イザベリアの想い
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。
ヴィヴィアンが意識を失い倒れた後、私たちは彼女を医務室へと運んだ。
しばらくして、獅子堂閣下と黒野様は「大事な話がある」と言い、私たちを部屋から追い出した。
強引ではあったが、あの二人が必要ないと判断した以上、ここで粘るのは愚策でしかなかった。
私は何も言わず、ただ無言で従った。
「……では、行きましょう。」
私は鈴凛とクリスティーナを促し、近くの喫茶店へと向かう。
店内は静かで、私たち以外の客はまばらだった。適当な席に腰を下ろし、紅茶を注文する。
「いやぁ、なんつーか、雑な扱いされたもんだな。」
鈴凛が足を組みながら無造作に言った。
彼女は閣下の前では淑女然としているが、こうして気を抜くとその裏社会特有のぶっきらぼうな言葉遣いになる。
「獅子堂様と黒野様だけで話し合うとなると、私たちの知らないところで物事が進んでいるということですね。」
クリスティーナは優雅に紅茶を口に運びながら、どこか呑気に言う。
「なぁに、どうせ大層な話ってほどのもんじゃねぇさ。仮にそうだとしても、私らに言う義理なんざねぇんだろ。」
鈴凛はつまらなそうに肩をすくめた。
「しかし、すげぇ戦いだったな。」
鈴凛が腕を組みながらニヤリと笑う。
「獅子堂様の一撃、黒野様のスピード、どちらも人間離れしていましたね。」
クリスティーナは感心した様子で紅茶を口にする。
「だよなぁ。結局、どっちが勝ったんだか分かんねぇし、アレって本気だったのか?」
「それは……分かりません。でも、少なくとも“あれが限界”だとは思えません。」
「まあ、私らがそこにどうこう言える立場じゃねぇけどよ。」
鈴凛は軽く肩をすくめる。
「私たちはあの戦闘をただの観客として見ていましたし。」
クリスティーナの言葉に私は目を閉じ、深く息を吐いた。
——彼らの戦いに、関与することさえ許されなかった。
それが何を意味するのか、鈴凛やクリスティーナは深く考えていないだろう。
彼女たちはただ、その圧倒的な戦闘を見て感嘆し、驚いているにすぎない。
だが、私は違う。
戦闘だけではない。
私はヴィヴィアンが倒れる直前までの会話を一人思い返していた。
黒野様の話、あの曖昧な憶測。
彼の言葉は、真実の一端を示しつつも、すべてを語ることは決してなかった。
「神を殺せ。」
その言葉がまだ耳に残っている。
黒野様はあくまで仮定の話として、世界の変質を語った。
魔力の発生、ダンジョンの起源、そして「世界の改変」。
その話を聞いた時、私はどこか遠いものとして受け取っていた。
だが、今なら分かる。
だからなのか、と。
私たちは——この世界に順応してしまったのだと。
彼の言葉の真意が何であれ、事実として私たちはこの状況を受け入れ、考えることを止めていた。
世界の仕組みが変わった?
そんなはずはない?
それとも、それが事実であるならば、今の私たちはどうすべきか?
そんな問いさえ、私たちは深く追求しようとしなかった。
私たちは“停滞“していた。
私は紅茶のカップを静かに置き、視線を遠くに向けた。
私は二人を見ていて思った。
閣下は私たちを見ていない。
必要とすらしていない。
近づき話しかければ、相手はしてくれる。
それだけだ。
閣下から求められたりすることは無かった。
弱いな……私は……。
国では鮮血皇女だの虐殺皇女だと恐れられ敬われたのに……
これでも努力してSランクまで上り詰めた……。
惨めだな……。
求めた相手に相手もされず、気にもとめてもらえないとは……。
「なに、イザベリア。気に食わねぇのか?」
鈴凛が私の表情を見ながら言った。
「いいえ。ただ、今までの流れを考えると、どうしても腑に落ちない部分が多すぎますのよ。」
私は淡々と答える。
「それは……黒野様の話のことですか?」
クリスティーナが首をかしげた。
「ええ。神を殺す、世界の改変……。」
「バカバカしいですね。」
クリスティーナは軽く笑った。
「確かに、黒野様の話は壮大すぎて、普通に考えれば信じられませんわね。」
「だよなぁ。そもそもさ、そんな話が本当だったとして、私らに何ができるってんだよ?」
鈴凛は冷めた目をしていた。
鈴凛とクリスティーナは何も疑問を持っていないようだ。
この世界はこういうものだ、と当たり前のように受け入れている。
彼女たちは強者に憧れ、その力を目の当たりにして驚き、それで終わる。
私は違う。
閣下や黒野様のような存在がいる限り、彼らは私たちの先を進み続ける。
私たちがそれをただ見つめるだけなら、彼らにとって私たちは「その他大勢」でしかない。
「ま、あの二人が何考えてんのか、私らには分かんねぇよな。」
鈴凛が適当に話を切り上げる。
「獅子堂様も黒野様も、何かを知っているのは間違いありませんね。」
クリスティーナはどこか呑気に言うが、その声には焦りも不安もない。
——彼女たちは、何も感じていない。
だが、私は違う。
あの戦闘を見て、私の心には一つの確信が生まれた。
私たちは、彼らの“計画”には必要ない。
むしろ相手にもされず眼中にすらない。
少なくとも今のままでは。
「……。」
私は静かに紅茶を飲み、鈴凛やクリスティーナと同じように振る舞った。
彼女たちに、私の考えを共有するつもりはない。
彼女たちが“何も知らない”ままでいるのなら、それもまた良いのかもしれない。
だが——私は。
私はこのままで終わるつもりはない。
何が何でも、閣下の“必要な存在”になりたいのだから。
私は紅茶のカップを静かに置き、視線を遠くに向けた。
「強く…強くならないと……。」
私は静かに、視線を遠くに向けたまま強くなる事を決意した。
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