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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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黒野と獅子堂 ②

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

「黒野、ここはお前に任せる」


俺はそう言って黒野に視線を向けた。

おあつらえ向けに相手はレッドドラゴン。

でかさにビビらなければ、これといって大した相手じゃない。

いわば、練習台にはもってこいだ。


黒野はジロリと俺を睨んでくるが、そこはスルーだ。


「とりあえず、当たって砕けろ」


そう笑いながら言ってやると、黒野は深くため息をつきながら返してきた。


「砕けたら意味ねぇだろ……」


とは言いながらも、黒野はしっかりと深呼吸し、息を整える。

迷いのない目で、真っ赤な巨体へと向き直った。


「心配するな。骨ぐらいは拾ってやるさ」


俺がそう付け加えると、黒野は一瞬だけこちらを睨み――そのまま、ドラゴン目がけて一直線に駆けて行った。


速い。

相変わらず反則じみた加速だ。


俺も遅れて、黒野の背を追うように走り出した。


黒野は高速で駆け抜け、あっという間にドラゴンへと接近すると、得意技の「千枚通し」でレッドドラゴンの首を貫いた。


「……相変わらず、えげつねぇな」


俺はその様子を見ながら呟いた。

俺の腹に穴を開けた技だ、当然ながらドラゴンの首にまで穴を空ける破壊力を持っていた。


しかし、黒野は思った以上にあっさりと貫けたことに驚いて、わずかに動きを止めていた。


――バカ。


すぐにヤバい気配を感じ取った俺は、全力で駆け出し、黒野の頭上から振り下ろされていたドラゴンの右腕に向かって剣を叩きつけた。


バカみたいにデカいその腕を、俺の剣で受け止め、無理やり弾き返す――


「ぬおおぉぉ……っ、くそ重てぇ……っ!」


全身に響く衝撃。

だが、なんとかその一撃を弾き返すと、俺は黒野に怒鳴った。


「ぼさっとしてんじゃねぇ! さっさとトドメ刺せッ!」


何度も受けてられるかっての。

あの巨体の一撃なんて、冗談じゃねぇ。


黒野はハッと我に返ったように頷き、体勢を立て直してドラゴンへ向き直った。


黒野はすかさずドラゴンの顔の下をすり抜け、反対側へと回り込むと、そのまま《千枚通し》でドラゴンの首に穴を空け、勢いのまま刀を振り抜いた。


ザシュ――。


鋭い斬撃音と共に、ドラゴンの首が深く切断される。


咆哮と共に首を振り回す巨体。


ズドォン――!!


重々しい音を立てて、ドラゴンは地面に崩れ落ちた。

辺りに舞い上がる砂煙と、地鳴りの余韻だけが残る。


「ふー……無事に討伐完了か」


安堵と共に呟いた俺は、黒野のほうに顔を向け、ニッと笑って拳を突き出した。


黒野も一瞬笑いを浮かべたが――

次の瞬間、俺の拳をバシンと払い飛ばしやがった。


「いてっ! 何すんだコラ!」


俺がキレると、黒野は怒りに顔をしかめて叫んだ。


「柔らかいってんなら最初に言えぇぇぇ!」


ククク……。


吹き出した俺は、腹を抱えてゲラゲラと笑った。


「おまっ……ワザとだろ!? わざとだろ、今の!!」


黒野はそう吠えると、マジでぶちギレていた。




ひとしきり笑ったあと、俺は黒野に肩をすくめながら言った。


「悪い悪い。ビビっただろ?」


笑いを噛み殺しながら謝ると、黒野は「あぁ」と軽く返事をした。


「いやマジで……俺も最初はお前と同じだったんだわ。あの図体見て、どうせ攻撃なんて通らないと思うじゃん?」


そう言いながら、俺は倒れたドラゴンの巨体を振り返る。

今も地面に横たわったまま、ピクリとも動かず生命を完全に失っていた。


「……なのに、普通に斬れるんだもんな」


「しかも思ったより柔らかいってのが一番焦った」


黒野がボソッと呟くと、俺は再び吹き出しそうになるのを必死に堪えた。


「お前、全力でやっただろ?」


「あぁ……だから焦ったんだよ……豆腐みたいに刀が入っていったからな……」


「まぁ、“巨大さ”ってのは案外、脅威とは別物なんだろうな。サイズのインパクトと実際の硬さは別問題ってやつだ」


俺がそう言うと、黒野は刀を納めながら深く息を吐いた。


「獅子堂、お前はいつもどうやって戦ってるんだ?」


黒野がそんなことを聞いてきた。


「俺か? いつも“天絶斬”でドラゴンの首を斬り落としてるよ。」


そう答えながら、俺はドラゴンの死体からドロップを回収する。

素体ドロップ――ラッキーだ。

初っ端から運がいい。


「天絶斬っていうと……俺の左腕を斬り落とした技か。」


「ああ……って言いたいところだが、別に最初から使えてた技ってわけじゃない。」


そう返すと、黒野が「どういうことだ?」と聞いてきた。


「いや、お前と同じだよ。最初は何度もドラゴンに全力で斬りかかってた。効率よく倒す方法を探って、試行錯誤していくうちに――自然と出来上がったのが、俺の必殺技“天絶斬”ってわけだ。」


そう話すと、黒野は「なるほどな」と納得したように呟き、タバコに火を点けて一服し始めた。


「……こんな感じで、残り9体も相手していくのか?」


「ああ。ただし――最後の“混沌”、スカルドラゴンだけは別だ。」


「?」


「簡単な話さ。あいつを討伐するには、“浄化”が必要なのは知ってるだろ?」


この世界において、“混沌”“不死属性”“アンデッド”と呼ばれる魔物たちは、基本的に斬ったり撃ったりしても“死なない”。

ダメージこそ入るが、トドメにはならない。

倒すには“祈り・浄化・鎮魂”などの儀式的処置が必要になる。


もちろん、例外はある。

魔物を原型が残らないほどに燃やし尽くす火力や、バラバラに細切れにするような破壊力があれば――無理やり殺し切ることもできる。

だが、それは探索者たちの間では“力技”と呼ばれ、忌避される手段だった。

コスパが悪すぎるからだ。


「浄化か……俺たちには無理だな」


黒野がそう言って、眉間に皺を寄せて思案し始める。


確かに、俺たちには“浄化”の能力なんてない。

あのスカルドラゴンの巨体を燃やし尽くすような大火力魔法もなければ、完全に解体できるほどの破壊力もない。

つまり、通常の手段では“倒せない”わけだ。


「じゃあ……どうするんだ?」


黒野が、答えを求めるように俺を見てくる。


「まぁ、理由はよくわからんが……“5回ぶっ倒せば”勝てる」


俺がそう言うと、黒野は不信感丸出しで眉をひそめた。


「5回?」


「ああ。薫いわく――あの巨体を再生・維持できる限界が“5回”らしいんだよ」


「なるほどな……再生限界、つまり“魔力の枯渇”か」


黒野がぽつりと呟く。


「まあ、そういうことだ。全力でぶった斬ってりゃ、そのうち死ぬってわけさ」


俺たちはそんな話をしながら、残りのドラゴンたちをひたすらぶった斬って回った。

水、雷、氷、風、土、毒、闇、光――それぞれ個性が違うが、動けないってのが最大の弱点だ。


とはいえ、最後の“スカルドラゴン”だけは――別格だ…いやメンドクサイだな。




「……いよいよ最後か」


俺たちは、ついにラスト。

十体目のドラゴンが居いる部屋、スカルドラゴンの前までやって来ていた。


「これで終わりだな。さっさとぶっ倒して、地上でのんびり過ごそうぜ」


俺は大きく背伸びをしながら、気軽にそう口にした。

だが、その隣で黒野は何かを考え込んでいるようだった。

黙ったまま、険しい顔で扉を見つめている。


「……どうした? 何か気になることでもあるのか?」


俺がそう声をかけると、黒野は「ああ、すまん。ちょっと考えごとしてただけだ」と小さく返し、俺の方を見た。


「まあ、いいけどよ。あんま気ぃ抜くなよ。あいつは他のとは違うからよ」


俺はそう言いながら、両手剣を握り直し、剣身に魔力を込める。

いつも通り、開幕で全力をぶつけるための準備だ――この“天絶斬”を最速で叩き込む。


だが、その時だった。


「獅子堂。ちょっと頼みがある」


唐突に、黒野が声をかけてきた。


「ん? なんだ?」


俺が眉をひそめて返すと、黒野は申し訳なさそうな顔で静かに語り始めた。


「――未完成の技があるんだ。……それを、試してみたい」


俺は少し目を見開く。


「あのスカルドラゴン相手にか? 本気か?」


「本気だ。ただ……発動までに少し時間がかかる。それまでの間、お前が時間を稼いでくれないか?」


そういうことか。

ようは、俺が盾役ってわけだ。


「別に構わねぇけどよ……長くは持たねぇぞ? あいつの攻撃は冗談抜きで殺しに来るからな」


「それで構わない。無理に引き延ばす必要はない。……お前が5回、倒すまででいい」


黒野のその言葉に、俺は苦笑した。


「……結局、俺が一人で5回倒せって話じゃねぇか」


「ああ。けど、いつもみたいに一撃でぶっ倒さず、少し“時間をかけて”くれってだけだ」


黒野の目は、真剣だった。

ただの無茶振りじゃない。

俺の出来る範囲でやれって事らしい……


「お前なぁ……言ってること無茶苦茶だぞ?」


「分かってる。けど、今やらなきゃ、二度とチャンスがない気がするんだ」


「……ったく、しょうがねぇな」


俺はため息をつきながらも、ニヤリと笑って剣を肩に担いだ。


「いいぜ。お前がその技とやらを完成させるまで――俺が、スカルドラゴンの相手をしてやるよ」


「……すまん、獅子堂」


「礼なんかいい。どうせ、最後は俺がやらなきゃ終わんねぇだろうしな。だったら、少しぐらい好きにさせてやるさ」


そして俺は、スカルドラゴンの扉に手をかけた。


「行くぞ、黒野。……本気でやれよ。でなきゃ、全部俺が持ってくぞ。」


俺はそう言って黒野に発破をかける。


黒野と俺は、ほぼ同時に全力で駆け出した。


黒野は部屋の後方に陣取ると、すぐさま魔力を収束し始める。

低く、唸るような演唱が口をついて出ており、それに応じて周囲の魔力濃度がじわじわと上昇していくのが背中越しにでも分かった。


「――なら、俺は派手にやるだけだ!」


俺は両手剣を握り直しながらスカルドラゴンの正面へ飛び出す。


「おらぁ! 骨野郎! こっちだァ‼」


吠えるような挑発に、骸骨の巨竜がその虚ろな眼窩を俺に向けた。次の瞬間――


ズン――ッ!!


頭上から振り下ろされる、山のような右腕。

その一撃は、地面を容易く抉り、衝撃波すら伴っていた。

だが、こちらも準備中だ。

天絶斬のチャージ中に、あんなもんをまともに受けられるかってんだ。


「ったく、デカすぎんだよ……!」


俺は素早く横へ転がるように回避し、間合いを取り直す。


「ハハッ! とろい、とろいぞ!」


叫びながら、ドラゴンの眼前を翻るように駆け抜ける。

追尾するように伸びてくる骸骨の首が牙を剥いた。


噛みつき――!


「遅ぇよ!」


俺はタイミングを見切ってバックステップ。

間一髪で顎を避けると、その直後――


「っ……!」


足元の地面に、無数の魔法陣が浮かび上がる。

スカルドラゴンの魔法攻撃だ。


(まずい……詠唱が早すぎる!)


逃げ切れないと判断し、俺は剣を両手に構え直した。


「喰らいやがれぇぇッ!!」


渾身の一撃、天絶斬を、スカルドラゴンの顔面へ叩き込む!


――ズドォォン!!!


甲高い衝撃音と共に、巨大な頭蓋が斜めに裂け飛ぶ。

続いて、発動寸前だった地面の魔法陣が全てキャンセルされた。


「……っふぅ。まずは、一回目」


俺は肩で息をしながら、斬り裂いた顔面の残骸を睨んだ。


――これをあと四回か。


黒野の演唱は、まだ終わっていない。


そしてスカルドラゴンは、再び再生を始める。


「……俺が倒すのが早いか、黒野の技が発動するのが早いか……」


俺は剣を振り直しながら、再生する骸骨の巨影に向かって、再び走り出した。




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