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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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黒野と獅子堂 ④ (画像あり)

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

「――とまぁ、そんなことがありながら、俺たちはスカルドラゴンを討伐したんだよ。」


そう言い終えた瞬間、イザベリアと沙耶の表情がほっと緩んだ。


「なら、御無事で何よりですわ。」


イザベリアが胸に手を当て、安堵の息を漏らした。


「それにしても……ずいぶんボロボロですね。」


沙耶が眉を寄せながら、俺目を向けた。


「その“黄泉送り”という魔法、そこまで危険なものなのですか?」


俺は一瞬、言葉に詰まり、視線をそっと逸らした。


「……まぁ、ちょっとな。」


「獅子堂様?」


沙耶がじっと目を細めた。


俺は「はぁ~」っとため息を吐くと続きを話した。





俺は、ぐったりと地面に倒れ込んでいる黒野の口元にポーションの瓶を当てた。


「おい、無理すんなよ。……ほら、飲め。」


黒野は薄く目を開け、口を動かした。

喉が渇いているらしく、少しずつしか飲めない。

ひと息ついたところで、俺は気になっていたことを切り出した。


「なぁ、さっきの技……一体なんだったんだ? あの光景、どう見てもただの魔法じゃなかったぞ。空間が歪んでたしな。」


黒野はしばらく沈黙したまま、ぼんやりと天を見つめていた。

やがて、掠れた声でぽつりと答える。


「……“黄泉送り”のことか?」


「あぁ。」


俺は頷く。


黒野はゆっくりと上体を起こし、擦れた声で話し出した。


「……あれは、強制的に“黄泉の門”を開く術だ。召喚魔法の一種、と言ってもいい。」


「召喚……?」


「正式には――儀式召喚の一種らしいのだが……話すと長くなる。今は気にするな。」


黒野はポーションの瓶を指先で転がしながら、淡々と答えた。


「あぁ。」


俺は頷くが、まだあの光景が頭から離れない。


「要はな、強制的に“黄泉の門”の一部を現世――つまり《現世うつしよ》に顕現させて、対象を“黄泉”へ送ることができる。」


「送る、っていうか……引きずり込んでたよな、あれ。」


俺は思わず眉をひそめる。

あの異様な闇、底なしの冷気。

あれを“送る”なんて穏やかな表現には思えなかった。


黒野は薄く笑った。


「まぁ……使い方次第だ。」


黒野はそう言って、静かに話を続けた。


「生者やモンスターのように“現世に留まるべき存在”を無理に送ろうとすれば、当然抵抗される。あぁやって、引きずり合いになるんだ。」


「……なるほどな。」


「だが、本来の目的は逆だ。死者の魂――未練を抱いたまま漂う霊を、“安全に黄泉へ送り届ける”ための術式なんだ。」


黒野の声は静かだった。

だが、その静けさがかえって重かった。


黄泉送り――それは、“癒しの儀式”であると同時に、“死の門を開く禁術”でもあった。


死者の魂を“黄泉”へと導く祓いの儀式。

それは、死後の世界への“通行”を許すための導きであり、

同時に、“死”という概念そのものを顕現させる**しゅ**でもある。


古代の神祇思想において、「死」は“穢れ”であり、同時に“停滞”でもあった。

ゆえに“祓い”とは、「死を遠ざける」ことではなく、「死を定める」こと。

すなわち、魂を正しき場所に還す行為を指す。


黄泉送りは、まさにその“原型”にあたる。


現世に彷徨う魂を「放逐」するのではなく、「ことわりへと還す」

それは“死の秩序”を守るための神事にして、生と死の境を一瞬だけ繋ぐ調律の儀でもある。


すなわち、黄泉送りとは、死者の魂を黄泉へ導く祓いであり、“死”という理そのものを顕現させる儀式召喚なのである。



「それって……俺が巻き込まれてたら、どうなってたんだ?」


ふと胸の奥に冷たいものが走って、俺は黒野に問いかけた。


黒野は一瞬だけ目を逸らした。


「……」


沈黙。

嫌な予感しかしない。


「おい!」


俺が声を荒げると、黒野はぼそりと呟いた。


「……死んでる。」


「……」

「……」


「お前ぇっ‼ ふざけんな‼ そんな危険な技、使うんじゃねぇよ‼」


「だから言ってんだろ‼ 使うのが難しいんだよ‼ 制御するのにどれだけ集中してたと思ってんだ‼」


「うるっせぇ‼ それで巻き込まれたらどうすんだよ‼」


「だから‼ 必死に制御してただろうが‼」


「何度も失敗してたじゃねぇか‼ 一つ間違えたら俺もお陀仏だったぞ‼」


「そうなっても俺は大丈夫だから安心しろ。」


「……どういう意味だよ、それ。」


 黒野はゆっくりと笑った。


「俺には、“黄泉”がついてる。」


「このチート野郎がぁぁぁぁぁ‼‼」


俺たちの怒鳴り合いが溶けていく。

結局、どっちも本気で怒ってるわけじゃない。

ただ、生きてた事、無事だったことにほんの少し、安堵しているだけだった。


その後――。

魔力も体力も使い果たして、地面に転がったままの黒野を見下ろす。


「……よし、置いて帰るか。」


俺がそう呟いて立ち上がると、黒野は微かに目を開け、力の抜けた手で俺の裾を掴んだ。


「ま、待て……連れて行け……」


「いや、お前もう荷物だろ。動けねぇじゃん。」


「俺を置いて行く気か……この薄情者‼……」


「うるせぇ!離せ!暑いんだよ‼」


ずるずると裾にしがみつく黒野と、引き剥がそうとする俺。

その妙な攻防をしていると、背後から足音が近づいて来た。


「……なにしてるんですか、主様。」


振り返ると、薫が呆れた顔で立っていた。


状況を一目見て、彼女は小さく首をかしげる。


俺はため息まじりに事情を説明した。

スカルドラゴンとの戦闘、黄泉送りの暴走、そしてこのザマまで。


「はぁ~……」


薫は深いため息をつくと、無言で黒野の腕を取り、そのまま軽々と抱き上げた。


「まったく……あの方は、世間知らずなんですから……」


そうぼやく声を背に、俺たちはダンジョンを後にした。




神崎 薫のイメージ画像


挿絵(By みてみん)



スカルドラゴンのイメージ画像


挿絵(By みてみん)


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