黒野と獅子堂 ④ (画像あり)
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。
「――とまぁ、そんなことがありながら、俺たちはスカルドラゴンを討伐したんだよ。」
そう言い終えた瞬間、イザベリアと沙耶の表情がほっと緩んだ。
「なら、御無事で何よりですわ。」
イザベリアが胸に手を当て、安堵の息を漏らした。
「それにしても……ずいぶんボロボロですね。」
沙耶が眉を寄せながら、俺目を向けた。
「その“黄泉送り”という魔法、そこまで危険なものなのですか?」
俺は一瞬、言葉に詰まり、視線をそっと逸らした。
「……まぁ、ちょっとな。」
「獅子堂様?」
沙耶がじっと目を細めた。
俺は「はぁ~」っとため息を吐くと続きを話した。
俺は、ぐったりと地面に倒れ込んでいる黒野の口元にポーションの瓶を当てた。
「おい、無理すんなよ。……ほら、飲め。」
黒野は薄く目を開け、口を動かした。
喉が渇いているらしく、少しずつしか飲めない。
ひと息ついたところで、俺は気になっていたことを切り出した。
「なぁ、さっきの技……一体なんだったんだ? あの光景、どう見てもただの魔法じゃなかったぞ。空間が歪んでたしな。」
黒野はしばらく沈黙したまま、ぼんやりと天を見つめていた。
やがて、掠れた声でぽつりと答える。
「……“黄泉送り”のことか?」
「あぁ。」
俺は頷く。
黒野はゆっくりと上体を起こし、擦れた声で話し出した。
「……あれは、強制的に“黄泉の門”を開く術だ。召喚魔法の一種、と言ってもいい。」
「召喚……?」
「正式には――儀式召喚の一種らしいのだが……話すと長くなる。今は気にするな。」
黒野はポーションの瓶を指先で転がしながら、淡々と答えた。
「あぁ。」
俺は頷くが、まだあの光景が頭から離れない。
「要はな、強制的に“黄泉の門”の一部を現世――つまり《現世》に顕現させて、対象を“黄泉”へ送ることができる。」
「送る、っていうか……引きずり込んでたよな、あれ。」
俺は思わず眉をひそめる。
あの異様な闇、底なしの冷気。
あれを“送る”なんて穏やかな表現には思えなかった。
黒野は薄く笑った。
「まぁ……使い方次第だ。」
黒野はそう言って、静かに話を続けた。
「生者やモンスターのように“現世に留まるべき存在”を無理に送ろうとすれば、当然抵抗される。あぁやって、引きずり合いになるんだ。」
「……なるほどな。」
「だが、本来の目的は逆だ。死者の魂――未練を抱いたまま漂う霊を、“安全に黄泉へ送り届ける”ための術式なんだ。」
黒野の声は静かだった。
だが、その静けさがかえって重かった。
黄泉送り――それは、“癒しの儀式”であると同時に、“死の門を開く禁術”でもあった。
死者の魂を“黄泉”へと導く祓いの儀式。
それは、死後の世界への“通行”を許すための導きであり、
同時に、“死”という概念そのものを顕現させる**呪**でもある。
古代の神祇思想において、「死」は“穢れ”であり、同時に“停滞”でもあった。
ゆえに“祓い”とは、「死を遠ざける」ことではなく、「死を定める」こと。
すなわち、魂を正しき場所に還す行為を指す。
黄泉送りは、まさにその“原型”にあたる。
現世に彷徨う魂を「放逐」するのではなく、「理へと還す」
それは“死の秩序”を守るための神事にして、生と死の境を一瞬だけ繋ぐ調律の儀でもある。
すなわち、黄泉送りとは、死者の魂を黄泉へ導く祓いであり、“死”という理そのものを顕現させる儀式召喚なのである。
「それって……俺が巻き込まれてたら、どうなってたんだ?」
ふと胸の奥に冷たいものが走って、俺は黒野に問いかけた。
黒野は一瞬だけ目を逸らした。
「……」
沈黙。
嫌な予感しかしない。
「おい!」
俺が声を荒げると、黒野はぼそりと呟いた。
「……死んでる。」
「……」
「……」
「お前ぇっ‼ ふざけんな‼ そんな危険な技、使うんじゃねぇよ‼」
「だから言ってんだろ‼ 使うのが難しいんだよ‼ 制御するのにどれだけ集中してたと思ってんだ‼」
「うるっせぇ‼ それで巻き込まれたらどうすんだよ‼」
「だから‼ 必死に制御してただろうが‼」
「何度も失敗してたじゃねぇか‼ 一つ間違えたら俺もお陀仏だったぞ‼」
「そうなっても俺は大丈夫だから安心しろ。」
「……どういう意味だよ、それ。」
黒野はゆっくりと笑った。
「俺には、“黄泉”がついてる。」
「このチート野郎がぁぁぁぁぁ‼‼」
俺たちの怒鳴り合いが溶けていく。
結局、どっちも本気で怒ってるわけじゃない。
ただ、生きてた事、無事だったことにほんの少し、安堵しているだけだった。
その後――。
魔力も体力も使い果たして、地面に転がったままの黒野を見下ろす。
「……よし、置いて帰るか。」
俺がそう呟いて立ち上がると、黒野は微かに目を開け、力の抜けた手で俺の裾を掴んだ。
「ま、待て……連れて行け……」
「いや、お前もう荷物だろ。動けねぇじゃん。」
「俺を置いて行く気か……この薄情者‼……」
「うるせぇ!離せ!暑いんだよ‼」
ずるずると裾にしがみつく黒野と、引き剥がそうとする俺。
その妙な攻防をしていると、背後から足音が近づいて来た。
「……なにしてるんですか、主様。」
振り返ると、薫が呆れた顔で立っていた。
状況を一目見て、彼女は小さく首をかしげる。
俺はため息まじりに事情を説明した。
スカルドラゴンとの戦闘、黄泉送りの暴走、そしてこのザマまで。
「はぁ~……」
薫は深いため息をつくと、無言で黒野の腕を取り、そのまま軽々と抱き上げた。
「まったく……あの方は、世間知らずなんですから……」
そうぼやく声を背に、俺たちはダンジョンを後にした。
神崎 薫のイメージ画像
スカルドラゴンのイメージ画像
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