ダンジョン誕生の秘話
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。
食後、俺たちはコーヒーを飲みながら一息ついていた。
エリカは他の店員に引きずられながらカウンターの奥へと消えていったが、俺たちは何事もなかったかのように会話を再開する。
「獅子堂はダンジョンについて知りたがってたよな?」
そう言って黒野が俺に話を振る。
「ああ。」
簡潔に返事をしながら黒野を見る。
「獅子堂はダンジョンをどう思う?」
唐突な質問に、俺はしばし思案する。そして言葉を選びながら答えた。
「ゲームみたいな場所かな。」
「まあ、普通に考えればそうだな。」
黒野は煙草の煙をゆっくりと吐きながら頷いた。
「イザベリア皇女殿下、インペラトル帝国でもダンジョンの研究はしてるんだろ?」
黒野はイザベリアへと視線を向ける。
「帝国でも研究はしておりますが、あいにくと成果は出ておりません。」
イザベリアは優雅にコーヒーを飲みながら答えた。
「魔力が溜まり、形成された別次元……これが帝国の考えですわね。魔力が土地に影響するのか、取り込んだ素材に影響するのか、あるいは別の要因なのか……今のところ、解明には至っておりませんわ。」
イザベリアはそう言いながら黒野を見た。
「その辺りは日ノ本之國の考えとも一致しているな。」
黒野がそう言うと、クリスティーナが興味深そうに尋ねた。
「そうなのですか?」
「ああ……黒羽家や皇家から聞いた話だから、間違いない。」
黒野は確信を持って答えた。
「それで? そんなありきたりな情報を話すために話を振ったわけじゃないよな?」
俺は黒野をじっと見つめる。
「ここからは俺たちの憶測になるが……聞きたいか?」
黒野の問いに、俺は眉を寄せながら静かに頷いた。
「黄泉が言うには、魔力は地球が誕生した時から存在していたという。」
黒野はそう言いながら、話を続けた。
魔力。
それは生命が生まれた瞬間から存在していた。
魔力は、生命が生きる中で消費するエネルギー。
そのエネルギーが器である生物から溢れ出したもの——それが生命の残滓。
人々はこのエネルギーを、魔力、妖力、神力、気、オーラなど、さまざまな呼び方で扱ってきた。
しかし、時代が進むにつれ、時の権力者たちは魔力の存在を恐れた。
異能者を異端とし、異常者として排除し始めた。
それが、歴史に残る「魔女狩り」である。
西洋だけでなく、世界各地で異端者狩りは行われ、多くの才ある者たちが命を落とし、魔力を使う者は減っていった。
生命は死に、その残滓である魔力は世界に放出され続けた。
そして、世界には膨大な魔力が蓄積されていった。
第二次世界大戦——。
この戦争で、かつてないほど多くの命が失われ、莫大な魔力が世界に放出された。
それがトリガーとなり、各地で自然発生的にダンジョンが出現し始めた。
それから数十年、世界は安定し、技術革新が進む中、突如としてダンジョン・スタンピードが発生。
こうして、現代に至る。
「ダンジョンとは何か……それは、"人類の願望"の形なんだよ。」
黒野は煙草を吹かせながら続ける。
近代社会において、人々の生活は貧富の差が歴然としていた。
未完成の縦社会の中で、人々は不満を抱えながら生きていた。
人生はクソ。
つまらない。
やめたい。
転生したい。
破滅しろ。
滅びろ。
死ね。
——そう、願った。
新たな世界を。
黒野はそこで言葉を切る。
「そして、世界は溜まりに溜まった魔力で魔法を発動した。」
「……魔法?」
俺は思わず聞き返す。
「ああ。『ダンジョン・スタンピード』と『世界の改変』という名の、壮大な魔法をな。」
黒野の言葉は、あまりに荒唐無稽だった。
だが、俺の中でそれは不思議と現実味を帯びていた。
もしも、それが真実だとしたら——。
「……冗談にしては、笑えねぇ話だな。」
俺はコーヒーをひと口飲みながら呟いた。
「そうだな。」
黒野も苦笑する。
イザベリア、クリスティーナ、ヴィヴィアン、鈴凛——皆、それぞれの表情で黙考していた。
「けどよ。」
俺はカップを置いて黒野を見た。
「それなら、それを知った俺たちはどうするべきなんだ?」
「……それが問題だ。」
黒野は目を細め、微かに笑う。
「さて、獅子堂。お前はどう動く?」
俺は答えず、ただ窓の外を見つめた。
世界が変わる理由。
そして、俺たちがそれを知ってしまったこと。
コーヒーの香りが、いつもより重く感じた——。
「結局何も出来ないし、何もしないと思う。今まで通りだな。」
俺はいろいろと思考したが、結論は何も思いつかなかった。
それを聞いた黒野は、「だろうな。」と笑った。
「なら何故聞いた!」
俺はカチンときて黒野を睨む。
「そう怒るな。俺も同じだったからさ。」
黒野はそう言って煙草を吸いながら話を続けた。
「やれスタンピードだの世界の改変だのと聞かされても、正直チンプンカンプンで、どうにかしろと言われてもな……どうしようもないだろ。」
黒野は苦笑いを浮かべる。
「要は、黄泉が言うには今現在、世界の辻褄合わせの最中らしい。」
「バタフライエフェクトってやつか?」
俺が尋ねると、黒野は即座に否定した。
「違うな。」
「バタフライエフェクトは『些細な変化が時間を経て大きな影響を及ぼす現象』のことだ。聞いたことあるだろ?『ブラジルのジャングルで蝶が羽ばたくことで、アメリカでハリケーンが発生する』っていう言葉を。」
「じゃあ、何なんだよ?」
俺はさらに問い詰める。
「おそらく近いのは『ノベル・ユニバース理論』だろうな。」
「何だそれ?」
「ノベル・ユニバース理論とは、複数の宇宙が存在する可能性を仮定した理論物理学の概念だ。」
黒野は煙を吐きながら続ける。
「多元宇宙は、俺たちがいるこの世界だけじゃなく、無数に存在しているかもしれないという理論だ。つまり、俺たちの宇宙の歴史が何らかの影響を受けた場合、それに適応するために“書き換え”が行われる、そんな考え方だな。」
黒野は一息つく。
「つまり、世界の改変とは、そういうことだ。」
「……まるで物語のプロットが書き換えられるみたいだな。」
俺は呟く。
「まさにそうだよ、獅子堂。」
黒野はニヤリと笑った。
「話を遮って悪いのですが、先ほどから理論整然とお話をされていますが、仮定であり憶測の話ですよね?」
クリスティーナが冷静な口調で尋ねた。
「あぁ、そうだな。あくまでも憶測であり仮定の話だな。」
黒野はコーヒーを飲みながら答えた。
「なら、そこまで真剣に悩む必要はないのでは?」
「知識の一環だな。信じるも信じないも自由だが、こういう考え方もあるってことが大事なんだ。」
黒野はクリスティーナを見ながら答える。
「仮にその話を信じるとして、魔力は遥か昔から存在し、ダンジョンもあったという訳ですわね?」
イザベリアが真剣な表情で聞いてきた。
「あぁ……神隠しだな。お前たちに分かりやすく例えるなら、フェアリーランドやドア、パスと……あとは……」
「フェアリーサークルですわね。」
イザベリアが補足する。
「遥か昔からあっただろ、飛行機が消えたり船が消えたりと。」
「ありますわね、突然消えた失踪事件。それがダンジョンと?」
イザベリアは眉間に皺を寄せて聞く。
「あぁ……ダンジョンは魔力の塊であり、次元の歪みだとも言われている。人が触れて初めて形をなすか、そのまま四散して消えてしまったりするらしい。」
「また曖昧な答えですわね。」
イザベリアは興味を失ったように答えた。
「俺も専門じゃないからな。」
黒野は苦笑いをしながら続けた。
「要は、それが確定した世界だと認識していればいいらしい。」
「つまり、神隠し等は無くなったが、ダンジョン化が確定したということでいいのか?」
俺が黒野に聞くと、黒野は「その認識で良い。」と答えた。
「なぁ~結局、黒野は何が言いたいんだよ。」
俺はため息混じりに尋ねた。
「それだよ。獅子堂君。」
黒野は冗談ぽく言った。
俺は呆れながら「なんだよ?」と尋ねた。
「この前の獅子堂君の質問に答えようじゃないか。」
「面白くねぇ~し、普通に話せ。なんの話だよ?」
「男女比についてだ。」
俺は真剣に黒野を見た。
「近代社会において人類が作り上げた物や思い描いたのはなんだ?」
黒野は真剣な表情で聞いてきた。
「いや……分かんね~よ。」
「お前なら分かると思ったんだがな……」
「だから何なんだよ……」
「昔の記憶を探ってみろ。」
黒野はそう言って煙草に火をつけた。
「お前の記憶にあるゲームやアニメ・マンガはどんな感じだった?」
黒野が真剣な表情で尋ねてくる。
「どんなって……普通に面白いし楽しかったぞ。」
「いや……そうじゃなくてだな……どんな作品が人気で売れてたとか、あるだろ。」
黒野が呆れたように聞いてくる。
「ダ〇ソとか?」
「またマニアックなところを……俺も好きだったが。」
黒野は苦笑しつつも話を続ける。
「要は、ハーレムものや擬人化作品が売れていただろう。」
「あぁ……いろいろ人気作はあったな……って、おい‼」
「やっと気づいたか。」
「なんだ、この女性中心世界ってことは、そういうことなのか?」
俺が慌てて問い詰めると、黒野は冷静に答えた。
「それが『世界の改変』だ。」
マジかよ……。
確かに女性が多い作品はいくつもあった。
男性が主人公の作品もあったが、ほとんどのゲームやアニメは女性が中心だった。
異世界転移ものや転生ものなんかは完全にハーレムものだったしな。
それが適用され改変されたとなれば……。
「金〇時限爆弾、全然関係ねぇぇぇじゃねぇぇか‼」
思わず俺は叫んでしまった。
それを聞いた女性陣は、思わずブッと吹き出した。
「獅子堂様、いきなり何を言い出しはりますのん」
鈴凛がエセ関西弁で言った。
俺は「悪い」と謝りつつ、黒野を睨むように見た。
「ゴールデンボムは確かに関係ないな。」
黒野は笑いながら話した。
俺が睨みつけると、黒野は冗談だと手をひらひらさせて制止し、急に真剣な表情になった。
「黄泉から依頼がある。」
俺はコーヒーを口に運びながら、彼の言葉を真剣に聞いた。
「神を殺せ。」
その瞬間——
「ブゥゥゥゥ!」
俺は思いっきりコーヒーを噴き出した。
「きたねぇぇぇぇぇ!」
噴き出したコーヒーは黒野に直撃した。
クリスティーナがすぐに黒野の髪や服を丁寧に拭いていた。
黒野は自分の顔を拭きながら、俺に向かって怒鳴る。
「獅子堂‼ これで二回目だぞ‼ 俺は男にかけられて喜ぶ趣味は無いぞ‼」
「俺もねぇぇし‼ ぶっかける趣味はねぇぇよ‼」
思わず俺もツッコんだ。
「お前がいきなり変なこと言い出すからだろうが!」
俺はふてくされながら文句を言う。
黒野は顔や服を拭きながら、落ち着いた声で話し始めた。
「獅子堂。この世界には男神がいない。」
「……だから神を殺せってのか……」
俺は頭を抱えた。
予測はしていた。
前世の世界では、ほとんどの神話の神や偉人は女性化され、美しい女神として描かれるのが当たり前だった。
「そもそも、神なんて殺せるのかよ?」
俺は頭を抱えながら問いかけた。
「普通に考えたら無理だな。」
「じゃあ……」
俺が話そうとした瞬間、黒野が遮るように言った。
「強くなり、仲間を増やして戦力を強化するしかない。」
黒野はそう言いながら、周囲を見渡した。
俺もつられて視線を巡らせる。
イザベリア、鈴凛、ヴィヴィアン、クリスティーナ、そして彼女の部下たち。
「この戦力でか……」
俺は不安げに呟く。
黒野は黙って頷いた。
この戦力で、神殺しを成し遂げろというのか——。
俺は新たな現実の重みを噛み締めながら、深いため息をついた。
「良いぞ、良いぞクロノ。」
それまで黙っていたヴィヴィアンが、突然口を開いた。
その声には、いつもの落ち着いた雰囲気とは違う、狂気じみた熱が込められていた。
「だが足りぬ。まだ足りぬ。もっとだ! もっと強くなれ! そして——我を楽しませろ!」
彼女の瞳は鋭く輝き、身体は震えている。
まるで興奮に身を委ねるかのように。
しかし、その興奮が最高潮に達した瞬間——
「……っ!」
ヴィヴィアンはそのまま意識を失い、力なく崩れ落ちた。
「おいっ!?」
俺は慌てて彼女を支えようとしたが、その前に鈴凛がすばやく動き、ヴィヴィアンの身体を支えた。
「……ふぅ。いきなり何事かと思いましたわ。」
イザベリアが静かに息をつきながら、ヴィヴィアンの様子を観察する。
「いきなり叫んで倒れるとか、どんなリアクション芸だよ……」
俺は半ば呆れながら呟いた。
「いや、獅子堂。彼女、本気だったぞ。」
黒野が真剣な顔で言う。
「本気で何かを感じ、そして興奮して倒れた……それが何を意味するか、考えた方がいい。」
俺は黒野の言葉に返答できなかった。
ヴィヴィアンは何を感じたのか。
そして、彼女の言う「もっと強くなれ」とは、何を指しているのか——。
俺たちは再び深い沈黙に包まれた。
この戦いは、俺たちの想像を超えた何かへと続いていくのかもしれない。
俺は改めてコーヒーを一口飲み、ため息をついた。
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい。
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