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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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黒野と獅子堂 ①

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

「閣下、いったい何があったのですか?」


私がそう尋ねると、獅子堂閣下は苦々しい顔をしたまま答えた。


「まさか、下層のドラゴンに何か異常が……」


沙耶様も、顔を強張らせて問いかける。


「いや、異常があったわけじゃない。……ただ、ちょっとしたトラブルだ」


そう言って閣下は疲れたように笑みを浮かべ、手慣れた動作で装備を外しながら話し始めた。




出発した俺たちは、道中を塞ぐ魔物どもを蹴散らしながら、一直線に最下層を目指していた。


「なぁ、獅子堂」


黒野が並走しながら、ちらりとこちらを見た。


「なんだ?」


「このダンジョンの魔物、異様にでかくないか?」


「ああ――それがこのダンジョンの“コンセプト”なんじゃねぇかとな」


そう答えながら、俺も周囲の気配に目を光らせる。


「黒野、お前はこのダンジョンをどう見る?」


俺の問いに、黒野は一瞬だけ口元を引き締め、空気を読むように周囲を見回してから答えた。


「……巨大化……いや、物量というより“質量”の集中だな。まさか……チェイン型か?」


「あぁ~」


俺はそう返事をしながら、簡潔に説明を加えた。


「薫いわく――このダンジョンの魔物は、通常の個体に比べてだいたい1.5倍から3倍くらいのサイズになるらしい。それに対して、この狭いフィールド構造。まともに戦おうとすれば、立ち回る余裕すら無くなる」


俺は話しながら、前方から迫ってきた巨大な鰐を正面から蹴り上げ、両手剣で斬り伏せた。


「でかいだけじゃなくて、厄介な連鎖効果があるんだとよ。戦闘を始めた瞬間に、その衝撃や音が周囲に拡散して――連鎖的に、魔物を呼び寄せるらしい」


「なるほどな……」


黒野は隣で短くうなずきながら話した。


「一匹に構ってると、あっという間に取り囲まれる。逃げ道を塞がれて、巨体に押し潰されるってわけか……」


その口調には冷静さがあるが、手元は一切緩めていない。

振るった刀が一体の巨大な鰐の魔物を斬り裂き、血飛沫とともに残骸が道端に転がった。


俺たちは無言で頷き合い、さらに速度を上げて階層を駆け下りていった――。




そうやって、俺たちは雑談を交えながら、最下層――ドラゴンの領域にたどり着いた。


重厚な鉄扉が目の前に聳え立ち、その向こうに“ボス部屋”があるのは明白だった。

つまり――この先が、本命のドラゴンが棲む部屋だ。


「獅子堂、ここがドラゴンの部屋か?」


黒野が一歩手前で立ち止まり、扉を見上げながら尋ねてきた。


「あぁ。ここから先、出てくるのはランダム属性のドラゴンだ。ただし、最後の三体だけは固定されてる。闇属性、光属性、そして混沌属性。順番は決まってる」


俺がそう答えると、黒野は無言で扉に手をかけ、そっと開けた。


隙間から中を覗いたその瞬間――黒野の動きが止まり、次の瞬間にはそっと扉を閉めていた。

そして、こちらに振り返りながら睨みつけてくる。


「――あんなもん倒せるかっ!!」


吐き捨てるように詰め寄ってきたその表情には、さすがに焦りと怒りが混ざっていた。


「でかいのは予想してたが……限度ってもんがあるだろ! あれ、部屋の三分の二埋まってたぞ!? おかしいだろあのサイズ!」


あまりの勢いに、俺は思わず吹き出しそうになった。


「……ああ、まあな。俺も最初はマジでビビったよ。デカすぎて笑えてくるレベルだしな」


あのドラゴンどもは、確かに洒落にならん。

まるで要塞がそのまま生き物になったような――超弩級の巨体。


しかし、それがこの“竜の巣ダンジョン”の本性ってやつだ。


「で、黒野。お前だったら、あれをどうやって倒す?」


俺が問いかけると、黒野はしばらく真剣な顔で考え込み――そして、低く静かに答えた。


「……まず、一人が正面から囮になって引きつける。

その間にもう一人が側面から回り込んで、急所――翼の根元か、喉元の鱗の隙間を狙う。

ただし、通常の武器じゃ通らないだろうから、魔力で防御結界ごと貫通できる一撃が必要だな」


その冷静な分析と構成に、俺は思わずニヤリとした。


「ははっ、いいじゃねぇか。お前、やっぱ考えてることが実戦向けだな」


俺がそう言うと、黒野は眉をピクリと動かした。


「俺がこの世界を“ゲーム”だと最初に思った理由、知りたいか?」


俺が笑いながらそう言うと、黒野が怪訝そうな顔をして首を傾げた。


「……どういうことだ?」


「いやさ……こいつら、やたらとバカでかいだろ?」


俺は目の前の扉を顎で指しながら言った。


黒野は一瞬黙って、それから「ああ」と短く返事をした。


「でな。実は、あいつら動けねぇんだよ」


その一言で、黒野の表情が固まった。

まるで豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔してやがる。


「……は?」


「いや、マジで。あいつら、動かせるのは“手”と“顔”だけなんだは」


俺が真剣な顔でそう断言すると、数秒の沈黙のあと――


「はあぁぁぁああっ!? 冗談だろ!? 」


黒野が叫ぶように言った。


「マジだって。俺、初見のとき戦ってて気づいたんだよ。踏み込んでも、絶対に脚を動かさねぇの。下半身、まるで地面に埋まってるみてぇに固定されてるんだよな。最初は“待機モーション”かと思ってたけど、途中から確信したわ。あれ、動けねぇ構造してる」


黒野は信じられないといった顔で、再び扉を振り返った。


「……じゃあ、あのバカみたいな巨体ってのは、見た目だけのハッタリってことか?」


黒野が扉の向こうに潜むドラゴンを思い出しながら言った。


「いや、威圧感は本物だ。爪を一振りされただけで空間が裂けそうになるし、ブレスが直撃したらひとたまりもない。ただ――移動はできねぇ。あいつらは、あの部屋に固定されてる」


俺は真顔でそう返した。


「……マジで、ゲームっぽいな」


黒野がぽつりと呟いた。


「だろ? だから俺は、この世界が“ダンジョンズドミニオン”そのものなんじゃないかって思ったんだ。強さの演出とか、倒し方のギミックとか――やたら作り物っぽい構造が多すぎる」


「その言い方……もしかして、攻略法があるってことか?」


黒野の目が鋭くなる。


「あぁ、あるぜ」


俺が頷くと、黒野が「ほら、早く言え」って顔をしてきたので、軽く肩をすくめて説明を始めた。


「あいつらの基本動作は三つ。噛みつき・薙ぎ払い・叩きつけ。

ブレスのときは両手を地面につけてから顔を持ち上げる動作をする。

あの瞬間、腕を伝って上に昇ればブレスを回避できる。

魔法は、空中に展開される魔方陣から放たれる。

主にボール系やランス系の魔法だ。

あと、地面に魔方陣が浮かび上がったら即回避な。

あれはウォール系やスパイク系、地形干渉型の魔法が生えてくる合図だ」


「情報量が多いな……」


黒野がややうんざりしたように呟く。


「それと、俺たちが入れるのは部屋の半分まで。それ以上奥には、“見えない壁”みたいなもんがあって、どう頑張っても突破できねぇ。試したが、どんなスキルでも破壊不能だった」


俺が苦々しく言うと、黒野は額に手を当ててため息をついた。


「まるで……ボス部屋用の専用フィールドだな。ゲームの攻略情報を聞かせられてる気分だ」


「まぁ、似たようなもんだ」


俺は肩をすくめた。


「で、威力は? 魔法のほうが怖いのか?」


「魔法は、見た目の派手さの割に大したことない。範囲も広くはあるが、避けられるしな。ただし……物理はヤバい。殴られたら確実に砕けるぞ」


黒野の眉がひくりと動いた。


「……あのサイズでぶん殴られるんだ。だいたいの想像はついたよ」


「ようはだな、ちゃっちゃと首を斬り落とせば勝ちなんだ」


「……それができたら、誰も苦労しないだろ」


黒野が皮肉っぽく笑った。


「やればわかるさ、やれば」


俺はそう言って、前へと踏み出す。

そして、ドラゴンの部屋へと続く巨大な扉を押し開けた。


重厚な金属の軋みが、ダンジョン全体に響き渡る。

その奥には、人智を超えた巨体が、ただ静かに――しかし、確実に俺たちの来訪を待ち構えていた。





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