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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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退屈な日常 パート2 ③

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

朝露が乾ききらない森の中を、俺たちは全力で走っていた。


土を踏み鳴らす音、風を裂くような足音――

上位探索者と呼ばれる存在の移動は、もはや人間のそれではない。


「さすがに……っは、少し……休憩を……!」


背後から、御剣の情けない声が届く。


「おや、もう音を上げるのですか?」


横を並走していたイザベリアが涼しい顔で言い放つ。

しかも笑っている。


その背中にしがみついているのは、さっきまで元気だったはずの御剣だ。


「くっ、ボクだって……ちゃんとスキル持ちなのにぃ……!」


「そうは見えませんけどね」


御影沙耶が冷静に言った。

足音すら響かないその姿に、黒野も俺も少しだけ感心する。


「……なぁ、そろそろ山道に入るぞ」


黒野が俺にだけ聞こえる声で言ってきた。


「把握してる」


俺は短く返し、周囲の気配を探る。

案の定――


「……来たか」


前方、枯れ枝を踏み砕く音。


現れたのは、大型の猟犬のような魔物。

毛並みは黒鉄色で、口からは腐臭を含んだ蒸気が漏れている。


腐喰犬ロットハウンド

中級ランクだが、群れると厄介だ。


「戦闘だ」


俺がそう言い終える前に、沙耶が前に出た。


「葵様、伏せてください」


その瞬間、黒いゴシックドレスの裾が翻り、空気がピンと張りつめた。


次の瞬間、沙耶は舞うように回転し――魔物の頭部を一撃で斬り落とした。


「……終了しました」


背筋を正しながら言うその姿に、イザベリアが満足げに頷く。


「さすがは御影家。素晴らしい働きですわね」


「俺、いらなくねぇか……」


黒野が苦笑しながら煙草に火をつける。


「いや、お前は運搬係だ。ドラゴン素材、重量あるからな」


「お前……そういうとこ変わってねぇな」


少し笑いながら、俺たちは再び進路をとる。




俺を先頭に、黒野、イザベリア、御剣、沙耶の五人は、霞ヶ浦の山中へと向かって駆け抜けていた。


舗装もされていない、細く起伏に富んだ獣道。

だが、ここを進む俺たちに、疲労の色はない。


ゴツゴツとした岩場を跳び、倒木を踏みつけながら進む俺たちの隊列は、森を裂く風そのものだった。


「……しかし、走るだけでも面倒だというのに、閣下は毎回こんな道を通っているのですか?」


後方で、イザベリアが呆れたように声を上げる。


銀髪をなびかせながらも、息ひとつ乱れていないあたりは流石と言うべきか。


「ダンジョンが山にある以上、道は選べないさ。」


俺は淡々と答えた。


「くぅぅ……この僕に、泥と汗の旅路を強いるとは……なんという苦行……!」


御剣が息を切らしながら、情けない声を漏らしていた。


「死にますよ葵様……」


「はい、すみません……」


その御剣を脇で支えつつ、涼しい顔で駆けるメイド――御影沙耶が無感情に言い放つ。


あれで加減しているのだから、恐ろしい。


「……」


俺は背後から響く彼らのやり取りに耳を傾けながらも、前方に目を向けていた。




山道をひた走っておよそ二時間。


霞ヶ浦の山中――霧に包まれた森の奥に、それは忽然と現れた。


岩肌が口を開いたように、ぽっかりと空いた巨大な洞穴。

その入り口には、人工的な魔力障壁がかかっており、外部からの侵入を拒むかのようにうっすらと光を放っている。


「……ここが《竜の巣》か」


黒野が息を整えながら、少し眉をひそめて言った。


「ふん、まぁまあの雰囲気ですわね……」


イザベリアが軍帽を軽く持ち上げ、洞窟の中を見下ろすように微笑する。


その隣では、御剣が膝に手をつきながら、ぐったりとしている。


「もう……ぼく……無理かも……」


「この程度で音を上げるのですね。」


沙耶が淡々と告げると、御剣は「ぐぅ」と呻きながら立ち上がった。


そのとき――


「おや?」


不意に空気が張り詰めた。


一行の前に、まるで風も音も吸い込まれるような“気配”が現れたのだ。


瞬間、黒野の手が無意識に腰の武器へと伸び、沙耶も素早く御剣の前に出た。

イザベリアの目が鋭くなり、俺自身も本能的に背筋を強張らせた。


「遅かったですね。」


のんびりとした声が、霧の向こうから届いた。


姿を現したのは、一人の女性――


黒髪を低くまとめ、軽装の黒い戦闘服に身を包んだ女性だった。

見た目は落ち着いた雰囲気のある美人で、武装も特別派手ではない。

だが、そこから放たれる圧力は、全員の皮膚を確実に撫でていくような“異質”だった。


「筆頭護衛官か」


俺がそう口にしたとき、護衛官はにこりと笑って手を振った。


「どうも、お疲れ様です、主様。お迎えに参りました」


俺は「ご苦労」と返した。


……だが、周囲の空気は違った。


黒野は目を見開いたまま、しばらく口を動かせずにいた。


「……あいつ、やばくないか?」


「はい。あれは……尋常じゃありません」


沙耶は御剣を背に庇いながら、薄く冷や汗を流している。


御剣も恐る恐る後ずさって、俺の腕を引っ張った。


「ちょっと、獅子堂くん……あの人、ほんとに人間……?」


「人間だよ、多分な」


俺は普通に応えるが、黒野がこめかみに手を当てて呻くように呟く。


「お前、いつの間にそんなの飼ってたんだよ……」


「ん? いや、昔からいたけど?」


本気で首を傾げる俺に、黒野は黙ったまま顔を覆った。


護衛官はそんな様子にも気づかず、柔和な笑みで一同に一礼する。


「皆様、はじめまして。私、獅子堂家筆頭護衛官の“神崎 薫”と申します。普段は《竜の巣》の維持と周辺魔物の掃討などを任されております。本日はどうぞよろしくお願いします」


……普通の口調で、普通の紹介。

なのに、その言葉だけで胃が痛くなるような緊張感が走った。


彼女こそが、このダンジョンの真の管理者であり、獅子堂を補佐する最強の従者。

その実力は、実は獅子堂本人よりも高く、日常的に一人で《竜の巣》を制圧しているという

――無自覚な化け物だった。


「では、ダンジョン構成のご説明を」


護衛官は、事務的に口を開いた。


「《竜の巣》は全五十階層で構成されています。上層一から二十階層は爬虫類型――巨大蛇や毒トカゲなどが出現します。中層の二十一から四十階層はヒュドラや下級竜種。下層の四十一階層からは成竜によるボスラッシュです」


「属性持ちのドラゴンだな?」


黒野が確認すると、護衛官は頷いた。


「はい。火、水、雷、氷、風、土、闇、光、毒、混沌――それぞれに適した装備と連携が必要になります」


「……面倒だな」


黒野が溜息をつくのを聞いて、護衛官は柔らかく笑った。


「ですので、主様と黒野様は下層を。イザベリア様、御剣様、沙耶様は私と共に、上層から中層の魔物狩りをお願い致します」


イザベリアだけがどこか楽しげに「ふふ」と笑った。


護衛官の背を先頭に、俺たちは二手に分かれて、ダンジョン《竜の巣》へと足を踏み入れた。


画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい。


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