何時もの日常
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。
一夜が明け、俺たちは街へ戻ってきた。
戦利品の整理を終えると、まずは分配。
肉はともかく、その他の素材はきっちり山分けした。
最初、イザベリアは眉をひそめて渋っていたが、俺が「ドラゴン素材なんて、価値はあっても使い道がねぇ」と説明すると、ようやく納得したようにため息をついた。
実際、ドラゴンの素材が“貴重”とされるのは値段の問題だけで、実用性はほとんどない。
鱗や皮、牙、骨――どれも一見すれば高級素材だが、ゲームみたいに都合よく加工できるものじゃない。
そもそもドラゴンの鱗や皮、牙が異常に硬いのは、奴ら自身が莫大な魔力を保有しているからだ。
だが、死ねばその魔力は抜け落ちる。
残るのは、少し硬いだけの素材。
魔力を流し込めば確かに硬度は戻るが、その分、魔力の消費が馬鹿みたいに多く、実用性はほぼゼロだ。
しかも、ドラゴンを討伐できるような冒険者は、すでにそれに見合う武器や防具、つまり魔剣や魔装を持っている。
わざわざ非効率な素材で装備を作り直す意味なんてない。
せいぜい、装飾品や研究素材としての価値が残る程度だ。
その点、肉は別だ。
竜種の肉は滋養が高く、調理すれば驚くほど旨い。
血や内臓は薬や強化剤の材料になるため、聖家がすべて引き取っていった。
……俺には価値がないがな。
結局のところ、こういう素材は中堅の探索者には嬉しいだろうが、上級者にとってはほとんど意味がない。
努力に見合う報酬というのは、案外、どこにも転がっていないものだ。
金銭と放出出来ない素材がゴミの様に溜まっていくだけだ。
ゲームではウハウハのコレクション扱いなんだけどな……
現実は邪魔でしかない。
分配が終え、俺達は学園に戻り解散した。
こうして長かったGWも終わり、のんびりと退屈な学園生活が戻ってきた。
ある日の放課後。
いつものレストラン《Service》で、黒野たちと他愛もない世間話をしていた時のことだ。
「そういや、夏休み前に修学旅行があるらしいな。」
フォークを回しながら俺が言うと、黒野が肩を竦めた。
「あぁ。普段なら二年になってからなんだが、今年は異例だそうだ。」
「へぇ? なんか理由でもあるのか?」
俺の問いに、黒野はふぅっと深いため息を吐いた。
「お前らだよ……特に御剣、お前をご指名だ。」
口いっぱいにパスタを詰め込んでいた御剣が、「ん?」と鳩が豆鉄砲を食らったような顔で首を傾げる。
「京都の華族が、百五十年ぶりに“百鬼夜行祭”を執り行うんだと。
で、“是非に”と――俺や獅子堂、御剣をはじめ、同じ学園の学友も招待したいんだそうだ。」
「華族って……京都の、あの関西圏の貴族階級だよな?」
「あぁ。東では御三家が、西では華族が権力を握ってる。」
「それって……まさか……」
「そう。めちゃくちゃ“楽しい”旅になるだろうな。」
「……行きたくねぇ~なぁ~。」
俺は顔をしかめ、思わず頭を抱えた。
どう考えても、ただの修学旅行で済むはずがない。
嫌な予感しかしなかった。
そんな時、イザベリアが御剣の口元を布巾で拭いながら、穏やかに尋ねた。
「百鬼夜行祭――というのは、なんでしょうか?」
「百鬼夜行祭は、昔、京都の一条通りで行われていた妖怪行列の祭りだな。海外じゃ“日ノ本のハロウィン”なんて呼ばれてたらしい。」
黒野がコーヒーを一口すすりながら答えた。
「日ノ本の鎮魂祭的なものなのですわね?」
「まぁ、近いけどちょっと違う。あれは“祓い”や“浄化”が主目的だったはずだ。」
そう言って、黒野はテーブルに肘をつき、ゆっくりと説明を始めた。
俺たちは自然と耳を傾けた。
■ 一条百鬼夜行
京都・一条通。
古来よりこの道は、現世と幽世の境と呼ばれてきた。
夜半になると、鬼や怨霊、妖しのものどもが列をなし、都を練り歩く――それが「一条百鬼夜行」である。
表向きは、ただの怪異譚にすぎない。
だが実際には、都に溜まった穢れや怨念を外へと流す“祓いの儀”でもあった。
百鬼の行列とは、放たれた魂と穢れの化身。
人々はその夜だけ、家の灯を落とし、声を潜め、異界が通り過ぎるのを静かに待ったという。
この行列が歩むことこそが、都を清める循環。
すなわち――「百鬼夜行」とは、恐怖の象徴ではなく、
**生と死の均衡を取り戻すための“夜の祓い”**であった。
陰陽師たちはその行列を制御し、怨霊を鎮め、魂を定めた。
彼らにとって一条通は、穢れを流す“導線”であり、
同時に、幽世と現世を繋ぐ“霊的な血管”でもあったのだ。
百鬼夜行は、都の呼吸のようなものだ。
それが絶たれた時、怨念は滞り、死者と生者の境が濁る。
ゆえに――百五十年ぶりに行われる「百鬼夜行祭」とは、
封印されていた“夜の循環”を再び動かす、再生と鎮魂の儀でもあるのだ。
「まぁ~普通に聞くと、“伝統の祭りを復活させるからどうですか”って話にしか聞こえないな。」
俺がそう言うと、黒野が軽く肩を竦めた。
「あぁ~、そうだな。」
イザベリアはゆっくりとカップを傾け、香りを楽しむように息を吐いた。
「日ノ本の神事や祭事というのは、いつ聞いても複雑で難解ですわね。
どこまでが神話で、どこからが現実なのか……境界が曖昧ですもの。」
「まぁ~海外の人からすればそうだろうな。**神話(神道)・仏教・政治(国家権力)**が三位一体で混ざってるかな。」
黒野が苦笑しながら言葉を続ける。
「日ノ本の人間ですら、ほとんど何も知らない。なぁ、獅子堂。」
「……俺に振るなよ。」
俺は肘をついて、半分うんざりしたように答えた。
「確かに、神事とか言われてもピンと来ねぇな。ニュースで名前を聞くくらいだろ。」
イザベリアは不思議そうに小首を傾げた。
「……でも、それは奇妙ではありませんの?
自分の国で受け継がれてきた儀式や神の物語を、誰も詳しく知らないというのは。」
「それが普通なんだよ。」
黒野が軽く笑う。
「日ノ本の神事ってのは、特定の家や神社が守ってる閉じた世界なんだ。
一般人にとっちゃ、“ある”ことは知ってても、“何をしてるか”までは興味がない。
信仰が日常に溶けてる分、意識されにくいってやつだな。」
イザベリアはゆっくりと瞬きをした。
「……なるほど。つまり、“信じていないのに、信仰の上に立って生きている”ということですのね。」
彼女の言葉に、俺と黒野は一瞬だけ黙り込んだ。
正直、返す言葉がなかった。
――確かにそうだ。
俺は神を信じちゃいない。
けれど、神の定めた季節の巡りや、祓いの行事の上で暮らしている。
それを“当たり前”だと思っているだけなのだ。
「まぁ~難しい話はともかく……京の華族様が、なんで御剣をご指名なんだ?」
俺がそう聞くと、黒野は苦笑いを浮かべて、カップをそっとテーブルに置いた。
「……ここからは、オフレコで頼む。」
その声色が妙に低くて、俺も思わず姿勢を正した。
黒野は周囲を見回し、イザベリアと俺、それに御剣の顔を順に確かめる。
全員がうなずいたのを見て、彼は少し身を乗り出し、声を潜めた。
「――京都の一条家に、“ノヴァリア神聖王国”から《聖剣》が流れた。」
その一言に、空気が止まった。
イザベリアの指先が微かに震え、俺の表情が一瞬にして引き締まる。
御剣だけが、口にフォークをくわえたまま「ん?」と首を傾げていた。
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