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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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イザベリアの訓練 ③

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

イザベリアは左手の魔導銃でギガントサーペントの動きを牽制しつつ、一定の間合いを保ちながら機を窺っていた。

視線は鋭く、口元にはわずかに苛立ちが滲んでいる。


「……いい加減、鬱陶しいですわね」


低く呟きながら、イザベリアは大きく身を翻す。

巨体の蛇の突進を紙一重で避け、すれ違いざまに右手に握った鞭をバシンッ!と打ちつけた。

鋭い音が、鱗の上を滑るように響く。


ギガントサーペントの動きは遅い。

だが、その巨体ゆえに、回避には大きく身を跳ねさせなければならない。


「……このままでは、ジリ貧ですわね」


淡々とした口調ながら、確実に追い詰められつつある状況をイザベリアは理解していた。

ちら、と視線を走らせれば――御剣の方も苦戦中。

刀を握り、必死に斬りかかっているが、その刃は蛇の鱗に阻まれている。


「……あちらからの援護には、少々時間が掛かりそうですわね」


再び蛇の突進。

読みやすい――だが、それは避けやすいとは別の話。

イザベリアは横跳びで距離を取り、銃口を向けて魔力を籠めた。


パン!


弾丸は鱗に弾かれ、火花のように散る。

表層の防御はかなりのもの。しかし、それでも――


「……顔の下、首元。あの辺りなら」


再び魔力を込め、蛇が首を持ち上げた瞬間を狙ってトリガーを引く。


パン!


鳴り響いた一発に、ギガントサーペントは鬱陶しそうに顔を振る。

だが――イザベリアの瞳は確信を帯びていた。

鱗の隙間、柔らかな喉元にわずかに傷が走っていたのを、彼女は見逃さなかった。


「狙うなら、そこですわね……ふふっ」


イザベリアは口元をゆるく歪め、嗤う。

気品と獣性が同居する、戦場に立つ者の笑み。


そして静かに呟いた――


「Zeit für die Jagd.」

(ツァイト・フュア・ディ・ヤクト)

《狩りの時間ですわ》


その瞬間、彼女の足元から魔力が噴き上がる。

気高く、冷酷に――インペラトル第三皇女が反撃に転じた。


イザベリアは、目の前の一体に意識を集中させた。

ここからは“直接”仕留める。


「Tanz der Klingen」

(タンツ・デア・クリンゲン)

《乱舞》


その言葉と共に、イザベリアの右手に握られた鞭が爆ぜたように動き出す。

パシン、パシン、パシン――

高速で繰り返される打撃音が、まるで戦場の舞踏曲のように空気を叩いた。


イザベリアは、空間に幾つもの魔力の塊、圧縮された空気の球を貼りつけるように撒き散らした。


ギガントサーペントの巨体が、身をよじり始める。


Bruchブルッフ

《ブレイク》


イザベリアの冷ややかな声と同時に、圧縮された空気の塊が一斉に弾けた。

魔力を帯びた衝撃波が蛇の鱗を砕き、その欠片が霧のように四散する。


「――あら。意外ともろいですわね」


満足げに微笑みながら、イザベリアはゆっくりと一歩、前に出る。


「Zerschneidenツェアシュナイデン

《切断》


次の瞬間、彼女の鞭が弧を描いて蛇の首元をなぞった。

音もなく、ギガントサーペントの首が滑るように宙を舞う。

断面から、黒紫の魔力の煙が立ち上がっていた。


その光景を見ていたもう一匹の蛇が、ビクリと身を引いた。

巨体に似合わぬ、まるで恐怖を隠せないかのような挙動。


イザベリアはその一瞬を見逃さなかった。

瞳を細め、妖艶に微笑みながら囁く。


「――あら? 怯えましたの?」


舌なめずりするような視線を、ギガントサーペントに注ぎながら、にじり寄る。


その瞬間――


「蛇に睨まれた蛙」では無くなった。

これはその‘’逆”――


‘’獲物に見据えられた捕食者‘’だった。


イザベリアは静かに鞭を振るった。

先ほどと同様、空間に幾つもの魔力の塊。

圧縮された空気の球を貼りつけるように撒き散らす。


Bruchブルッフ


その一声と同時に、圧縮された空気の塊が一斉に弾けた。

耳を劈くような破裂音とともに、衝撃波がギガントサーペントの頭部を直撃。

硬質な鱗が弾け飛び、巨大な頭部が悲鳴を上げるように揺れ動く。


「キシャァァァ……ッ!」


苦悶の声を残しながら、ギガントサーペントは頭を大きく揺らし、そのまま地面に崩れ落ちた。


ズゥズゥゥゥン……!


振動と共に倒れたその巨体に向かって、イザベリアはゆったりと歩を進める。

右足を蛇の口元の上に乗せ、そのまま身体を反らしながら、女帝のように微笑んだ。


「Dein Schädel… Wie viele Schüsse hältst du… wohl aus?」

(ダイン・シェーデル……ヴィィー・フィィーレ・シュッセ、ハルテスト・ドゥ……ヴォル・アウス?)

(あなたの頭蓋、何発耐えられるかしら)」


左手に構えた魔導銃へ、たっぷりと魔力を注ぎ込む。

そして、引き金を引いた。


パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ――

連射される魔力弾が、ギガントサーペントの頭部を容赦なく打ち据える。


「ふふ……意外と硬いですわねぇ」


楽しげに笑いながら、銃声を響かせ続ける。

それはもはや処刑――緩慢かんまんな解体に近かった。


だが、息絶えたと思われたギガントサーペントが、突如として小さく痙攣した。

その巨大な頭が僅かに動き、眼球がわずかに揺れる。


イザベリアは足を退け、銃口を蛇の開いた口の奥へと向けた。


「Verschwindeフェアシュヴィンデ

(消し飛びなさい)


低く冷たい声が響いた次の瞬間、魔力を限界まで圧縮した光が銃口から放たれる。

レーザーのように一直線に伸びたその魔力光線は、ギガントサーペントの口内から頭蓋骨の奥までを貫く。


ズドォンッ!


爆裂音と共に、その巨体の頭部を文字通り消し飛ばした。

黒煙と魔力の残滓が空に舞い、しばしの静寂が場を支配する。


イザベリアは微笑んだまま、肩をすくめた。


「――あら。ようやく黙りましたわね?」


銃を軽く振って魔力の余熱を逃がすと、ゆっくりと後ろを振り返った。


二体目のギガントサーペントが黒い霞となって霧散し、辺りに静寂が戻った。


イザベリアは、左手の銃口から立ち上る微かな煙を見送りながら、深く息を吐いた。

そしてすぐに、視線を戦場のもう一角、御剣 葵のいる方向へと向けた。


「……ん?」


次の瞬間、彼女の眉間に皺が寄った。


そこには、ギガントサーペントの巨体にしがみつくようにして、絶賛“空中乱舞”中の御剣の姿があった。


「うわああああぁぁぁぁあぁぁぁっっ!!」


甲高い悲鳴と共に、御剣の小さな身体がギガントサーペントの頭部に激しく振り回されていた。


よく見れば、彼の刀は、蛇の目に突き刺さっており、閉じた瞼が刃を挟み込み、完全にロックしている。


「……刺したのは良いとして、抜けなくなってる……?」


イザベリアはこめかみに指を当てて、ゆっくりとため息を吐いた。


「……はぁ〜……致し方ありませんわね……」


彼女は呆れたように肩をすくめると、ひと呼吸置いて優雅に歩み出した。




御剣が振り回されながら、悲鳴混じりに叫んでいた。


「ちょっ……ちょっと待って!抜けない!抜けない!、挟まって――ああああッ!」


その混乱の中で、ギガントサーペントが突如、下顎を大きく開いて鳴き声を上げた。


シャァァァァァァァァ――!!


「御剣様、危ないですわよ?」


そう一言告げると、イザベリアは左手の銃を素早く構え、魔力をホーミング弾に変換。

照準を微調整し、無駄のない動作で引き金を三度引いた。


パンッ、パンッ、パンッ。


音もなく疾走する三発の光弾が、御剣のすぐ脇を掠めながら滑空し、ギガントサーペントの下顎に正確に撃ち抜いた。


ドン――!


鱗が砕け、咆哮と共に蛇が大きく身を仰け反らせる。


シャァァァァァァァァ――!!


「えっ、ちょ……あ、わ――ッ!?!?」


その衝撃で、御剣の手元がズレた。

刀の柄から手を滑べらせ、反射的に両手を伸ばすが、刀を掴むには遅すぎた。


「……あ」


呆気ない声が漏れると同時に、御剣の小さな身体は宙に放り出され、一直線に落下した。


「うわあああああああああぁぁぁ!!」


「――ったく、もう……」


イザベリアは、落下の軌道を正確に見極めながら、歩調を崩すことなく御剣の真下へと移動。

そして、広げた両腕で、ふわりと包み込むようにその身体を抱き止めた。


まるで、お姫様抱っこの様に。


「お怪我はございませんか、御剣様?」


「う……ぅ……はい……あの……ありがとう、ございます……」


顔を真っ赤にしてしがみつく葵に、イザベリアは微笑を浮かべ、わざとらしく肩をすくめてみせる。


「ふふっ……もう少しお一人で頑張っていただけると助かるのですけれど」


その声音には、呆れと、少しばかりの慈愛と、ほんの僅かな愉しさが混じっていた。


シャァァァァァァァァ――!!


ギガントサーペントが、裂けるような悲鳴を上げてのたうっていた。


「……うるさいですわね」


イザベリアは、ため息混じりにそう呟いた。

左腕に抱えた御剣をしっかりと支えたまま、右手の鞭に魔力を込める。

瞬間、鞭の先端が紫電を纏うように微かに明滅した。


「――黙りなさいな」


その言葉と共に、蛇の顎めがけて鞭がうなりを上げて振り上げられる。


バチィンッ――!


打ち込まれた鞭の一撃に、魔力による大きな圧縮空気の塊が蛇の下顎に凝縮されるように生まれる。

狙いは一点。

その瞬間にすでに、勝負は決していた。


Bruchブルッフ


イザベリアが囁いた命令と同時に、空気が爆ぜた。


パァンッ!!


圧縮された魔力が炸裂し、ギガントサーペントの鱗が吹き飛んぶ。

強烈な衝撃波により巨体がぐらつき、蛇は目を白黒させながらその場に崩れ落ちた。


ズドォォン……。


大地がうねりを上げ、沈み込むような音と共に、ギガントサーペントは動かなくなった。


イザベリアはそっと御剣を降ろし、気遣わしげに彼の肩を軽く支えた。


「どうぞ」


微笑を浮かべてそう促すと、御剣は顔を真っ赤に染めながら何度も彼女の顔をちらちらと見た。


「あ……うん……ありがとう……」


恥ずかしげに頷いた御剣は、慎重にギガントサーペントへと近づく。

その足取りには緊張と、照れくささが混ざっていた。


御剣は、目に突き刺さったままの刀を手にし、少し力を入れて引き抜く。

硬く閉じた瞼をこじ開けるようにして。

ようやく刀が抜けると、葵は再びイザベリアの方を見た。


イザベリアは、優しく微笑みながら、ひとつ頷いた。


その合図を受け取った御剣は、深く息を吸い、刀を静かに鞘に納めた。

そして、ギガントサーペントの首元に立つと、腰を落として――


「――ッシ!」


一閃。


高速の抜刀が風を裂き、煌めいた軌跡が蛇の首を半ば断ち切る。

わずかな沈黙の後、ギガントサーペントの巨体はシューッと音を立てて、黒い霞となって消えていった。


それを見届けた御剣は、鞘をしっかりと収め、安堵の息をつく。


「はぁ……」


絞り出すような吐息と共に、御剣はその場に腰を下ろし、静かに地面に手をついた。

背後からは、イザベリアの柔らかな笑みが彼を包み込んむ様に。


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