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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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退屈な日常 パート2 ①

更新が遅くなってすみません。

出来るだけ、早く続きを書けるように努力します。


画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

「――暇だ……」


俺は、呟くようにそう言って、手元のグラスを軽く揺らした。

場所は、いつものレストラン《Service》。


昼下がりの時間帯。

店内は落ち着いていて、静かなジャズが流れている。

窓から差し込む柔らかな陽光に照らされながら、俺は窓際の席でぼんやりと外を眺めていた。


目立った事件もなく、あのヴィヴィアンの騒動からも随分と時が経っていた。


ヴィヴィアンはすぐに目を覚まし、自分の状況をすべて理解していた。

そして、黒野に問い詰められた際、あっさりと正体を明かした。


「私はシヴァ様の巫女。そして、観察者……黒野様を見張るためにこの学園に派遣されました」


彼女は今や嘘のように大人しくしていて、目立った動きは一切ない。

ほんの少し前まで、世界がひっくり返るんじゃないかという緊張感に晒されていたのが嘘のようだ。


「――暇そうだな、獅子堂」


ふいにかけられた声に顔を向けると、黒野がいつもの黒い羽織姿で店に入ってくるところだった。


「お前も暇そうだな、黒野」


そう返すと、黒野は軽く肩をすくめて苦笑し、そのまま俺の向かいに腰を下ろした。


「この時間は空いてていいな。……いつものを」


店員に目も向けず、慣れた調子でそう告げる。完全に常連のそれだ。


「にしても、本当に何も起きねぇよな。あれから」


「何か起きて欲しいのか?」


「いや……まぁ、平和なのは良いことなんだが…。なんか拍子抜けだろ?」


俺がそう言うと、黒野はわずかに眉を上げて、やれやれとばかりに言った。


「獅子堂……お前、ゲームかアニメの見過ぎだな。世界はそうそう毎週イベント起きるようなスケジュールで回ってない」


「……は?」


「神々が動くのは、よっぽどのことが起きた時だけだ。あいつらは基本的に傍観者だ。少なくとも、黄泉や八千代は“何かあれば対応する”側だが、シヴァのような連中は別枠だ」


「別枠?」


「シヴァは、ブデザム宗教国の神だ。あの国の中で信仰されてるから“領域の縛り”がある。神域が強く縛られてる場所の神は、そう簡単には領域を出てこないんだよ」


「じゃあ、あの時現れたのは――?」


「……相当強引に突破してきたんだろ。自分の神域を部分的に切り取って、無理やり出て来たんだろ。」


「……なるほど」


「まあ、ヴィヴィアンがその“目”を通して出て来た愉快犯だな。余計にややこしい事態だっただけさ。今は収まってるし、また向こうの神域に戻ったろうよ」


「そう言えば、ヴィヴィアン、すげぇ大人しいよな最近」


「そりゃあ、監視の名目で送り出されたのに、送り出した主が全部バラせば意味がなくなるからな。」


黒野はそう言って笑うと、頼んでいたコーヒーを受け取った。


「しばらくは平穏が続くだろ。今のうちに休めるだけ休んでおけよ、獅子堂」


「……それ、フラグだからやめろ」


そんな会話を交わしながら、平凡で、しかし貴重な日常がゆっくりと流れていく。




黒野がコーヒーを一口すすると、香ばしい香りがわずかにテーブルの上に広がった。


「ところで、獅子堂。ゴールデンウィークはどうするつもりだ?」


「んー? 特に予定はないな。……いや、そうだ。ダンジョン行こうかと思ってたんだ」


「珍しいな。お前からダンジョンの話が出るとは」


「ちょっと、手持ちのアイテムを整理しててな。ドラゴンの肉が切れてるのに気付いたんだよ」


黒野はグラスを置き、眉をひそめた。


「……ドラゴンの肉? あれ、かなりレア物だろ。普通の店じゃ出回ってないはずだが?」


「ああ、だから自分で獲るしかない。俺が管理してるダンジョンに、ちょうどそれなりの個体がいるんだ。ちょうどいいかなと思ってな」


黒野はしばらく考え込んだように顎に手をやり、やがて口を開いた。


「……俺もついて行っていいか?」


「へぇ。お前がそんなこと言うとはな。暇なのか?」


「まぁな。たまには身体動かしておかないと、いざって時に鈍ってるかもしれないしな」


俺は肩をすくめ、頷いた。


「好きにしろよ。出発は初日、朝一でな。場所とルートは後で共有する」


「了解」


俺たちはそう言って軽く拳を合わせた。

その時――


バタンと扉が開き、勢いよくレストランに入ってきたのはイザベリア。

そしてその手には、首根っこを掴まれて猫のように丸くなった――御剣がぶら下がっていた。


「……何やってんだよ」


思わず漏れた俺の声に、イザベリアは少し得意げな顔で言った。


「この子、外で女の子たちに囲まれてて。どう見ても限界そうだったから、保護してきたのよ」


「……助かったけど、もう少し丁寧にお願い……」


御剣はくぐもった声で答えたが、イザベリアは意に介さず、そのまま黒野の横に立った。


「あなたが飼い主でしょ? 黒野様」


「いや、俺は別に飼ってるつもりはないんだが……」


黒野は困ったように額を押さえた。


「黒野くん、酷いよ! 僕が囲まれて困ってるの見てたのに、無視して先に行くなんて!」


「知らん。あの人数は、お前のせいだろうが」


「ぐぬぬぬ……!」


ぷりぷりと怒りながらも、御剣はようやくイスに座り、飲み物を頼み始めた。


平穏で、のんびりとした午後。

俺たちは、戦いも陰謀もない、そんな時間を少しだけ満喫していた。


「それで、さっきは何の話をしていたのですか?」


イザベリアが、ふと俺に問いかけてきた。


「……ああ、ゴールデンウィーク中の話さ。俺のダンジョン、“竜の巣”でドラゴン狩りに行こうかってことになってた」


「ドラゴン……いいですね。それ、私も同行させていただきたいですわね、閣下」


イザベリアが当然のようにそう言ったかと思えば、隣に座っていた御剣も勢いよく立ち上がった。


「じゃあ僕も! ドラゴン見てみたいし、絶対すごいレアドロップがあるはずだよ!」


「いや、お前ら……」


思わず俺は眉をひそめた。


「イザベリアはともかく、御剣……お前、ダンジョンの深層とか行ったことあんのか?」


「うっ……でも、でもね! 僕、“レアドロップ率上昇”っていう固有スキルがあるんだ!」


御剣は胸を張って自慢げに言い放つ。


「超低確率のドロップばっかりが出るんだよ!? すごいだろ!? 今までに出たのは――」


「……それって非効率だよな」


思わず漏れた俺の呟きに、黒野が「ああ」と即答した。


「今回、ダンジョンで狙うのは“素体ドロップ”だ。レア狙いならともかく、素材集め・肉類は特に出やすいから論外だな。」


「うぐっ……」


御剣は耳まで赤くして、今にも泣きそうな顔で俺の腕に縋りついてくる。


「お願い獅子堂君っ、行きたいんだよぉ~! 僕も役に立てるようになりたいんだよぉおお!」


「やめろ、重い……!」


俺が必死に御剣を引き剥がそうとすると、イザベリアがすっと立ち上がった。

先ほどまでの柔らかな雰囲気が嘘のように、真剣そのものの眼差しを向けてくる。


「私も同行させていただきたく存じます、閣下。……足手まといにはなりません。どうか、お供を許可くださいませ」


一礼するイザベリアの所作には、一切の無駄がなかった。


「……はあ。仕方ねぇな」


俺はため息をついて、頭を掻いた。


「現地では別行動だ。俺と黒野は主戦力、別ルートで先行する。お前たちは向こうで待機している護衛の指示に従ってくれ。それが条件だ」


「了解です!」


イザベリアが満面の笑みを浮かべ、御剣は「やったぁああ!」と叫んでいた。


静かなレストランの空気が、一気ににぎやかになった午後だった。


――こうして、俺たちのゴールデンウィークの予定が、ドラゴン狩りという非日常へと決まったのだった。



画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい。


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