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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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聖剣と魔剣

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

「おいおい! まじかよ! すげぇ~じゃねえか‼」


思わず声が裏返った。

黒野は慌てて自分の口元に人差し指を立て、「シーッ」と俺を制した。


「……なら、その使用者を御剣に、ってことか?」


俺が声を潜めると、黒野は小さく「あぁ」とだけ答えた。


「よかったな、御剣!」


俺は勢いよく御剣の肩をバンバン叩いた。


だが、俺の浮かれっぷりとは対照的に、黒野とイザベリアは難しい顔をしている。

当の御剣はというと、キョトンとしたままパスタを食べていた。


「……な、なんだよ。いいことじゃないのか? 凄い話だろ?」


俺が首をかしげると、イザベリアが小さくため息をついた。


「凄いことではありますわ。ですが――厄介ごとの方が、ずっと多いのです。」


「厄介ごと?」


俺が眉を寄せると、イザベリアは静かにカップを置き、ゆっくりと話し始めた。


「まず、“聖剣”という存在自体が、ただの武器ではありませんの。

 それは信仰と権威の象徴。つまり、“誰が持つか”と“何が正統か”を決めるのです。」


「はぁ?」


「おそらくノヴァリア神聖王国は、使い手を失った聖剣で“日ノ本”に交渉に来たのでしょう。

 ですが――もし本当に御剣様に渡すつもりなら、直接御剣家に打診するはず。

 それをわざわざ“京都の一条家”を通したというのは……政治的な意図、裏がある、ということですわ。」


黒野が腕を組みながら頷く。


「つまり、外から見りゃ“日ノ本の御三家”と“京都の華族”の綱引きって構図になる。

 一条家に聖剣が流れた時点で、力の天秤が一度傾いた。

 そこにノヴァリアの“神聖”って肩書きが入る――

 つまり、宗教と政治、両方の意味で爆弾が落ちたってわけだ。」


「……爆弾?」


「そう。外交上のな。」


黒野はコーヒーを一口飲み、低く続けた。


「ノヴァリア神聖王国は“聖剣”を通して日ノ本に影響を与えようとしている。

 けど御剣家は、その受け取りを正式に拒否してる。“外の神に加護を受ける筋合いはない”ってな。」


「……つまり、御剣家と京都の華族のあいだに、火種が生まれたわけですわね。」


イザベリアが淡々とまとめる。


「ふ、ふぅん……難しい話だな……」


俺は頭を掻いた。


「要するに、俺らの修学旅行先が、政治と宗教と権力争いの渦中ってことか?」


「簡単に言えばそうですわね。」


「最悪だな……」


俺はぐったりと背もたれに沈み込んだ。

ただの修学旅行のはずが、どうやらとんでもない地雷原に足を踏み入れるらしい。


「でもさ……聖剣一本で、なんでそんな大ごとになるんだ?」


俺は素朴な疑問を口にした。



イザベリアはカップを置き、ゆっくりと俺の方を見た。


「ノヴァリア神聖王国の“聖剣”は、主神ノヴァリアの祝福を受けた神器ですの。」


その声音には、いつもの柔らかさよりも、わずかに厳しさが滲んでいた。


「つまり、“聖剣の使い手”に選ばれるということは――」


彼女は言葉を区切り、真っ直ぐに御剣の方を見た。


「“聖剣の担い手”として、主神ノヴァリアの“使い”、すなわち“使徒”と見なされるということですわ。」


「……使徒?」


俺が眉をひそめると、黒野が補足した。


「簡単に言えば、“神の代行者”だ。

 聖剣を持つってことは、ノヴァリアの加護を受け入れること。

 つまり、神聖王国の庇護下に入るって意味になる。」


「庇護って、要するに支配のことだろ?」


「その通り。」


黒野は頷き、苦笑を浮かべた。


「宗教国家の“祝福”は、政治的な“鎖”でもある。御剣家が受け取りを拒否した理由も、そこにあるんだ。」


イザベリアが静かに続ける。


「聖剣はただの武器ではありませんの。それは“主神の意思”を示す旗印――国家そのものの象徴。

 もし御剣様がそれを受け取れば、“日ノ本がノヴァリアの庇護下に入った”と世界に宣言するようなものですわ。」


「……剣一本で、国の立場まで決まっちまうのか。」


俺は頭を掻いた。


「そりゃあ、厄介ごとだな……」


「まぁ――それだけじゃないんだがな……」


黒野はそう言って、ポケットから煙草を取り出した。

 

「獅子堂。お前、聖剣についてどれくらい知ってる?」


いきなり振られて、俺は少し考えた。


「政治的な意味なら全然知らねぇな。武器としてなら……聖属性を持った強い剣、くらいの認識だ。」


黒野はふっと笑って、煙を吐き出した。


「……やっぱりな。世間一般の認識はそんなもんだ。“神の祝福を受けた伝説の武器”――綺麗な言い方をすれば、そう聞こえる。」


「違うのか?」


「違う。」


黒野の答えに被せるように、イザベリアが口を開いた。


「ある種、“呪われた武器”ですわね。」


「……は? 呪われた? 聖剣だろ?」


思わず声が裏返る。


「聖剣は確かに強力です。ですが――代償もまた、強大なのです。」


イザベリアは紅茶を静かに口へ運び、視線を落とした。


「代償って、どういう意味だよ?」


俺が聞くと、黒野が煙をくゆらせながら答えた。


「聖剣はな……“自分の担い手”を勇者を育てるんだよ。」


「育てる? それ、いいことじゃねぇか。」


黒野は短く笑った。


「聞こえはな。……けど、勇者を“育てる”ってのは、“試練を与える”ってことだ。」


「……試練?」


「ああ。聖剣は、持ち主を強くするために、わざと苦難を引き寄せる。

 戦争でも、災厄でも、魔物でも――勇者が生まれるには、それだけの“闇”が必要になる。

 つまり……勇者の誕生は、同時に“悲劇の始まり”でもあるってことだ。」


煙草の先が小さく赤く光った。

その火が一瞬だけ、黒野の表情を照らした。


「聖剣が勇者を選ぶとき、世界は必ず歪む。英雄が必要なほどの“厄災”を、自ら呼び寄せるんだ。」


「……待てよ。じゃあ、御剣が選ばれたら――」


「――その瞬間、何かが“起きる”だろうな。」


黒野の声が低く響く。


「黒野様がおっしゃったのは“最終的結末”で、国家が危惧する範疇ですわ。ですが、勇者という存在自体が、そもそも迷惑なのですわ。」


イザベリアがきっぱりと言い放った。


「……どういうことだ?」


「勇者を育てる、ということは、勇者がいる場所には常に小なり大なり、トラブルが起こり続けるということです。」


「……それって、ただのトラブルメーカーじゃねぇか。」


「そうですわね。」


イザベリアは紅茶を口にしながら、淡々と続けた。


「過去にも、聖剣の使い手がいた地域で魔物のスタンピードが発生し、勇者もろとも街が滅んだ事例がいくつもありますわ。」


「うげ……最悪じゃねぇか。」


「えぇ。ゆえに、勇者と聖剣を“神の加護”としてではなく、“災厄の予兆”と見ている国家も多いのですわ。」


「そう聞くと、聖剣って……なんか魔剣みたいに聞こえてくるな。」


俺が呟くと、黒野がふっと笑った。


「実際、扱い方次第では魔剣も同じだ。」


「……ん? なら、“魔剣”ってのはどうなるんだ?」


「魔剣というより、“魔装具”だな。」


黒野が答える。


「獅子堂、ダンジョン講習で習わなかったのか?」


「……めんどくさかったから聞いてねぇ。」


俺は視線を逸らした。


「だろうな。」


黒野は苦笑しながら続けた。


「魔装具ってのは、ダンジョン内で宝箱や魔物からドロップする武具の総称だ。ただの魔力を帯びた武器から、意思を持つレベルの“当たり”までピンキリだ。」


「それくらいは知ってるって……」


「知ってるならいい。けどな――」


黒野は指で煙草の灰を落としながら言葉を繋げた。


「魔装具にも“ハズレ”はある。呪われてたり、制御が難しかったり、持ち主を食うようなやつもな。」


「……結局、剣でも魔具でも、リスクはつきものってわけか。」


「そういうことだ。」


黒野は目を細め、ゆっくりと煙を吐いた。


「神が作ろうが、魔が生もうが――力ってのは、結局、代償を求めるんだよ。」


「代償って、何だよ……」


俺がそう聞くと、黒野は煙草をくわえたまま、どこか達観したように答えた。


「……聖剣なら“信仰心”。魔装具なら“力”や“試練”ってところだな。」


「信仰心って……そういう精神的な意味か?」


俺が首をかしげると、黒野は小さく首を横に振った。


「違う。もっと現実的な話だ。聖剣ってのはな、信仰を“集める装置”なんだよ。」


「装置?」


「あぁ。強ければ強いほど、神の加護が証明される。結果が伴えば、人は“信じる”。

 信じれば、祈りが集まる。祈りが集まれば、神の影響力が広がる。

 ……つまり、“信仰の循環装置”ってやつだ。」


黒野は指先で煙を払った。


「神聖王国が“聖剣”を外に出す理由も、そこにある。力を見せれば、信仰は伝播する。

 信仰が広がれば、神の勢力圏も拡大する。

 ま、信仰ってのは、最も効率のいい“支配の道具”だからな。」


「……なるほどな。つまり、聖剣を振るうってことは、戦うことより“信じさせること”が目的ってわけか。」


「その通りだ。」


黒野は苦笑を浮かべ、煙を吐き出した。


「強さそのものが“宣伝”になる。聖剣は、神の奇跡を見せるための劇場装置だ。

 そして――使い手は、神に代わって信者を増やす“広告塔”ってわけさ。」


「……信仰の営業マンかよ。」


「言い得て妙だな。」


黒野は小さく笑った。


「だから御剣家は拒んだんだ。“主神ノヴァリアの庇護”なんてのは、聞こえはいいが、

 裏を返せば、“神聖王国の属国宣言”と同義だからな。」


「うわぁ~いろいろときな臭くてめんどくせぇ~な…」


「まぁ~安易に華族や聖剣に関わるなって事だ。」


黒野はそう言って苦笑いを浮かべていた。



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