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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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黒野と獅子堂 ③

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

結局、俺は三度の戦闘で、時間をかけながらもスカルドラゴンを叩き伏せた。


その間、黒野は――というと、二度も魔法の発動に失敗していた。

魔力の暴発で吹き飛ばされ、岩壁に叩きつけられ、全身ボロボロになっていた。


(大規模魔法でも使うつもりか? 制御が甘すぎるぞ……)


首をぶった斬ったばかりのスカルドラゴンが、四度目の再生を始めた。骨が軋み、再構成されながらゆっくりと蘇っていく。


「おい、黒野! お前がどんな魔法を使おうとしてるのか知らねぇが、グズグズしてると俺が殺しちまうぞ、コイツ!」


俺は再生するスカルドラゴンを睨みながら、黒野に向かって怒鳴った。


「……うるせぇ……制御が……ムズイんだよ……!」


黒野は地面に膝をつきながら、口元を血で染めつつも、まだ魔力を練っていた。額から汗が滴り、息は荒い。全身が魔力の残滓で焦げたようになっている。


(こいつ……本気で自分を追い込んでやがるな……)


「次でラストだ。次失敗したら次はない。……全力でやれ、黒野! 死ぬ気でやってみせろ!」


俺の叫びに、黒野は何も言わずに拳を握りしめた。

その指先から魔力がにじみ、地面が小さく震えた。


そのとき――スカルドラゴンが動いた。


巨大な骸骨の竜は、地面に両手をつけ、ゆっくりと首を持ち上げていく。

その喉奥に、禍々しい紫黒のエネルギーが渦を巻き始めていた。


(まずい――ブレスだ!)


俺は全力で駆け出した。

魔力の余波が空間を軋ませる中、俺はスカルドラゴンの右腕を駆け上がる。

怒涛の勢いでスカルドラゴンの顔の下へと飛び込む!


「喰らえぇぇッ!!」


跳躍の勢いをそのままに、両手剣を構え、喉元から上顎へ――一気に剣の腹で叩き上げた!


――バゴォォォォォォン!!!


顎が跳ね上がると同時に、スカルドラゴンの口内に蓄えられていたブレスが口内で暴発。

紫黒の光が破裂し、火花のような魔力が散った。


「っはぁ、ギリギリ……!」


俺は片膝をつきながら剣を支えにし、爆発の余波をやり過ごした。


(まさか、初手でブレスを撃ってくるとはな……)


想定外だ。

いつもなら三手目、もしくは五手目に放ってくるはずのブレスを、今回はいきなり――まるで“こちらの行動”を読まれているかのような動きだった。


俺は煙の向こうでまだ立っているスカルドラゴンを見据え、再び剣を構える。


「黒野……今度こそ決めてくれよ」


スカルドラゴンが一瞬、こちらに視線を向けた。


(……来る!)


直後、巨躯の左腕が薙ぎ払うように振り下ろされてきた。

俺は反射的にバックステップで距離を取り、地面を滑りながら体勢を立て直す。


だが、その直後だった。

スカルドラゴンの眼前――空中に巨大な魔法陣が浮かび上がった。


(まずい! 狙いは――俺じゃない!)


直感が警鐘を鳴らす。

奴の視線は、俺を無視して後方の黒野を捉えていた。


「――クソッ!」


叫ぶよりも早く、俺は手に持っていた大剣を逆手に構えて、全力でスカルドラゴンの顔へと投げつけた!


振り抜いた剣は一直線に飛翔し――

スカルドラゴンの左目に深々と突き刺さった。


「グォォォォオアアアアッ!」


巨躯が咆哮とともに顔を横に逸らし、放たれた魔法弾は標的を外れ、黒野のすぐ横に着弾。


爆音と爆風が辺りに響き渡り、黒野の身体が揺らぐ。


しかし――


(崩れてねぇ……!)


黒野は、一瞬よろめきながらも、なお集中を保ち演唱を継続していた。


その姿に俺はニヤッと笑った。


(やるじゃねぇか。少しは信用されてんのか、俺も)


だが、安堵する暇はなかった。

スカルドラゴンは怒り狂いながら顔を振り、突き刺さった剣を振り払うと――


「――ッ!」


両腕を**バンッ!**と音を立てて地面に叩きつけ、魔力を収束。


次の瞬間――


眼前に無数の魔方陣が一斉に展開された!


(やべぇ……! 多重詠唱、しかも全弾発射かよッ!)


俺は歯を食いしばりながら、黒野の前に跳び出し、アイテムボックスから大型の盾を引き抜く。


「来いよ、骨野郎ッ……!」


ドォォォン!!


魔法が放たれた。

空間が裂ける音と共に、無数のボーンランスが雨あられのように降り注いでくる。


「くっ――!」


俺は盾を掲げて、それらを真正面から受け止めた。

一発ごとに腕に衝撃が走り、足元の床が軋む。

衝撃で後退しながらも、必死に踏みとどまる。


(黒野……まだか……ッ!)


歯を食いしばり、ひたすらに耐える。

盾の縁が欠け、火花が走る。

だが、まだ崩れない――まだ、倒れねぇ!


やがて、魔法の雨が止んだ。


「――ッ、ふぅ……終わった……か?」


全身の力が抜け、少し安堵しかけたその時だった。


スカルドラゴンが顔を上げる。


口を開き、喉の奥に禍々しい紫のエネルギーが渦を巻く。


(ブレスかッ! ――まずい、間に合わねぇッ!)


再び盾を構えようとするも、腕が限界を迎えている。

脚も鉛のように重く、動きが鈍る。


――その瞬間。


「黄泉送り――」


背後から、静かで、確かな声が響いた。


直後、空間が粘性を帯びた死の気配で満たされ、空気が一変した。


俺の背筋が凍りつく。

スカルドラゴンの動きが、ぴたりと止まった。


あれほど激しく暴れていた巨体が、一瞬にして沈黙する。


ブレスのエネルギーが喉奥で消え、スカルドラゴンは、理解できないものを目の前にしたような顔で、硬直していた。


まるで、“死”を感じたように――


俺もスカルドラゴンも、一歩たりとも動けなかった。

いや――動いたら死ぬ。

理屈ではなく、本能がそう告げていた。


全身が凍りつくような静寂の中、突如としてスカルドラゴンの背後に“それ”は現れた。


黒く、巨大で、禍々しくも荘厳。

まるで神殿の門を思わせる、死を象徴するような重厚な扉だった。


(……なんだ、あれは……)


俺が言葉を失っている間にも、門は“ギギギギ……”と鈍く軋む音を立ててゆっくりと開いていく。

その隙間から吹き出したのは、尋常ならざる“死の気配”。

それは視界を黒く染め、肺を圧迫し、骨の髄まで凍えさせるような、絶対の死の波動だった。


気付けば俺の身体は震えていた。

歯がガチガチと鳴り、呼吸が浅くなっていく。

スカルドラゴンでさえも、一歩退いて硬直しているのがわかった。


そして――門が完全に開かれた瞬間だった。


中から這い出してきたのは、“無数の腕”。


黒く染まった影の腕、乾いた骨の腕、白く半透明な腕、青白く発光する異形の腕……

その全てが空中で静止し、次の瞬間、凄まじい速度でスカルドラゴンに一斉に襲いかかった。


「――ッ!」


スカルドラゴンは咆哮を上げ、全身を捩じらせるようにして暴れ回る。

巨体を叩きつけ、腕を引きちぎらんばかりに振るい、幾度となく周囲に強力な魔法をばら撒いている。


だが、それでも“腕”は剥がれない。

いや、それどころか――増えていく。


無数の異形の腕に全身を掴まれ、ついにはスカルドラゴンの巨大な身体が、門の中へと少しずつ引きずり込まれていった。


スカルドラゴンは、まるで地獄へ落とされるかのように絶叫を上げながら、門の縁に爪をかけて必死に抵抗していた。

だが、それも一瞬のことだった。


さらに増えた“腕”がその両腕を引き裂くように押さえつけ、圧倒的な力でその巨体をズルズルと門の奥へと引きずり込んでいく。


(……嘘、だろ……)


最後の瞬間、スカルドラゴンの空洞の眼孔が、なぜか“恐怖”に満ちているように見えた。

叫び、もがき、あらゆる抵抗もむなしく、その全身が門の中へと完全に飲み込まれていった。


そして――


“ギギギギ……”


門は静かに、だが確実に音を立てて閉ざされていく。

不気味な沈黙のなか、扉は完全に閉まり、重々しい終焉の音を残して、門ごとこの世から消え去るように地面へと沈んでいった。


あの恐怖の波動も、腕の蠢きも、何もかもが幻だったかのように――

何も残さず、すべてが消えた。




恐怖の余韻が、まだ俺の体を蝕んでいた。


門から溢れ出た死の気配は、ほんの一瞬だったとはいえ、全身の血を凍らせるには十分すぎた。

身体が震える。

呼吸が浅く、心臓の音がやけに耳に響いている。


そんなとき、背後で――「ドサッ」と、鈍い音がした。


俺はゆっくりと首を回し、後ろを振り返った。


そこには、地面に崩れるように倒れた黒野の姿があった。


「――おい、大丈夫か!?」


俺は駆け寄り、黒野の肩に手をかけた。

肌は冷たく、息は浅い。


「……あぁ……大丈夫だ……」


かすれた声で黒野が答える。

目を閉じたまま、呼吸を整えながら続けた。


「……魔力と……気力を……全部……使い果たした……」


それだけ言い終えると、彼の身体は完全に沈黙した。

昏睡ではない。

ただ、動けないだけだ。


俺はその言葉を聞いた瞬間――不意に、こみ上げる何かに堪えきれなくなった。


「……ぷっ……くははっ……あははははっ……!」


腹の底から、思わず笑いがこぼれた。


何が可笑しいのか、自分でもよくわからなかった。

ただ、全身を包んでいたあの張り詰めた緊張と、死の淵から戻った安堵感――


それが、一気に弾け飛んだ。


「バッカ野郎……が!」


俺は笑いながら、地面に座り込んだ。


――怖かった。

正直、あの瞬間は死んだと思った。


でも。


(……やりやがったな、黒野……)


目の前の男は、ボロボロになりながらも、ちゃんとやり遂げたんだ。


それが、どうしようもなく――誇らしかった。




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