。


「……結局さ、百鬼夜行だの聖剣だの、難しい話はわかんねぇ~な。」


黒野は煙草を指でつまみ、火をもみ消しながら言った。


「まぁ、俺らから言えるのは一つだけだ。安易に華族や聖剣に関わるな、ってことだ。」


イザベリアも頷き、カップを唇に運んだ。


「えぇ。閣下や、御剣様が聖剣を受け取らなければ良いだけのことですわ。」


「百鬼夜行祭ねぇ……なんか、きなくせぇし、行きたくねぇ~なぁ~……」


俺がぼやくと、黒野は短く笑い、低く呟いた。


「……何かは、あるだろうな。」


俺と黒野は同時に、大きくため息を吐いた。


「「はぁ~~~~……」」


コーヒーの香りと、消えかけの煙草の匂いだけが、妙に静かな空気を満たしていた。


しばらく談笑していると、店の奥から明るい声が響いた。


「お待たせしました~!」


テーブルに近づいてきた店員は、大きな鉄板プレートを慎重に運びながら笑顔で告げた。


「ご注文の――ドラゴンステーキです!」


どん、と置かれた瞬間、香りが一気に弾けた。


ドラゴン特有の濃厚な肉の匂いに、鉄板の上で焼ける香ばしい香り。

そして仕上げに振られたスパイスの刺激が混じり合い、まるで鼻腔を鷲掴みにするように押し寄せてくる。


分厚く切り出された肉塊は、表面がこんがりと焼けているのに、中心部はじわりと赤みが残り、

鉄板の上で「ジュゥゥゥーーッ」と音を立てていた。


じっ、と肉汁が弾ける度に、油の小さな飛沫が光を反射する。


――ゴクリ。


誰かの喉が鳴った。

いや、誰かじゃない。

全員だ。


イザベリアは思わず背筋を伸ばし。

御剣は目を輝かせ。

黒野でさえ、煙草を置いたまま固まっていた。


「……うまそうだな……」


俺が呟くと、全員がこくこくと無言で頷いた。


黒野がナイフを手に取り、じっくりとドラゴン肉を切り分けた。

分厚い肉が、抵抗感を残しながらスッ……と刃を通した。


「……ほう。想像より柔らかいな。」


黒野が感心したように呟く。


イザベリアもフォークで肉を押し、弾力のある肉の反発に、ぱちりと瞳を瞬かせた。


「見た目より繊細な質感ですわね。まるで高級肉のようですわ。」


一方、御剣は肉の切り口から溢れ出す肉汁に目を奪われていた。


「すご……じわじわ出てくる!」


俺はフォークを突き刺しながら言った。


「ドラゴンの素材は希少価値がどうとか言われるけどよ……結局、旨いかどうかなんだよな。」


噛んだ瞬間――

じわりと濃厚な旨味が染み出し、香りが一気に広がる。


「……うまっ。」


思わず声が漏れた。


黒野も軽く眉を上げ、短く言った。


「まぁ……これなら高級肉より評価が高くても当然だな。」


イザベリアは上品に口元へ運びながら、どこか感嘆するように微笑んだ。


「やはり、料理人の腕ですわね。ドラゴン肉は、焼き方や処理で天地ほど差が出ると聞きましたわ。」


御剣は無言のまま、もはや目を輝かせてひたすら口へ運んでいる。


黒野が笑った。


「希少価値なんかより……結局は料理次第ってことか。」


俺はナイフを動かしながら言った。


「だよな。自分で焼いた時なんて、高級肉と大差なかったしな。やっぱ料理人に頼むのが一番だ。」


鉄板の上ではまだジュウッ……と音を立て、

香ばしい湯気がゆらゆらと立ち込めていた。


この店――《Service》の料理長は、学園の奉仕部の部長でもある。

そして何より、腕は折り紙つきだ。


王侯貴族の舌を唸らせたとか、どこかの国の王様にスカウトされたとか、

色んな噂が飛び交うほどの一流料理人だった。


だからこそ、俺たちは迷わずドラゴン肉を持ち込み、調理を依頼した。


報酬として希少部位も渡したが――

それを聞いた瞬間の料理長の反応は、ある意味ドラゴン以上に衝撃だった。


「――ドラゴンの肉ぅぅぅぅぅッ!?」


皿を落としそうになりながら絶叫し、両手を天に掲げてくるくる回り出した。


「クハァァァァーーッ! なんという恵みッ!

 任せろ! 任せてくれッ! この命、この腕、全てを賭けて調理しようッ!」


完全に舞台役者のテンションである。


イザベリアは苦笑し。

御剣は「すごいっ……!」と拍手。

黒野は「また始まったな……」と額を押さえた。


こうして、料理長は歓喜の舞いを踊りながら、

快く――というより、狂喜乱舞で引き受けてくれた。


その結果が、今まさに鉄板の上でジュウジュウ音を立てる、このドラゴンステーキなわけだ。


「……やべぇ。うめぇ……!」


最初に声を漏らしたのは、俺だった。

だが次の瞬間には――


「これは……想像以上ですわ……っ!」

「肉、肉! こんなの初めて……!」

「……悪くないな。」


全員が一心不乱に皿へと手を伸ばしていた。


フォークを刺す音。

肉汁が弾ける音。

鉄板の“ジュッ”という低い唸り。


それら全部が、空腹という名の魔法を強烈にかけてきやがる。


御剣は文字通り、目を輝かせて一心不乱に食べ。

イザベリアは優雅さを保ちつつも、皿が空になるペースだけは誰より早い。

黒野は「……はぁ、うまい」と一言だけ言いながら、静かに黙々とナイフを動かしていた。


「すいませーーん! 追加でドラゴンステーキ四つ!」

「こちらも二つ追加でお願いしますわ!」

「俺も、二つ追加で!」


気づけば、俺たちは次々と追加注文をしていた。


鉄板が置かれるたびに立ち上る香りが、食欲というより“本能”を再起動させてくる。


気づけば、全員ただの食べる化け物になっていた。


店員が呆れ顔で後ろを通り過ぎるたび、俺たちは貪るように食べ続けた。


「……やっべぇ……なんだこれ……」

「本当に学園の料理で出ませんの……?」

「出たら騒動になる……」

「というか、肉が足りない……」


誰が言ったのかもう覚えていない。


ただ、次の皿が運ばれるたびに、全員が無心でフォークを突き刺すだけだった。



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